“顔写真の提出”と“性別の記入”が不要
大学3年生などを対象とした、就職活動の企業説明会などが3月から本格化し、多くの新卒志望者が就職活動をスタートさせているのではないだろうか?
そのような中、ヘアケアブランド「LUX(ラックス)」などを展開するユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングが、3月6日からの2020年度採用選考で“顔写真の提出”や“性別の申告”を不要にしたと発表した。
対象となるのはユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの全部門で、工場採用に関しても性別を記入しない方式にするという。
実際にLUXのホームページで履歴書をダウンロードしてみると、通常の履歴書であれば必ずある“顔写真を貼る欄”や“性別を書く欄”がない。名前も名字だけを記入するようになっており、名前から男女の推定をすることもできない。
このような決断をしたきっかけは、同社が実施したアンケート調査の結果だ。
「LUX(ラックス)」が、採⽤の書類審査を担当することがある会社員・会社経営者424名にアンケート調査を実施したところ、約4⼈に1⼈が「採⽤過程において、男性と⼥性が平等に扱われていない」と感じていたのだ。
また、採⽤時に、性別への先⼊観が無意識に存在することや、履歴書のスクリーニングの段階で、履歴書に貼る写真が合否に影響していることも分かったという。
ラックスは、女性が理想の自分に近づくために社会のルールや固定観念に囚われることなく、自分らしく輝くためのサポートをすることをブランドフィロソフィーに掲げている。
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングはこうしたアンケート調査の結果から、女性と社会の円滑な関係づくりをサポートする「LUX Social Damage Care Project(ラックス ソーシャルダメージケア プロジェクト)」を立ち上げ、第1弾として、今回の採用選考の方針を決定したとしている。
この一環として動画を公開。動画には男女ふたりの田中ヒカルさんが登場し、自身の経歴や志望動機などをPR。そして、最後には「ヒカルが、最も優秀な候補者だった場合」「男か女かなんて、カンケーある?」「#性別知ってどうするの」などの言葉で締めくくられている。
採用選考における“顔写真の提出”や“性別の申告”を不要…。とても興味深い試みだが、デメリットはないのだろうか。
例えば履歴書の選考の結果、9割が女性もしくは男性というように偏った男女比率になったとしても、選考はそのまま続けるのだろうか?
今回のプロジェクトの広報担当者に詳しく話を聞いた。
ポジティブなコメントが多く寄せられています
――採用選考で“顔写真の提出”や“性別の申告”を排除したことについて、どのような声が寄せられている?
嬉しいことに、ポジティブなコメントが多く寄せられています。
「今まで考えたことがなかったけど、そういえば、なんのためにあるんだろうね」といった単純な疑問や、「海外では顔写真の提出がないことは当たり前なのに、日本は遅れてるよね」といった声なども寄せられています。
また、「この活動が早く日本のスタンダードになってほしい」といった。嬉しいコメントも続々、届いております。
――調査で「採用過程において、男性と女性が平等に扱われていない」ことが明らかになった。これは、男性と女性、どちらに対する不平等が多かった?
こちらは定量的に男性と女性どちらの不平等が多かったかは質問内で聞いておりません。
――履歴書の選考の結果、例えば9割が女性もしくは男性というように偏った状況になったとしても、選考はそのまま続ける?
はい、続けます。
弊社は男女という枠のみならず、あらゆる性別を問わず、意欲と能力にのみ焦点を置いた採用をいたします。
――履歴書選考の次の段階、「面接」において男女の平等はどのように保っていこうと考えている?
普段から男女の平等については十分に留意して、面接官トレーニングを行なっていますが、今回はさらに追加の面接官向けのトレーニングを行う予定です。ラックスやユニリーバがこの活動を行うことの意義や、すでに行ってはいるものの、改めて性別関係なく選考することについてカバーします。
また、こちらもすでに行っていることですが、面接の際は、面接官が単独で入ることを極力せず、必ず2人以上の面接官が同席することで、その人への無意識のバイアスが少なくなるよう心がけています。
現在の女性比率は37%、女性管理職比率は38%
――これまでの採用の男女の比率はどれぐらい?
こちらは公開しておりません。
――では、社員の現在の男女比を教えて。
ユニリーバ・ジャパングループ全体では「女性比率」37%、「女性管理職比率」38%となっております。
日本の採用選考では当たり前だった、“顔写真の提出”や“性別の申告”。
少しでも印象を良くしようと、提出する写真をわざわざスタジオで撮影する就活生がいる中で、これらを不要とする今回の取り組みは、多くの人たちが無意識に持っている先入観や固定観念を取り除くきっかけとなるのかもしれない。
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