高齢者から「格安スマホ」に関する相談が増加中
比較的安い料金体系でサービスを提供している、いわゆる“格安スマホ”。
契約数は増加傾向にあり、現在2000万件に達している。
その一方で、トラブルや相談が増えているというのだ。
国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた、格安スマホに関する相談は2017年度、2018年度と2000件を超えている。
このうち60歳以上の高齢者の割合が年々増え、2017年度は32.1%、2018年度は32.3%、そして2019年度は12月31日時点で35.7%となっている。
「無料で通話するためにはアプリ使用が必要であると知らなかった」
一体どのような相談が寄せられているのか?
たとえば、60歳代の男性の相談。
この男性は、チラシをもらい格安スマホに興味を持ち、電話で何度か契約内容について問い合わせた上でインターネットから申し込んだ。
格安スマホ会社の説明では「SIMカードだけ入れ替えればそのまま使える。通信状態は変わらないまま今より利用料金が安くなる。通話は1回10分以内であれば無料である」ということだったことから、契約後も今までの携帯電話と同じ通話方法で使っていた。
ところが、利用を開始してから2カ月後、初めての請求がクレジットカード会社からきたことで、利用料金が高額なことに気が付いたという。
そこで、格安スマホ会社のマイページで詳細を確認すると、2カ月で2万7000円もの通話料が発生していたことが発覚。また、契約書をよく読むと、「無料通話にするためには特定のアプリを使用しなければいけない」と記載されていたのだという。
この男性は「このような重要なことは事前に説明するべきだと思う」としている。
この他には、「スマートフォンの使い方が分からないが、店舗で十分なサポートを受けられないため解約したい」といった相談が寄せられているというのだ。
しかしなぜ、ここ数年で60歳代以上のユーザーから格安スマホに関する相談が増えているのか? また、こういったトラブルにあわないためにはどうすればよいのか?
国民生活センターの担当者に聞いた。
“格安スマホ”が浸透し、幅広い年代の消費者が契約
――ここ数年で60歳代以上の高齢者から格安スマホに関する相談が増えている理由は?
国民生活センターでは、2017年4月にも格安スマホに関する注意喚起をしているのですが、このときはまだ、格安スマホが社会に浸透しておらず、携帯電話に詳しい人が使っている程度の認知度でした。
それ以降、格安スマホが社会に浸透し始め、携帯サービスに詳しい消費者に限らず、幅広い年代の消費者が契約するようになりました。
フィーチャーフォン(ガラケー)からスマホに買い替えるとき、より料金が安いものを探し、格安スマホを契約するケースが見られます。
ところが、格安スマホは店舗で手厚いサポートが受けられない。加えて、サービス内容や利用方法、サポート体制などについて、契約時の説明や案内が十分ではない。
また、消費者側は、“今までの携帯電話会社”と“格安スマホ会社”の違いを理解しないまま、契約・利用している。
こうしたことから、60歳以上の方が相談を寄せていると思われます。
格安スマホでの通話方法に注意
――こうしたトラブルにあわないためにはどのような点に気を付ければよい?
まずは、「サポート内容や問い合わせ方法を確認」。
格安スマホ会社では比較的安価な料金でサービスが提供される一方、今まで契約していた携帯電話会社と同じサービスを利用できるとは限りません。
格安スマホ会社によっては問い合わせ方法が電話やメール、ホームページ上に設置されているフォームやチャットなどに限られている場合があります。
電話やメールでの高齢者向けのサポートサービスなど、今までの携帯電話会社で無料で提供されているサービスが、格安スマホ会社では有料オプションとされている場合もあるため、希望する場合は契約前に確認するようにしましょう。
つづいて、「格安スマホでの通話方法に注意」。
格安スマホ会社では一定の時間内であれば無料で通話ができるサービスが提供されていることがありますが、格安スマホ会社独自のアプリケーションを用いることや、電話番号の前に特定の番号を打ち込むことなど、格安スマホ会社の指定する通話方法でないと、無料通話のプランを契約していても、予期せぬ高額請求を受ける場合があるため注意が必要です。
格安スマホの使用方法について、ホームページや契約書に目を通して確認するようにしましょう。
トラブルになったときの対処法
――トラブルになったときにはどう対処すればよい?
格安スマホ会社との契約は今までの携帯電話等の契約と同じように認識していると、思いもしないトラブルになってしまうこともあります。
格安スマホ会社との契約について不安に思うことやトラブルが生じた場合には、最寄りの消費生活センターへ相談しましょう。
格安な分、サービス内容や通話方法など今までの携帯電話とは違う部分があり、あまり詳しくない高齢者が理解しないまま契約してしまっているのが現状のようだ。
高齢者からの相談が増加していることを受け、国民生活センターは格安スマホを取り扱う業者に対する要望も出している。
「契約当事者が高齢者の場合は、契約時や利用時の注意点などについて、丁寧な説明や可能な限りのサポート、また、ホームページなどへの記載を含め、より一層の消費者への啓発に関する取り組みを行うことを要望します」とのことだ。