震災と台風の2度にわたり被害
東日本大震災の被災地となった沿岸部は、2019年10月の台風19号でも大きな被害を受けた。津波と台風で2度にわたり住宅が被害を受けた岩手県山田町の被災者を取材した。
津波から住民を守るための堤防が、2019年の台風19号では、大雨による浸水被害を拡大させる要因になってしまった。あれから4カ月以上経過したが、住宅の修繕工事が続いている山田町船越半島の田の浜地区。
2019年10月の台風19号では、想定を超える大雨で、排水溝に土砂や流木がつまり、堤防の真ん中あたりの土地が低い場所に水が溜まった。
津波対策として2018年5月に完成した堤防が、水をせき止める形となってしまい浸水被害は、81棟に及んだ。
東日本大震災と台風19号の2度にわたり住宅が被害を受けた世帯が、山田町全体で49世帯ある。
仮設住宅に逆戻り
福田和子さん:
あそこを波が越えたの。それから、ああ、ダメだ来るぞ。それで山に逃げました
田の浜地区の福田和子さん(72)は、津波で自宅が半壊した。
台風19号では、津波よりも高く水が押し寄せ、再建したばかりの自宅が大規模半壊となった。
福田和子さん:
娘が「ちょっと水だよ!」って。2階から降りてきて、「みんな騒いでるよ」って。自分の車が水没。どうしようもない、そのまま2階に上がった
福田さんは山の上にある仮設住宅に逆戻り。自宅は改修工事中。
福田和子さん:
(自宅に)すぐ来たいですよ。なぜかというと、あの山の上、カメムシがいっぱい出る。びっくり、夜中も出るんですよ
工事は3月中には終わる見込みだが、福田さんは、震災から丸9年の日を仮設住宅で迎えることになりそうだ。
田の浜地区では、未だ24世帯58人が、近くの仮設住宅に入居している。(2020年2月末時点)
消えない住民の不安
堤防の目の前で暮らす81歳の田代次雄さんも、建て直したばかりの自宅が台風で再び水に襲われ、2度目の被害。
田代次雄さん:
直してもらって、ここに来て住みたいなと思って。80歳にもなって、仮設にいつまでもいられるものでもないから、わが家に入りたい
住宅を再建しても住民の不安は消えない。雨水をせき止め、浸水被害の原因となったとされる堤防を、今後、どういうふうに改良するのか、台風から4カ月以上経過しても町が方針を示していないからだ。
田代さんは、堤防に水門を造り、雨水を排水できるようにしてほしいと町に要望している。
田代次雄さん:
元に戻すとなったら絶対に工事させませんよ。むしろを敷いて工事現場に行って寝てますよ
町では、排水溝に土砂が流入しないよう、砂防堰堤(さぼうえんてい)の設置を検討しているが、具体的な方針は、専門家による検証委員会の検証結果を待って決定するとしている。
山田町 佐藤信逸町長:
砂防堰堤を作らなくては、いくら排水溝を大きくしても、また(雨水や土砂などが)流れてくれば、大変なことになる。砂防堰堤で抗しきれない部分があっても、しっかりと排水できるように工事を考えていく
検証結果の報告は3月中の予定だが、町では、工事の方針決定は4月にずれ込む可能性があるとしている。
住民が自宅で枕を高くして寝られる日が早く訪れるよう、早急な対応が求められる。
(岩手めんこいテレビ)