政府の性暴力被害SNS相談窓口に15日で250件

いよいよ2020年代という新たな時代を迎えた日本。2010年代に女性の権利・地位向上への動きが加速してきたことも踏まえ、2020年代こそ女性の時代だという声も多い。一方で昨年も、女性が被害者となる性暴力に関する様々なニュースが世間を騒がせた。

その性暴力被害をめぐり、政府は昨年末、若者向けにSNSを用いた性暴力の被害相談「Cure Time(キュアタイム)」を試験的に実施した。この事業は15日間の期間限定で行われたが、中高生を含む若者を中心に250件を超える相談が寄せられた。

(Cure Timeホームページより)
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改めて、女性への性暴力に関する問題が深刻なことが浮き彫りになった形だが、今回この「SNS相談」が行われた背景には、性暴力による被害は明らかになりづらいという現実がある。

13人に1人が性暴力被害者、でも半数が「相談せず」

政府の2017年の調査では、「無理やり性交等をされた」被害経験のある女性は7.8%、すなわち約13人に1人にのぼった。この数字自体も衝撃的だが、その被害について「誰かに打ち明けたり相談したりしたか」尋ねたところ、女性では58.9%もの人が「相談しなかった」と答えている。(2017年度・内閣府「男女間における暴力に関する調査」より)

そしてこの調査において「無理やり性交等されても相談をしなかった理由」を尋ねたところ、「恥ずかしくて誰にも言えなかったから」が52.2%と一番多い理由だった。とりわけ、身内や知り合いから被害を受けた場合は相談がしにくいだろう。

こうしたことを踏まえると、性暴力の被害を受けた場合に、警察や相談窓口に出向くのはかなりハードルが高いと言えよう。電話での相談という方法もあるが、若年層ではそもそも電話よりSNSやメールでのやり取りが中心となっているため、見ず知らずの人にいきなり電話で悩みを打ち明けるのは、勇気のいる行為だろう。

それだけに、女性活躍を担当する橋本聖子大臣は「性暴力の被害者は心身に大きな被害を受け、その影響も長く続くことがあるので、被害を訴えることを躊躇せずに必要な相談を受けられるような相談体制の整備が重要な課題だ」と、性暴力被害に関する相談体制整備の重要性を訴えていた。

(13人に1人が性暴力被害者  ※画像はイメージ)

官民初の「SNS相談」には中高生からも…被害相談の「入口」に

そこで政府が今回、試験的に実施したのが、SNSやメールなど短文でのコミュニケーションに慣れている若者向けに、SNSを用いた性暴力の被害相談「Cure Time(キュアタイム)」だ。

(Cure Timeホームページより)

画像のように、LINEやFacebookのメッセンジャーを使って、性暴力被害者支援を行う民間団体に相談することが出来る仕組みで、日常的に使っているSNSを使い相談できるようにすることにより、悩みを打ち明けるハードルを低くしようとする試みだ。

今回の相談事業は12月10日~24日の15日間の期間限定で行われたが、250件を超える相談が寄せられた。そのうち、10~20代の若者による相談が多く、中学生や高校生からの相談も寄せられ、これまで被害の相談をしたことがなかった人の利用も多いという。

具体的な相談事例は紹介できないが、「レイプされた」「妊娠したかもしれない」「交際相手から嫌なのに性行為をされた」「リベンジポルノで脅されている」など、被害直後の内容、これまで長く苦しんできた内容、さらには“友人が被害を受けた”とする内容など、多岐にわたる。若年層ならではの相談も多く、担当者は「チャットを通じて信頼関係を築き、信用できる大人がいることを理解してほしい」と語る。

加えて、「つらい」「死にたい」というような短い言葉で寄せられた相談でも、チャットでやり取りを重ねることで、つらい気持ちの原因が幼少期に受けた性暴力にあるということが浮かび上がってくることもあるという。

(相談画面のイメージ)

なお、SNSによる対応は、被害相談のあくまで「入口」と位置付けられている。すなわち、SNS相談を通じて心が楽になることはあっても、被害者の困難な状況そのものは変わらない。そこで、今回の取り組みでは、相談を通して生活支援窓口を紹介したり、窓口や病院、警察など必要な機関に行く一歩がなかなか踏み出せない人に対して、一緒に行ってあげる「同行支援」を行ったりと、被害相談の「出口」につなげることを意識している。

SNSならではの課題も

今回の取り組みは試行的に行われたが、いくつか課題もみられた。まず、期間限定で行われたうえ、相談を受け付ける団体のキャパシティゆえに相談対象地域が限られた。加えて、顔が見えないことで相談のハードルが低いという利点がある反面、なりすましやいたずらの相談を受けるリスクがある。ただでさえ相談員が少ない中で、悪ふざけに貴重な時間を取られてしまっては本当に助けを求める人に対応できない。

(Cure Timeを紹介する名刺サイズのカード)

そして、今回の相談の実施については、支援団体のアカウントなどを通じSNS上で拡散され周知されたが、政府としてどのように支援を必要とする人への訴求を図るべきかという課題もある。政府は今回、名刺サイズのカードを大学や学生団体を通じて配布した。一方で従来の広報媒体である政府広報については男性の閲覧の方が多いというデータもあり、今後も精査が必要だ。政府は、今回の試行を踏まえた課題を洗い出し、今後の施策に生かしていきたいとしている。

「SNS相談」は定着するか

内閣府では来年度の事業について、今回の実績を踏まえ、これから検討していくとしている。
性暴力被害者の約半数がPTSDになってしまうとする調査結果もあり、支援にたどり着けなかったり、何十年も悩みを抱えたりする人も少なくないことから、性暴力は「魂の殺人」とも言われる。

今回の「性暴力に関するSNS相談」は官民通じて初の取り組みであったが、被害者にとって相談しやすい体制づくりという意味において、本事業は先行事例となり得るだろう。今後もSNSなどインターネットを活用した支援体制が確立していくか、注目したい。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)