2020年の政局を動かす要素

いよいよ幕開けした令和2年・2020年という節目の年。東京オリンピックイヤーであり、秋篠宮さまの立皇嗣の礼により皇位継承関連の儀式が締めくくられる年であり、アメリカでは大統領選挙の年となる。

東京五輪イヤーの2020年
東京五輪イヤーの2020年
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そして日本の政界にとっても極めて重要な1年となりそうだ。8年目に入った第2次安倍政権の終わりが見えてきた中で、その後の政界の構図を決める年になる可能性があるからだ。その重要な要素は「ポスト安倍」をめぐるレース、「野党合流」の行方、そして安倍首相による「衆院解散」の決断の3つだ。この3つの要素が複雑にからみあって今年の政治ドラマを織りなしていくことになる。

その主演はやはり安倍首相である。そして助演は与野党の有力者たちということになるが、安倍首相にとって今年は、“最後の主演の年”になる可能性もはらんでいる。そのことも踏まえ、先の3つの要素を個別に見ていきたい。

安倍首相
安倍首相

ポスト安倍をめぐる争い

現時点で安倍首相の任期は、自民党総裁としての任期が切れる2021年秋までとなる。その後の首相の候補として現時点で取り沙汰されているのが、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、河野太郎防衛相、小泉進次郎環境相、茂木敏充外相、加藤勝信厚労相らだ。しかし、いずれも現状では決め手にかけると言われている。

第4次安倍再改造内閣の発足
第4次安倍再改造内閣の発足

菅官房長官は、二階幹事長や古賀元幹事長から高い評価を受け首相候補に急浮上したが、国民からの「令和おじさん人気」は一服し、安倍首相周辺や麻生副総理周辺から菅氏の台頭を警戒する声も上がっている。河野氏や茂木氏、加藤氏はダークホース的存在だが、党内や国民の間での待望論も現時点では広がってはいない。

菅官房長官
菅官房長官

こうした本命なきポスト安倍レースに変化が表れるかが2020年の政局の大きなポイントだ。ポスト安倍に向け、誰が抜け出し、誰が脱落するのか。さらに誰も抜け出せない場合、麻生氏や二階氏が主張する「安倍4選論」が現実味を持ってくる可能性もありそうだ。

野党の大連合はなるのか?カギは「野合」批判を乗り越える「旗印」

一方、野党に目を移すと、焦点は立憲民主党と国民民主党の合流を核として野党の大連合が実現するかどうかだ。昨年末に立憲・国民両党は年内の合流も視野に協議を行ったが、合流への方向性を確認するにとどまり、肝心の政策などの細部については、結論を今年に持ち越した。

立憲民主党・枝野代表と国民民主党・玉木代表
立憲民主党・枝野代表と国民民主党・玉木代表

両党の合流に向けた最大のハードルは、立憲民主党が脱原発をかかげているのに対し、国民民主党は電力総連や電機連合など原発を容認する労組出身の議員を抱えていて、政策が折り合わないことだ。また安全保障や憲法改正をめぐっても、スタンスに違いはある。これらを乗り越えて合流し、力を結集できるかがポイントで、合流構想の行方は、通常国会での、桜を見る会問題などに関する政府与党への追及ぶりにも影響するだろう。

ただ、野党の大連合に向けたハードルは立憲・国民の合流だけではない。先の参院選で注目を集めた山本太郎代表率いるれいわ新選組との連携も課題で、そのハードルは消費税をめぐる政策の違いだ。去年の消費税率10%への引き上げに反対していた立憲民主党は税率を8%に戻すべきだとの立場だが、これに対しれいわ新選組は、5%まで下げるべきだと強硬に主張していて、折り合いをつけるのは難航が予想されている。

山本太郎代表率いるれいわ新選組
山本太郎代表率いるれいわ新選組

そして仮にこれらの折り合いをつけた場合に当然出てくるのが政策の違いをうやむやにしたままに合同してしまう「野合」だとの批判だ。「野合」という言葉は、これまでも幾多の政党の合流や連立のたびに向けられてきた痛烈なものであり、野党内には「自民党と公明党の連立もいわば野合なのだから野合批判は気にするな」という声もあるが、選挙での有権者の反発を考えると、無視するわけにもいかない重いものだ。

仮にその「野合」批判を乗り越えるものがあるとするならば、合流や大連合によって、何を成し遂げたいかという「旗印」だろう。旧民主党政権の誕生前夜はまがりなりにも、そうしたビジョンを示していたが、今の立憲民主党などには、政権批判の姿勢が際立つ一方、政権政策や、自らがつくりあげる国の具体的デザインの発信は足りないと指摘されている。そうした国民にわかりやすい具体的旗印を枝野代表や玉木代表らが掲げられるかは、合流の成否と並んで今年の焦点となりそうだ。

