仙台市太白区諏訪町の住宅で2013年10月、宮城県芸術協会職員の鈴木裕子さん(当時43)が殺害され、現金や貴金属が奪われた事件の裁判員裁判。
仙台地方裁判所は9月30日、強盗殺人などの罪に問われている菅野裕太郎被告(38)に対し、無期懲役の判決を言い渡した。

判決公判の法廷 仙台地裁
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事件と裁判の経緯 検察は無期懲役を求刑

事件のあった住宅 仙台市太白区

菅野裕太郎被告は、2013年10月6日未明、仙台市太白区諏訪町の鈴木裕子さんの自宅に侵入。
物色中に2階寝室に鈴木さんがいることに気づき、鈴木さんの首を両手で絞めて殺害し、現金や貴金属87点を奪ったとして強盗殺人と住居侵入の罪に問われているほか、2018年3月と11月に仙台市泉区の元同僚宅に侵入し、現金や金庫などを盗んだとして窃盗などの罪に問われている。

これまでの裁判で、検察側は強盗殺人について「強固な殺意を持った冷酷な犯行」として無期懲役を求刑。弁護側は「殺害の計画性がなかったことは明らかで、生きて反省する機会を与えるべき」と主張していた。

主文言い渡し「被告人を無期懲役に処す」

判決公判時のスケッチ

9月30日午後3時2分、仙台地裁102号法廷。
「それでは、被告人は証言台の前に立ってください」
仙台地裁の大川隆男裁判長は、菅野被告を正面に立たせた。
「主文。被告人を無期懲役に処す」
裁判長の言葉が法廷内に響いた。

「反省は不十分で、極めて強い非難に値する」

主文を言い渡した後、裁判長は判決理由を読み上げた。被告は証言台の前で、まっすぐ立ったまま裁判長の言葉を聞いていた。
今回の裁判は、起訴内容に争いはなく、量刑が争点となった。
裁判長は量刑の理由について、「強い殺意があった」「かけがえのない命が奪われた結果は重大」「動機に同情の余地はない」「極めて強い非難に値する」「反省は不十分」「酌量すべき事情はない」など、厳しい言葉を重ねていった。

・被告は被害者の殺害を計画していたわけではないものの、殺意を強めていきながら、手加減することなく被害者の首を絞め続けていて、突発的ながらも相応に強い殺意があったといえる。また住居侵入、窃盗については計画的で周到なものであった。
・何の落ち度もない被害者のかけがえのない生命が奪われたという結果はあまりに重大。被害者の両親の精神的苦痛も大きく、両親が極刑を求めていることも遺族の立場からは当然のことである。
・働こうと思えば働いて収入を得ることができたはずなのに、安易に盗みに入ることを企てた動機や経緯に同情の余地はなく、他人の生命より自分の欲望を優先して被害者を殺害するに至った意思決定は、極めて強い非難に値する。
・法廷での態度を踏まえても、被告の反省は全く十分ではない。
・同種の事案と比べても、酌量減軽をすべき事情はない。

菅野被告は証言台の前で立ちながら判決を聞いた

同僚宅の窃盗事件「あきれた犯行」として懲役1年2カ月の判決

被告は今回、強盗殺人事件だけでなく、仙台市泉区での窃盗事件についても起訴されていた。
起訴された2つの事件の間に、別の窃盗事件で確定判決を受けているため、判決は強盗殺人事件と窃盗事件それぞれで言い渡された。
仙台市泉区の窃盗事件について、裁判長は「面倒を見てもらっていた同僚宅に2回にわたり侵入して窃盗をしたとはあきれた犯行」と指摘し、それもさらに別の窃盗事件の仮釈放中の犯行であるとして、懲役1年2カ月の判決を言い渡した。

「あなたにできることは…」裁判長が被告に説諭

大川隆男裁判長

判決言い渡しの後、裁判長は被告に向かって次のように述べた。

裁判長:この法廷でのあなたの言動をみると、言葉だけがむなしく響いていました。事件と向き合えていないと思いました。これから長い長い時間をかけて、逃げることなく事件と向き合ってください。あなたがしたことは取り返しのつかないことです。ご遺族の気持ちを片時も忘れないでください。文字通り一生をかけて罪と向き合って下さい。それがあなたにできることです。

被告は黙って裁判長の説諭を聞いた後、被害者参加制度で裁判に参加している被害者の父親に向かって深く頭を下げた。被害者の父親はじっと被告の姿を見ていた。

「死刑選択がやむを得ない」とまでは認定されず

今回の裁判員裁判を、4日間すべて傍聴した。
大金を得るために貴金属を盗もうと1人暮らしの家に狙いを定め、入念な下見を重ねて不在を確信して侵入したが、家人がいたため、とっさに飛びかかり命を奪った被告に、無期懲役の厳罰が下った。
警察の捜査が難航し「迷宮入り」もささやかれていた事件だったが、発生から7年4カ月後に別の窃盗事件で宮城刑務所に服役していた被告が逮捕された。

夜中に突然寝室に入ってきた覆面男に襲われた被害者の恐怖と絶望、そして両親の無念と怒りは計り知れない。
両親は法廷で「命は命をもって償ってほしい」と訴え、被害者参加代理人は検察の求刑を上回る極刑を求めたが、判決では、死刑を選択することがやむを得ないとまでは認定されなかった。

被告は法廷で「一生、贖罪のあり方を必死に追求していきたい」と述べたが、判決で「反省は全く十分とは言えない」と指摘されたように、裁判員らに思いは伝わらなかったようだ。
判決の後、弁護人は「控訴については被告と話し合って決める」と話した。裁判長の最後の言葉が、被告の心に響くことを願ってやまない。

事件発生から8年…

被害者宅の表札は残ったまま

初公判の前日、私は事件現場となった被害者の自宅前を訪れた。
「鈴木」という表札はいまだにかけられたままだった。
事件から8年という月日が経とうとしている。

(仙台放送)