保釈後、散歩中のゴーン被告に遭遇

今話題と言えば逃亡中のカルロス・ゴーン被告だが、実はゴーンが去年4月に保釈された直後に本人と遭遇した事がある。ある週末、近所のクロワッサンが有名なパン屋のカフェで朝ご飯を食べていたらテラス席にゴーンと娘らしき二人連れが座ったのだ。娘がテイクアウトのコーヒーを買い二人はすぐに立ち去った。散歩の途中だったのだろう。その時の写真がこれ。

都内のカフェに立ち寄ったゴーン被告を捉えた一枚(撮影:平井文夫)
都内のカフェに立ち寄ったゴーン被告を捉えた一枚(撮影:平井文夫)
この記事の画像(5枚)

僕も一応記者なので前に回り込んでもっといい写真を撮るなり、声をかけるなりしようかと思ったがなんとなく気が進まなくてやめた。長い拘置所生活で疲れているだろうし、真実は裁判で明らかになるだろうと思ったのだ。つまり奴に同情していたというわけだ。今思えば自分の甘さがちゃんちゃらおかしい。

映画をも超えた「ゴーン大脱走」劇

レバノンでメディアのインタビューに応えるゴーン被告と夫人
レバノンでメディアのインタビューに応えるゴーン被告と夫人

年末年始の映画の興行収入トップは「アナ雪2」。ウチの娘も観に行った。でも「アナ雪」より面白かった「見世物」は暮れの「ゴーン大脱走」だろう。国家の主権に関わる問題なのだからふざけてる場合ではないぞ、と叱られるかもしれないが、なかなかあそこまで面白い見世物はない。映画会社が接触するわけだ。

それにしても、あっさり保釈してしまった東京地裁の裁判官、「逃げませんから」と請け負った弁護士さん、法律守って真面目に働いてる日本国民に謝った方がいいんじゃないですか?そして「海外では保釈は当然」「日本の検察は時代遅れ」と騒いだ識者や記者さんたちも、同罪と思われても仕方ありませんよ。

そのゴーンが記者会見した。心配していた通り、ゴーンはわが日本をディスっていたが、海外の報道を見る限り、彼の思っていたような展開にはならなかった。ゴーンの主張には新味がなく、「僕は悪くない」一辺倒だったからだ。悪くないんなら裁判受ければいいじゃない?日本の司法制度はとんでもなくひどいと考えるほどフランスなど海外のマスコミもバカではなかったということだ。

どっちにしてもゴーンはもう帰ってこない。まああんな奴を日本を代表する企業のトップにしてしまったのが間違いだったのだ。諦めるしかない。

悪党ゴーンから学んだこと

海外逃亡後のゴーン被告 レバノンで
海外逃亡後のゴーン被告 レバノンで

さて我々善良な日本人は悪党ゴーンから様々な事を学んだ。

まず第一に、金持ちを保釈する際はもっと保釈保証金を取らないとダメ、ということだ。ゴーンの保証金は15億円、でも彼の資産は数百億円と言われているので、500億円位取らないと逃走のモチベーションは下がらない。

第二に、逃げそうな場合ファーウエイの娘みたいにGPS付きの足輪をつけなきゃダメだ。つまり嘘つきの金持ちは要注意という事だ。

そして最後に、ゴーン以外にも保釈中に逃げる人はたくさんいる。再犯する人もいる。やはり悪い事した(と思われる)人は牢屋に入れといた方がいいのではないか。

つまり犯罪者の人権とまじめな一般国民の安全のどちらが大事なのだろう。外国人に何言われようと、日本の検察のやり方はそんなに間違ってないのではないか。

かなり高くついたがこれが我々日本人がゴーン事件から学んだ事である。僕も次からはつまらぬ同情などしないようにしたいと思う。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

「平井文夫の言わねばならぬ」すべての記事を読む
「平井文夫の言わねばならぬ」すべての記事を読む
平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。