カルロス・ゴーン被告の大逃亡劇とIR汚職事件の余波、そして中東情勢の緊迫化など波乱の幕開けとなった2020年。そんな中、安倍首相はどのような新年を過ごしたのか。また、この1年で何を成し遂げたいのか。年始の首相発言から展望する。

安倍総理の冬休みは早朝筋トレ 4度のゴルフに映画も

総理番記者は、安倍首相の年末年始もその動向をウォッチする。この年末年始の首相は、例年通り大学時代の友人や親族、経団連幹部らとゴルフを楽しみ、映画を鑑賞し、滞在先のホテル内にあるフィットネスジムでのワークアウトなどをして新年を迎え、英気を養った。

友人とゴルフを楽しむ安倍首相(よみうりゴルフ倶楽部・2019年12月29日)

その中で注目したいのは、1月3日の午前7時。安倍首相は、静養先の東京・六本木のホテル「グランドハイアット東京」内の「NAGOMIスパアンドフィットネス」で3時間のワークアウトに勤しんでいたのだ。

去年の首相動静に遡っても、早朝のワークアウトは珍しい。気になって、安倍首相の年末年始のジムでの運動時間の合計を去年と計算してみると、2018年から2019年の年末年始は、計約6時間40分に対し、2019年から2020年は計約7時間40分と去年と比べ1時間多く運動していたことが分かった。

ここで体を鍛えた成果が表れたのだろうか 。7日、都内で行われた経済3団体による新年祝賀パーティに出席した安倍首相は、自身の20年来のゴルフの課題をようやく克服できたと明かした。

経済3団体による新年祝賀パーティ(都内・1月3日)

「この20年間、私はツーオンすることを諦めてゲームプランを考えていたんですが、これでは進歩がない。そこで私は少しスイングを改造しましてですね。その結果、少しスイングスピードが上がってきたんですよ。その結果どうなったかといえばですね。見事にツーオンしました。しかも、7番ウッドでツーオンしました。(拍手) 65歳を超えてもですね。やはり、ネバーギブアップの精神で挑戦するということが大切ではないか。これが言いたかったわけであります」

経団連の御手洗冨士夫、榊原定征両名誉会長らとの新年初ゴルフ(茅ヶ崎市・1月2日)

60年に一度の「庚子(かのえね)」 “やるべき時は戦う”

年末年始休みを終えた安倍首相は、1月6日から本格的に公務をスタートさせた。自民党の仕事始めや経済3団体による新年会など様々な会合に出席し、2020年の抱負を語った。

伊勢神宮に向かう安倍首相(東京駅・1月6日)

そこで、年始の安倍首相のスピーチに注目すると、幾度となく今年の干支・「庚子(かのえね)」という言葉が使われていた。安倍首相は、「子(ね)」は十二支のトップバッターで新しい芽が出て伸び始める年であり、「庚(かのえ)」は継承すべきものはしっかり継承しながら改革を進めていくという意味があると説明した上で、60年に一度の「庚子」の年を、「まさにこれは安倍政権にぴったりの年になる」と自信げに語った。

そして、過去の「庚子(かのえね)」の出来事として、60年前の日米安保条約の改定(1960年)と420年前の関ヶ原の戦い(1600年)を挙げた。

「60年前の庚子の年は、日米安保条約が改定された年であります。まさに「日米新時代」。当時はそういったキャッチフレーズがあったんですが、やはり外交安保の礎を当時作り上げたのが60年前。そして7回前の1600年の庚子の年には何があったかといえば、関ヶ原の戦いなんです。まさに関ヶ原の戦いに挑んで、徳川260年の太平をひらいた。やるべきときには戦わなければいけない。やるべきときは戦うって、これは別にある概念と結びつくわけではありませんが(会場笑) 改革にしろ、とにかくやるべきときにはしっかりと決断して、新しい時代を切り拓いていく。こういう決意が必要だろうと」

関ヶ原の戦い・1600年

これを聞いた上で、日米安保条約改定の日米“新時代”に今年何があたるかというと、「日中新時代」を目指すべく今春に予定されている中国・習近平国家主席の国賓来日がそれにあたるかもしれない。そして“戦い”といえば、安倍首相がほのめかして笑いを取ったとおり、やはり衆議院の解散総選挙を連想した。安倍首相の年始のスピーチには、この2つのビッグイベントも含め、「新時代を切り拓く節目の一年にしたい」という決意が散りばめられているように感じた。

中国・習近平国家主席との日中首脳会談・2019年

問われる2020年 ネズミ年は奏効するか

「4選は考えていない」と明言している安倍首相にとって、2020年は、来年の自民党総裁任期満了を控え、首相人生をいかに良い形でクロージングしていくかに向けた非常に重要な1年となる。

政治日程をみても、習主席の国賓来日、立皇嗣の礼、東京都知事選、東京五輪と重要なものばかりで、そんな中、いつ安倍首相が衆院解散・総選挙に踏み切るのかが最大の焦点だ。また、内政でも、自身が今年の内閣の「最大のチャレンジ」と掲げる全世代型社会保障改革で成果を残せるか、注目が集まっている。

しかし政権の足元では、幾つもの不安要素が渦巻いているのも事実だ。「桜を見る会」の招待者名簿をめぐっては、10日、菅官房長官が会見で5年分の名簿を行政文書の管理簿に記載していなかったのは公文書管理法違反にあたるとの認識を示した。また、統合型リゾート=IRをめぐる汚職事件の捜査も進んでいて、長期政権のゆるみや歪みを指摘する声も強まっている。

皮肉にも、安倍首相は年始のスピーチのなかで、干支の「ネズミ」について、こうも語っている。

「皆さん、ネズミというのは、(一部略)酷暑の地においても極寒の地においてもそこで生き抜いていくということでありまして。いま私たちに求められているのは何か。決して諦めないというガッツとチャレンジ精神、様々な環境の変化においても愚痴を言わずにしっかりとその変化に対応していく力強さではないだろうか。こう思う次第でございます」

ネズミのようなネバーギブアップの精神で、長期政権の歪みなどにどう向き合い、力強く対応できるかが政権維持と新時代実現のカギともいえそうだ。

(フジテレビ政治部 総理番記者 阿部桃子)