安倍首相の「解散戦略」3つのパターン

こうした与野党それぞれの事情をパズルピースにして、安倍首相が判断するのが衆議院の解散・総選挙のタイミングだ。衆院議員の任期は安倍首相の総裁任期が切れる来年9月の直後の10月だ。それを踏まえ安倍首相には、解散について大きく分けて3つの選択肢がある。

1・今年中に解散、2・来年の前半に解散、3・解散せずに来年秋に誕生する新総裁に解散を託す、という3通りだ。では安倍首相の立場に立って、どの選択が望ましいのか考えてみたい。

このうち「3」の、安倍首相は自らの手でもう解散を行わないという見立ては、安倍首相の周辺を含めそれなりに語られている。ただその場合、自民党総裁選が直後の衆院選を意識した人気重視の選挙となり、安倍首相が好ましくないと思っている石破氏への追い風が吹いてしまう恐れがあるというデメリットが安倍首相にとってはある。

「2」の来年前半というのも、安倍首相にとっては任期が残り少ない中での解散になるわけで、長期政権の終盤にしかける解散としてはそれなりの大義名分が必要になる。例えば憲法改正の是非や、ロシアとの北方領土返還交渉の方針についての信を問うというような場合だ。ただ憲法を争点にした解散には連立パートナーの公明党が否定的で、外交を争点にするには、交渉の進展が必要になるため、自力だけではなんともしがたい所だ。

臨時国会・12月
臨時国会・12月

となると安倍首相が積極的に解散を打つ前提では、「1」の今年中の解散というのが現実的ということになる。そこで、今年中の解散のタイミングを考えると、いくつかに絞られる。

1・1月の国会冒頭解散、2・3~4月の予算成立後解散、3・東京五輪前の都知事選とのダブル選挙、4・東京オリンピック・パラリンピック終了直後の解散、5・11月解散12月選挙、の5通りだ。

「1」の通常国会冒頭解散は予算審議に影響が出てしまうことから、政府与党内でも可能性は極めて低いとみられている。「2」の予算成立後解散についても、秋篠宮さまの立皇嗣の礼が4月19日に行われることなどを踏まえ否定的な声がある。

残りの選択肢の中でもっとも有力とみられているのが東京五輪終了後の「4」「5」のパターンだ。「4」の場合は、パラリンピックが終了する9月6日以降、早い段階で臨時国会を召集し、冒頭に近い段階で解散するパターンとなるが、その際は東京五輪効果でどのくらい支持率が上昇したか、解散の大義名分は何になるかが判断要素となるだろう。「5」の場合は、臨時国会で、全世代型社会保障の関連法案が提出されるなどし、与野党が激突した場合、その是非を問うのを大義名分に解散する可能性を指摘する向きがある。

五輪カラーにライトアップされた東京スカイツリー
五輪カラーにライトアップされた東京スカイツリー

一方で、この「4」「5」は、安倍首相が解散を仕掛けるシナリオとして、すでに本命視されているシナリオである。しかし安倍首相はこれまで2回の衆院解散では、野党の機先を制する形で早めに仕掛けてきた。今回もそうした積極果敢な解散をしかけるとした場合、「3」の、5月末か6月に解散し、東京五輪直前の7月5日投開票の東京都知事選と同日選という案が浮上する可能性がある。すでに飯島勲内閣官房参与が週刊誌でその可能性に言及している。

様々な政治家の思惑がうごめく2020年…安倍首相の決断は?

 
 

こうしたパターンを念頭に、あとは安倍首相自身が、内閣と自民党の支持率、ポスト安倍をめぐる情勢、経済情勢、国会の情勢、解散の大義名分となるテーマ、野党の大連合に向けた進捗などを総合的に判断し、決断することになる。

政策的にも、内政では、東京五輪後に景気は持つのか、社会保障改革で負担増の議論をどうするのか、憲法改正の行方といった点が重要になるし、北朝鮮との関係、日露交渉の行方、日米関係なども解散のタイミングを左右する可能性はある。

いずれにしても、安倍首相にとって来年はレイムダック化の流れに抗いながらの政権運営を余儀なくされるだけに、政界の主役として演じきれるこの2020年をどう動かしていくかは、長期政権自体の評価も左右する重要な課題だ。

東京オリンピックに沸くことが確実なこの2020年、その裏では、政治家たちの様々な思惑がうごめき、発露される1年となりそうだ。

(フジテレビ政治部デスク 高田圭太)

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髙田圭太
髙田圭太

フジテレビ報道局  政治部デスク 元「イット!」プロデューサー