仙台市太白区諏訪町の住宅で2013年10月、宮城県芸術協会職員の鈴木裕子さん(当時43)が殺害され、現金や貴金属が奪われた事件の裁判は9月27日、検察、被害者参加弁護人それぞれによる論告と、弁護側からの弁論が行われた。
強盗殺人などの罪に問われている菅野裕太郎被告(38)に対し、検察は無期懲役を求刑し、被害者参加弁護人は検察の求刑を上回る死刑を求めた。被告の弁護人は殺害に計画性はなかったとして死刑を科すべきではないと主張した。

被害者参加制度 父親が意見陳述「悪魔の手をどうにかしてやりたい」

27日の法廷 被害者の父親が意見陳述を行った
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9月27日午前10時、仙台地裁102号法廷。
検察官の論告の前に、被害者参加制度を利用して裁判に参加している鈴木さんの父親が心情を述べる意見陳述を行った。

父親は第一発見者として娘の遺体を目にした時の状況について「冷たくなっていた裕子の顔は、なぜ殺されなければならないのかという悔しい表情をしていた。そのときの顔は8年経っても夢に出てくる」と述べた上で、「自分の欲望を満たすため、自分勝手な理由で娘の命を奪った『悪魔の手』をどうにかしてやりたい。裁判での被告の話は、反省の思いが感じられず自分の罪から逃げる弁解にしか聞こえなかった」と述べた。

そして「被害者が1人の場合は死刑にならないと聞くが、被告には命をもって償ってほしい。裁判官や裁判員の方にはどうか、被告に極刑の判断をお願いします」と訴えた。

検察側「悪質で冷酷な犯行」無期懲役を求刑

検察は無期懲役を求刑

続いて、検察官による論告求刑が行われた。
検察側は「寝室に被害者がいることに気づき、すぐに飛びかかって手加減することなく執拗に首を絞め続けた犯行態様は悪質で、殺意は強固であり、その後も何ら救命行為をすることなく、物色を続け、貴金属を持ち出した犯行は極めて冷酷というほかない」と指摘。

「2カ月も前から下見をし、被害者の行動パターンや家の照明の点灯状況を確認し、手袋を3重につけ、中古品の衣類に着替え、フェイスマスクを着用するなど、盗みに関しては入念な準備をした上での周到な犯行であり、何の落ち度もない被害者のかけがえのない命を奪った結果は重大で、最大限の非難に値する」、「重大な事件を起こした後も同種の侵入窃盗を繰り返し、何度も自首する機会がありながら、自己保身のため打ち明けることができなかったというのは反省が不十分だと言わざるを得ない」などとして、強盗殺人と住居侵入について無期懲役を求刑した。

被害者論告「更生できないことは明らか」死刑を求める

続いて、被害者遺族の代理人弁護士による論告が行われた。被害者参加制度では、被害者側からの意見として求刑を行うことができる。法定刑の範囲内であれば、検察の求刑を上回る刑を求めることも可能だ。

被害者参加弁護人は「被告は経済的に困窮していたというが、単に働いていなかっただけであり、動機に同情の余地はない。寝室に被害者がいるのに気づき、ためらいなく襲いかかり、首を絞めた犯行態様は冷酷で残忍。被害者は、最も安全で落ち着けるはずの寝室で、覆面をした犯人に突然襲われ、命を奪われた。こんなむごい人生の終わり方はない。自首する機会が何度もあったにもかかわらず自首することもなく、裁判での言葉も後悔や自責の念は感じられず、矯正教育によって更生できないことは明らかだ」とした上で、被害者が1人であることが極刑を選択しない理由にはならないとして、死刑を求めた。

弁護側「殺害に計画性はなく死刑を科すべきではない」

被告弁護人

一方、被告弁護人は、殺意の有無を争うものではないとした上で、「入念に下見をしたのは、あくまで不在であることを確認しようとしたものであり、人に危害を与える道具を持たずに侵入し、物音を立てることを気にすることなく家の中を物色していたことからも、不在を確信していたことがわかる。そんな中、寝室に人がいるという想定外のことが起き、パニックになりとっさに体が動いてしまったのであり、殺害については計画性がなかったことは明らか」と主張した。

そして、被告は「気が小さく、他人からよく見てもらいたい、他人に自分をよく見せたい」という性格で、「盗みをしようと考えたのも金銭的に困窮していることを親などに知られたくないという思いからであり、自首できなかったのも他人をがっかりさせたくないという思いからであって、被告には、生きて反省させる機会を与えるべき」と述べ、被告に死刑を科すべきではないと訴えた。その上で「有期懲役は求めない」とも述べた。

最後に「本当にすみませんでした」と父親に頭を下げる

最後に大川隆男裁判長から「言い残したことはないか」と聞かれた菅野被告は「私自身の心の弱さ、未熟さから人の命を奪うという取り返しのつかない結果を招いてしまった。命は返ってこないし、どうやっても償うことはできないが、生きている限り、贖罪のあり方を必死に追求していきたいと思う。自分の責任は生涯消えることはなく、贖罪が終わることはない。一生後悔し、一生償っていかなければならないと思う」と述べ、被害者の父親の方を向き「本当にすみませんでした」と深く頭を下げた。

初公判時のスケッチ

謝罪は本心なのか…判決は30日

仙台地裁 判決は30日

被害者の父親に頭を下げ謝罪した菅野被告を見て、これが被告の本心から出た反省なのか、弁護人が言うように自分をよく見せたいという性格から発せられた言葉なのか、私には正直わからなかった。
強盗殺人罪の法定刑は、死刑か無期懲役しかない。起訴内容に争いはなく、量刑が争点となった今回の裁判。検察は無期懲役を求刑し、被害者参加弁護人は死刑を求め、被告弁護人は死刑を科すべきではないと主張した。一般から選任された裁判員と裁判官による評議の上、判決は30日午後3時に言い渡される。

(仙台放送 澤田滋郎)