自宅でできる「リハビリ動画支援」

新型コロナウイルスに感染した場合、高齢者や疾患を持っている人は重症化しやすいと言われているため、特別養護老人ホームなど高齢者が集団生活する場所では、最大限の警戒が続いている。

北海道の介護現場を先日取材した際には、感染予防のため「リハビリ職の人が来られなくなる」ことでの悪影響も懸念していた。
(参考記事:「自分が感染源になることが怖い」新型コロナ感染者最多の北海道で働く介護士に話を聞いた

こうした中、外出自粛で思うようにリハビリを受けられない脳卒中患者たちに自宅で体を動かしてもらおうと、兵庫・西宮市在住の理学療法士がインターネットを使った「リハビリ動画支援」を無償で始めた。

この活動を12日からスタートさせたのは、「動きのコツ研究所リハビリセンター」を運営する、理学療法士の生野達也さん。
支援の内容、脳卒中患者たちの現状や課題について話を聞いた。

「体が弱ってしまうのが心配」脳卒中患者から不安の声

ーー「リハビリ動画支援」とは?

以前から、脳梗塞や脳出血による後遺症である片麻痺のリハビリ動画を、YouTubeで公開していました。
しかし、公開している動画の数が550本と多く、利用者から「自分の症状にあった動画がわからない」といった声もあったことから、今回、電話相談で個別の状態把握をした上、一人ひとりに適したリハビリ動画メニューをメールで無償提供することを決めました。


ーー支援を始めたきっかけは?

新型コロナウイルス感染拡大の影響から、名古屋ではデイサービスの休業要請もあり、リハビリ機会減少が懸念されています。
子どもたちや働く人たちへの支援に関するものが多い一方で、介護サービス休止によって大きな影響を受ける障害者の方々に対する支援が少ないことを感じていました。

その中で、少しでも全国の脳梗塞や脳出血当事者のリハビリに関する不安解消に役立ちたいと思い、支援をスタートさせました。

ーー感染拡大は、脳卒中発症者にも影響?

脳卒中発症者では、高血圧や糖尿病など何らかの基礎疾患を持っている人が多く、その確率は89.1%にも及びます。(島根県保険環境科学研究所 2011年調査)
その中で、新型コロナウイルス感染重症者の多くは基礎疾患を有していることが明らかとなりました。

そういったことを受け、「感染が怖くて外出できない」、「感染が不安でリハビリを休んでいる」、「外に出ないので、体が弱ってしまうのが心配」という、脳梗塞や脳出血当事者からの不安の声を多く耳にします。

外出やリハビリ自粛の長期化は、患者にとって筋力・体力低下してしまうリスクがあります。また「リハビリ難民」を増加させるきっかけにもつながるでしょう。

ーーもう少し詳しく教えて?

リハビリが必要な状況であっても医療保険制度の日数制限によって、十分にリハビリが受けられない人のことを「リハビリ難民」といいます。

一般的に「脳梗塞や脳出血を発症してから180日が経つと改善が起こりにくくなる」と言われています。そのため、現在の医療保険制度では、リハビリ病院に入院して集中的にリハビリができる期間は、脳卒中の場合は最大180日と決められています。

退院後は、主に介護保険を使ったリハビリを受けることができますが、マンツーマンでのリハビリ時間は圧倒的に少なくなるのが現状です。しかし、発症から180日を超えても、ちゃんとリハビリを続ければ、前進する可能性はあります。

この活動をきっかけに、「リハビリ難民」と呼ばれる困難者をひとりでも減らし、笑顔にできればと思っています。

「当事者同士が集える場をつくることも必要」


今回の「リハビリ動画支援」は、まず電話相談で体の動きにくさの悩みを聞いて、個別の状態把握を行った上で、一人ひとりに適した動画の種類や順番を整理し、自宅でできるリハビリ動画メニューとしてメールで無償提供してくれるという。

さらに、生野さんは「当事者同士が集える場をつくることも必要」だと訴える。長く地道な道のりであるリハビリを乗り越えるためにも、人と人が支え合う環境が大切だという。


問い合わせ先は「動きのコツ研究所リハビリセンター」 電話050-3390-0152(受付時間10:00~19:00)まで。

(執筆:清水智佳子)

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