カナダ海軍フリゲートが「キーン・ソード」参加

カナダ海軍フリゲート「カルガリー」
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10月29日、2年に1度の日米共同統合演習「キーン・ソード」が始まった。
自衛隊4万7000人、アメリカ側1万人、それにカナダ海軍のフリゲート「カルガリー」と補給艦「アストリクス」が加わるという大規模かつ、日本周辺・グアム・テニアン島等を舞台に、広範囲にわたる演習である。

カルガリーのSNSをみると、米海軍空母ロナルド・レーガンの艦載機支援、特に、夜間の離発艦の際、万が一の場合にパイロットのレスキューを支援するのだと言う。
さらに11月2日には、国連制裁違反に当たる北朝鮮の洋上での貨物の受け渡し、いわゆる「瀬取り監視」も東シナ海で実行したと発表している。

キーン・ソード演習に参加しながら、瀬取り監視も実行したのなら、なかなか忙しい軍艦だ。

北朝鮮はウラン濃縮継続、「並進」で核武力路線再開?

ところで、その北朝鮮だが、米国の北朝鮮専門情報サイト「38North」は11月2日、最近の衛星画像の分析から、北朝鮮がウラン濃縮活動を現在も続けていると分析した。

平壌の北にある「パクチョン・ウラン濃縮工場」は、天然ウランから原子炉の燃料の元となる「イエローケーキ」を生産する施設として知られ、ウラン鉱石から出来た廃物が池に捨てられてきたが、その量が、2016年段階より増大しているとみられるという。

池に捨てられた廃物量(2016年:左)(2018年:右)

濃縮が続いている場合、それが新たに採掘されたウラン鉱石によるものか、それともすでに採掘済みのウラン鉱石を使ったのかは不明とのことだが、濃縮作業を繰り返せば、原爆の材料ともなりうることになるわけで、注目される。

そして、同日2日に北朝鮮のメディア「わが民族同士」は、クォン・ジョングン北朝鮮外務省・米国研究所所長の名前で下記の論評記事を掲載した。

「もし米国が、我々の度重なる要求を正しく聞かず、態度の変化も見られないまま傲慢に行動すれば、4月、私たちの国が採用した経済建設総集中路線にさらにひとつ追加されて、『並進』という言葉が再び生まれうる」(わが民族同士・11月2日付より)

北朝鮮の要求の1つは「制裁緩和」であり『並進』路線とは、経済建設と核武力建設を同時に進めるという意味に解される。
38Northが指摘するように、ウラン濃縮の技術を北朝鮮が維持し、今も活動を継続しているなら、「並進路線」の復活は物理的にありえないことではない。

米陸軍が相模原に、弾道ミサイル防衛の“頭脳部隊”設置

相模総合補給廠

では、何らかの対応が、日米は取れるのだろうか。
10月31日、米陸軍は神奈川県の相模総合補給廠に司令部を置く、第38防空砲兵旅団の再編成式典を行った。
第38防空砲兵旅団司令部は、10月16日に約115人で編成され、約半年かけて相模総合補給廠に人員が移ってくる。

この司令部の下には、これまで、ハワイに拠点のある第94陸軍防空ミサイル防衛コマンドの直属の隷下部隊だった、沖縄・嘉手納基地のPAC-3迎撃システムを装備した米陸軍第1防空砲兵連隊第1大隊、それにAN/TPY-2(FBM)レーダーを装備した青森県・車力通信所の第10ミサイル防衛中隊、京都府・経ケ岬通信所の第14ミサイル防衛中隊が傘下となる。

そして、司令部の編成式典では、“近々”グアムのTHAAD部隊も、この司令部の指揮下に入ることが明らかにされた。

グアムのTHAAD

北朝鮮の核と弾道ミサイルが結びつけば、日本の安全保障にとっても、由々しき事態となる。
第38防空砲兵旅団司令部の再編で興味深いのは、日本にあるAN/TPY-2(FBM)Xバンドレーダーが、この司令部の配下になるということ。

これまで、日本にあるAN/TPY-2(FBM)レーダーは、ハワイにある、米国の弾道ミサイル防衛網の“頭脳”であるC2BMCの「眼」として、機能していた。C2BMCは、米インド太平洋軍の弾道ミサイル捕捉・追尾の様々なセンサーや、迎撃システムを連接し、どの迎撃システムに、どの弾道ミサイルの迎撃を担当するか判断。

