「1日の労働時間は、原則8時間。8時間を超える場合は、1時間以上の休憩を与えなければならない」と、労働基準法で定められている。つまり、ビジネスマンであれば、仕事の合間に最低1時間の休憩をゆったりと取れるはずだ。

しかし、ギリギリまでのんびりすると「あの人、休憩長くない?」と言われかねない。とはいえ、短い休憩だと休んだ気がしない。いっそ休憩を取らない方が、効率がいいかも…?

そこで、『サボる時間術』の著者で、数々の外資系企業でマーケターとして活躍してきた理央周さんに、効果的な休憩の取り方について聞いた。

パフォーマンス維持の要は、定期的な「休憩」

「仕事中、休憩は絶対に取った方がいいですね。根詰めるとパフォーマンスは落ちるし、いいアイデアも出てこないから、袋小路を抜けるためにも休憩は取らないとダメ。体のリフレッシュは、頭や心のリフレッシュにもつながると思います」

理央周さん
理央周さん
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労働基準法でも定められている通り、休憩はきちんと取った方がいいとのこと。疲れたら休む習慣をつけよう。

「疲れてからでは遅いです。仕事は成果が求められるもので、成果を出すにはいいパフォーマンスを維持する必要があります。仕事を始めた時はパフォーマンスが0でも、進めていくと徐々にエンジンがかかって100まで到達します。そこから疲れて、パフォーマンスが落ちかけた時に休憩を取ると、もっとも効率的です」

パフォーマンスが下がりきってから休憩を取ると、エンジンをかけ直さなければならない。また、100まで上がりきる前に休憩を取るのもNG。十分な成果が出ていない中で、パフォーマンスが下がってしまうからだ。

そこで、パフォーマンスが80に落ちたくらいで休憩を取れば、休憩中に70や60まで下がったとしても、そこからすぐに再スタートを切りやすい。

「パフォーマンスが100まで上がり切る時間は、個人差があります。そのペースがわかると、ちょうどよく休憩を取るタイミングもつかめるので、最初は『今日は3時間ごとに小休止を入れてみよう』『今日は2時間ごと』と、試してみるといいと思います」

ダラダラと仕事をせず、定期的に休憩を入れることで、作業効率も上がるそう。ちなみに、理央さんの場合は、午前は2時間ごと、午後は1時間ごとに15分程度の軽い休憩をとると、パフォーマンスを維持できるのだとか。

「(ピーター・)ドラッカーも『経営者の条件』という書籍の中で、『仕事の多くは、たとえごくわずかの成果をあげるためであっても、まとまった時間を必要とする。こま切れでは意味がない』と、書いています。30分仕事してちょっと休むという繰り返しではなく、ある程度まとまった時間を決めて仕事に取り組み、休憩をはさんだ方が、仕事の質を下げずに進めやすいですよ」


「業務」を管理することで、休憩を取るタイミングも見えてくる

ちなみに、高いパフォーマンスを発揮させるには、休憩時間の管理よりも先にやっておくべきことがあるという。

「時間の前に大切なものが、タスク管理。抱えている業務を洗い出して、『作業』と『価業』に分けます。例えば、メールチェックやデータの入力など、単純作業を『作業』、企画の発案や市場調査など、売り上げに直接つながる業務を『価業』と考えてみましょう」

さらに、それぞれの業務の納期で2段階に分けると、4つに分類される。

(1)急いで終わらせたい「価業」
(2)急ぎではない「価業」
(3)急いで終わらせたい「作業」
(4)急ぎではない「作業」

「分類すると、『(3)は、集中すれば1時間で終わるな』とか『(1)は優先度高めに、たっぷり時間を確保したい』のように、時間の使い方が見えてくるはずです。そこに、休憩時間を取るペースを当てはめていくと、より効率的に仕事を進められます」

「分類した業務の中で、意外と重要なものは(2)急ぎではない『価業』」と、理央さんは話す。

「日々舞い込んでくる(3)を優先して、(2)は後回しにしがちですが、納期ギリギリになって焦るのは自分です。例えば、余裕がある日に2時間だけ(2)に使う時間を確保するなど、意識的に時間を作って管理していく方が結果的に成果は出しやすいでしょう」

「いつもと違うコンビニに行く」が短時間リフレッシュのコツ

仕事や休憩時間の管理術はわかった。では、実際に休憩を取る際に、よりリフレッシュしやすい方法などはあるのだろうか。

「いろんな人からの刺激や思ってもみないモノの見方から、いいアイデアが出てくることがあるので、環境は変えた方がいいですよ。また、『トイレ・お風呂・布団の中にいるとひらめきやすい』とよく言われますが、緊張状態からふと緩和した時に、ひらめきやすいということです」

緊張状態から解放するという意味でも、デスクで休憩を取るのではなく、場所を変えることが大切なのだ。

「いつもより少し遠いコンビニに行く、違うフロアの休憩室に行くなど、できる範囲でいいと思います。その休憩によってパフォーマンスが上がる、という成功体験を積むことが大事。自分自身でテストマーケティングする感覚で、いろんな場所で休憩してみましょう」

「2時間に1回、休憩を取る」などの自分ルールを決めるだけで、自然と業務効率がアップしそうだ。そのペースをつかむためにも、まずは抱えている業務を洗い出し、就業時間内に当てはめてみよう。理央さん曰く、「小さいことからでも、動き出すことが大事」。

理央周
本名、児玉洋典。マーケティング アイズ株式会社代表取締役、一般社団法人最適経営学践協会代表理事、関西学院大学経営戦略研究科准教授も務める。大手製造業勤務などを経て、インディアナ大学経営大学院にてMBA取得。アマゾンジャパン、マスターカードなどでマーケティングに従事した後、2009年に起業し、コンサルティングと社員研修を提供。2018年より、リーダー育成塾LBTを始業する。著書は『サボる時間術』『「なぜか売れる」の公式』など多数。

マーケティング アイズ
https://www.businessjin.com/

取材・文=有竹亮介(verb)

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プライムオンライン編集部
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