毎日の仕事に追われていると、役所に用事があっても受付時間まで間に合わない場合が多くあり、困ってしまうこともあるだろう。

そんな人にありがたい施策が、大阪府寝屋川市で行われることとなった。

同市の広瀬慶輔市長はYouTubeの「寝屋川市公式チャンネル」で、新年の挨拶として2020年4月から「窓口改革」を実施すると語ったのだ。共働き家庭の人々にとって市役所窓口の開いている時間が短かったとして、その受付時間を平日の午前8時から午後8時までの12時間に拡大。さらに、土曜も午前8時から午後1時までの半日、オープンさせるという。

「寝屋川市公式チャンネル」がYouTube上で公開した「広瀬市長新年挨拶」より 提供:寝屋川市

広瀬市長は「若い共働きの皆さんにも使っていただきやすい市役所を作っていきたいと思っています」「そうした取り組みを進めることで、寝屋川市が目標としている若い子育て世代の皆さんに寝屋川市を選んで住んでいただく、そんな街を作っていきたいと思っています」と、改革の目的を明かしている。

また10日には、寝屋川市役所で新たに「接客プロフェッショナル」という業種の採用を開始。採用人数は12人以内、今年4月1日から採用開始予定で、市役所での来庁者の案件に応じた総合案内などに従事する。年収は約660万~約750万円だという。

寝屋川市といえば、働き方改革についても先進的な取り組みを進めていて、編集部でも以前取材させてもらっている。

2018年4月からは正職員約1000人を対象に、事前承認なしに残業をした場合、午後6時にパソコンが強制終了するシステムを採用。これは、2017年12月から2018年2月までの1カ月平均で、80時間以上の残業が約30人、100時間以上は約10人に上るといった長時間労働を背景としたものだ。
(参考記事:午後6時にパソコン強制終了。寝屋川市の職員に評判上々のワケ【残業対策】

加えて、広瀬市長就任後の2019年10月には「完全フレックスタイム制」を導入し、昨年の秋採用には例年の10倍の応募があった。

同市の「完全フレックスタイム制」では、必ず業務していなければならないコア時間がなく、1カ月の総勤務時間の中で職員は自由に働くことができる。ただし出退勤の時間は事前申請する必要があり、「市役所の業務に支障のない範囲において、上長が申請内容とその時の業務状況から可否を判断する」というものだ。

政府主導で「働き方改革」が叫ばれる中、着実な成果を上げてきた寝屋川市。だが、それだけに気になるのが、今回の「窓口改革」の中身だ。

「働き方改革」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのが「労働時間短縮」。今回の市の改革では窓口時間の短縮ではなく、拡大することになる。そうなると、利用者にとってはありがたい話であるが、窓口に立つ市職員たちの負担がかえって増えてしまう恐れがありそうだ。

そこで、寝屋川市役所の「窓口改革」を担当する職員に話を聞いた。

「17時30分までに間に合わない」子育て世代のため時間延長

ーー今回の「窓口改革」を導入する理由を教えて。

「お待たせしない市役所」を基本コンセプトとして、“時間と距離の短縮”を図るべく、可変型窓口の設置や窓口予約サービスの開始などを進めるためです。

ーー市民からそういった要望の声はかねてから多かった?

各窓口において、「9時から17時30分までは仕事があるから行けない」「交通渋滞で17時30分までに間に合わない」などのお話をいただいておりました。そうした働く子育て世代の声の利便性向上のために窓口時間を延長した次第です。

ーー「窓口改革」で対象となるのは?

市民課、税務室、保険事業室の窓口及び市内各地域に設置している香里園シティ・ステーション、萱島シティ・ステーション、西シティ・ステーション、東シティ・ステーションの窓口が対象となります。

時間が増えても「業務を効率よく運用できる」

ーーサービス導入決定時の職員の反応はどんなものだった?

時間延長に関しては、不安の声もありましたが、今は趣旨を理解し急ピッチで準備を進めています。

ーー窓口時間が増えるが、市職員はどんな体制で臨む予定?

体制などについては、各窓口関係課などと調整していますが、効果的に完全フレックス制を活用することで対応できると考えています。

ーー夜の時間帯は昼と同程度の職員数で対応する予定?

来庁者数は季節や繁忙期(転入・転出などは3月・4月、税や国民健康保険は6月など)によって異なりますので、状況を見ながら窓口数や対応人数を変動させ、効率的に運用していきたいと考えています。ただし、提供するサービス内容に変わりはありません。

ーー市職員側の負担は増えずに実施可能なの?

完全フレックスタイム制の活用で業務を平準化(来庁者を分散化)させることで、働き方改革と窓口時間の延長を両立させます。

ーー寝屋川市が進めている「働き方改革」に、窓口時間を延長する「窓口改革」は逆行しているわけではない?

時間の延長で利便性は向上し、業務は平準化され、一時に集中して対応することが解消されますので、業務を効率よく運用することができると考えています。先の働き方改革と窓口時間の延長も可能となります。


担当者によると、窓口を長く開けることで市民が来庁する時間を分散させ、業務が集中する時間帯を減らそうとしているようだ。業務が集中する時間帯がなくなれば、これまでその時間帯に配置していた人数を減らすこともできる。また、フレックスタイム制で午後出勤を希望した職員に夜の時間帯を任せることができるため、窓口延長がすぐには勤務時間の増加にはつながらないようだ。

現在では約8割の職員が完全フレックスタイム制を利用

寝屋川市が進め、今回の「窓口改革」とも深く関係する「完全フレックスタイム制」、そして現在採用を進めている「接客プロフェッショナル」についても、この機会に聞いてみた。

ーー現在採用を行っている「接客プロフェッショナル」についても教えて。

総合案内のほか、フロア案内、各種窓口での申請受付・相談などを行っていただきます。任用期間は1年ですが、採用後、勤務実績に応じて、採用試験の実施により正規職員に登用することも検討しているところです。

ーー去年始めた完全フレックス制の効果について、データは?

2019(令和元)年10月1日からの制度施行後、月に約8割の職員が完全フレックスタイム制を利用しています。

ーー今後考えている市の取り組みは何?

4月以降の取り組みについては、まだ公表できる状況でないということをご理解いただきたいと存じます。しかし窓口時間の延長、接客のプロによる高いレベルのサービス提供などといった全てがサービス向上につながるものと考えており、これからも先の「お待たせしない市役所」づくりを推進していく予定です。


一般的な「働き方改革」のイメージと異なる寝屋川市の「窓口改革」だが、効率化を一層推し進めることで、現場で働く職員にも、忙しい中でサービスを利用する共働き世代の人たちにもやさしい市役所を目指しているようだ。試みが成功することに期待したい。

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