トラブル報告続々…「うつらない咳」をアピールするアイテム
咳やくしゃみをする際にマスクやハンカチなどを口元にあてる「咳エチケット」。
インフルエンザなどをはじめ、咳やくしゃみの飛沫から感染が広がってしまうことを防ぐのに有効な手段だが、すでにシーズンに入っている花粉症や、ぜんそくなど「周りに感染しない」症状でせき込んでしまう場面は少なくない。
しかし、飛沫感染するとされる新型コロナウイルスの拡大を受け、不安が広がっている現在。電車やバスなどで隣の人が咳やくしゃみをすると、「もしかして…」と不安になってしまうこともあるだろう。
本人は「これは違うんです!」と言いたくても、周りにその都度、自分から説明するわけにもいかない。そのような時に役立ちそうなアイテムが今、SNSを中心に話題となっている。
それが、川崎市の雑貨店「エピリリ」で販売されている「ぜんそくマーク」と「花粉症マーク」だ。
「ぜんそくマーク」には「このセキはうつりません」の文字と、マスクをした人やパンダの困り顔が、「花粉症マーク」には「花粉症です」の文字とともに涙目のウサギなどが消しゴムはんこでデザインされている。
SNSでは「これはコロナじゃないんです!花粉症なんです!」「咳やくしゃみをすると周りからにらまれる。迂闊に咳ができない…」という悲痛な訴えが多く挙がっており、中には「ぜんそくで咳をしていたらマスクを投げつけられた」という体験談もあった。
そのような中、このマークを知った人たちからは「こんなのが欲しかった」と喜びの声が寄せられている。
咳やくしゃみに敏感になっている人が多い現在、身につけるだけで無用のトラブルがなくなるなら非常にうれしいことだろう。その反面、「このようなものがないとトラブルが起きてしまうのは悲しい…」と思ってしまうのも事実な「ぜんそく・花粉症マーク」。
これらのマークを作ったのは「エピリリ」店主で消しゴムはんこ作家の牧野美和さん。きっかけや売れ行きなどについて、詳しくお話を伺った。
新型コロナの影響で注文数が激増
――「ぜんそく・花粉症マーク」を作ったきっかけは?
私が主催している消しゴムはんこ教室に通ってきてくれている友人が「ぜんそくマーク」というものがあるとテレビで見て知り、消しゴムはんこで作りたいというので私が図案を考えました。
「かわいくできたし、欲しい方がいらっしゃるなら売りたい」と思い、もともと「ぜんそくマーク」を考案されたNagaさんに連絡をとり、販売についてご快諾をいただいた上で販売を始めました。 売れ行きも良く、「花粉症バージョンもほしい」と多数の方からお声をいただいたので、花粉症バージョンも製作をしました。
ぜんそくマークはコロナウイルスのことが深刻化する前に販売していて、その後電車の緊急停止や山手線でのケンカ報道を受けて注文数はぐっと増え、花粉症バージョン希望の声も高まってきた、という流れです。
――これまでの販売数は?
「ぜんそくマーク」 の販売は2月13日から、「花粉症マーク」は2月27日からで、両方合わせて1万個以上です。まだ全体像は把握できていません。楽天市場に限定して販売しているのですが、発送が追いついていない状況です。3月下旬から一部書店でもお取り扱いいただけるようになったので、より多くの方にお届けできるようになると思います。
牧野さんが「ぜんそく・花粉症マーク」を作るきっかけとなったのは、編集部でも以前紹介したバッジ型の「ぜんそくマーク」だ。
(関連記事:「この咳はうつりません」“ぜんそくマーク”で周囲の目は優しくなる? 制作者に聞いてみた)
このマークをもとにして、新たに消しゴムはんこでデザインしたという牧野さんは、自身もぜんそく持ちとのことで「マスクをしていても周囲の目が気になる。申し訳なく思ってしまう。その心苦しさを感じていました」とブログにつづっている。
――ご自身もこのマークを活用している?
外出時はつけています。が、あまり外出ができない状況です。
――デザインでこだわった点はどこ?
可愛くて明るい気持ちになれる、というのがこのバッジに限らず製作する上でのモットーです。
「本当ならマークが不要な世の中になるのが一番いい」
そして、すでに1万個以上を販売しているという「ぜんそく・花粉症マーク」。
ともに、新型コロナウイルスの流行にあわせて作られたものではないというが、公共の場で咳をすることに敏感になっている人が増えていることが、注文数に大きく影響しているという。
「それだけ敏感にならざるをえない状況であることがわかり、売れることを単純に喜べない気持ちです」と語る牧野さん。大きな反響に対して「本当ならお互いの思いやりでマークが不要な世の中になるのが一番いいが、これをつけることで気持ちが楽になる方がいるなら届けたい」ということだった。
――非常に大きな反響があったが…
これほどまでに困っている方が多いということに驚いています。周囲の目を気にしてしまうという国民性もあるかもしれませんが、実際に白い目で見られたというお声も多く、胸が痛いです。
売れて嬉しいという気持ち以上に、こういうマークが必要とされすぎている状況が早く落ち着けばいい、と切に思います。そして私の本業は消しゴムはんこで様々なグッズを作ることなので…そちらの仕事が止まってしまっているのを再開したいです…
「ぜんそくマーク」「花粉症マーク」はともに缶バッジタイプが1個550円(税込)、キーホルダータイプが1個990円(税込)。
新型コロナウイルスの脅威が広がる中、今はまずこのようなマークを上手に活用し、世間に広がっている不安な気持ちを少しでも和らげていくのが良いのだろう。
そして、周りで咳やくしゃみをされてもすぐに感情的にならず「感染症ではなく、別の理由かもしれない」と考える余裕を取り戻せるよう、一刻も早い新型コロナウイルスの収束を願いたい。
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