C2BMC

必要なデータをその迎撃システムに送付、迎撃を実行させるという仕組みだ。
日本におかれたAN/TPY-2(FBM)レーダーが捕捉した、弾道ミサイルや飛翔体のデータは、ハワイのC2BMCで処理したうえで、日本に送付されていたはずだが、今後どうなるのか興味深いところだ。

そしてもう1つは、グアムに配備されているTHAAD部隊が傘下に入るという事。
これは、第38防空砲兵旅団が、グアムに向かう弾道ミサイルの迎撃を指揮するということの他に、状況によっては将来、グアムのTHAADを日本に移動展開させる準備が物理的には出来るということかもしれない。

万が一、北朝鮮の火星12型弾道ミサイルが日本に向かってロフテッド軌道で飛んでくるかもしれないとすると、イージス艦やイージスアショアに搭載する新型のSM-3ブロックllA迎撃ミサイルが必要になってくるが、米軍への「引き渡し数」が限定されている。

SM-3ブロックllA、米軍への「引き渡し数」

米議会調査局の資料によれば、2018会計年度で4発、21会計年度になっても累計で27発、22会計年度で42発。生産能力がこの程度だとすると、日本への引き渡し数も当然、限定されるだろう。

すると、SM-3ブロックllA迎撃ミサイルの数が充分でない間は、特に、THAADの日本展開を視野に入れざるをえなくなるかもしれないが、その際には、その上部部隊である第38防空砲兵旅団司令部の存在は、大きな意味を持つことになるかもしれない。

DF-26中距離弾道ミサイル

だが、日本の安全保障という観点から気に掛かる弾道ミサイルは、北朝鮮だけでなく中国の弾道ミサイル、特に、今年から部隊配備が始まったDF-26中距離弾道ミサイルの存在も気に掛かる。
中国の海洋進出の目安とされる「第二列島線」の中にグアムがあり、DF-26は射程4000kmとされ、別名、グアム・キラー。日本のみならず、米海軍・空軍の一大拠点であるグアムが射程内だ。

さらにDF-26が弾道ミサイルとして、特徴的なのは洋上を航行中の、例えば、空母のような大型艦を狙えるということ。これでは、米軍の行動が牽制されかねない。

第二列島線からわずかに外れるパプアニューギニアの第二次大戦海軍基地

そうした中、11月1日、オーストラリアのモリソン首相とパプアニューギニアのオニール首相は「両国が安全保障等、様々な分野で協力する」という共同声明に署名・発表した。
その中には、第二次世界大戦中に米軍が、パプアニューギニアのマヌス島に建設したロンブラム海軍基地の整備にオーストラリアが協力し、海洋安全保障のインターオペラビリティを強化、オーストラリアの艦艇の寄港を増やすという。

ロンブラム基地のあるマヌス島は、中国が海洋進出をすすめる第二列島線の、ほんの少し外側にあり、ロンブラム基地は、大型艦の接岸に適した水深がある。

米軍の準機関紙スターズアンドストライプス(10月29日付)は「米・豪は、パプアニューギニアの軍艦の基地に注目」と題して、ロンブラム基地を紹介した。同基地は、中国海軍潜水艦の動向を追うにも適した位置にあると専門家の分析も掲載している。米海軍も、ロンブラム基地を再び活用することになるのだろうか。

キーン・ソード+トライデント・ジャンクチュアリ

INF条約からの離脱を米トランプ政権が示してから、弾道ミサイル問題は再び、世界規模の問題となりつつある。米海兵隊のシーリー准将は、下記のツイートを11月2日に投稿した。

シーリー准将:
現在、米軍・同盟国・パートナー国の約10万人規模の演習、ヨーロッパでトライデント・ジャンクチュアリ演習、太平洋でキーン・ソード演習が行われ、それぞれ5万人規模、数十隻の軍艦艇・航空機・数百機が参加している。

米軍にとっては同時並行して、同盟国や友好国と、世界規模で軍隊を動かしていることに意味があるのかもしれない。


【動画】「能勢伸之の週刊安全保障」(11月3日配信)

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