8月31日、大阪府摂津市のマンションで新村桜利斗(おりと)ちゃんが、全身に高温の湯を浴びたやけどによる“熱傷性ショック”で、命を落としました。わずか3年あまりの人生でした。

9月22日、殺人容疑で逮捕されたのは、母親の交際相手、無職の松原拓海容疑者(23)でした。

どうしてこのような幼く弱い命が奪われる悲劇が繰り返されてしまうのでしょうか?

「めざまし8」では、現場のマンションを取材。そこには、桜利斗ちゃんの異変を示唆する写真がありました。

これは松原容疑者や桜利斗ちゃんが暮らしていたマンションの部屋の下の階に住む人が撮影した写真です。上の部屋から投げ捨てられ、下のベランダに落ちてきたとみられる物の数々。「くるま」とひらがなで記された絵本のようなものや、うちわ、白い布などが映っています。

事件が起きた部屋の下の階のベランダ
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同じマンションの住人:
絵本、絵本っていうか、車のおもちゃが載ってるような本も落ちてるしおもちゃ見たらわかる、小さい子だってことは…

“何か様子がおかしい”そう感じていたといいます。

さらに…

母親の知人:
めちゃくちゃ人なつっこい子やって、愛嬌のある子やったんですけど、ちょっと様子がおかしくて…お母さんが桜利斗くんと一緒に帰ろうとしたときに、もうずっと『たっくん(松原容疑者)いや、たっくん  いや』ってずっと言ってて…

「たっくん」とは、逮捕された母親の交際相手の男の名前。

事件前、3歳の男の子は、つたない言葉で自ら周囲にSOSを発していたというのです。

そして、周囲の大人たちも…

母親の知人:
このまま放っておくと桜利斗くん亡くなっちゃうよ!死んじゃうよ!って言ったんですよ

なぜ、予兆がありながら、幼い命を守れなかったのでしょうか?

新村桜利斗ちゃん(当時3歳)

「子どもがやりました」 深夜の落下物が物語るもの

2021年5月から同居を始めたという、松原容疑者と桜利斗ちゃんの母親。

その後、松原容疑者らが住む部屋の下の階の住人は、当時起きた不可解な出来事を語ってくれました。

同じマンションの住人:
夜中やってんな…午前0時過ぎくらいか、ベランダから音がするから出たら物が落ちてて、何これって思って…

この落下物の写真が撮影されたのは、5月28日 午前0時58分。事件のおよそ3カ月前です。

深夜、上から子ども用の絵本などが落ちてきたことに気づき、撮影者がベランダに出てみると、さらに上から棚の一部のような木板も落下してきて、不審に思い警察に連絡しました。

なぜ、ベランダに小さい子どもに関係するようなものが落ちてきたのでしょうか?

同じマンションの住人:
(警察に)「どうです?」って聞いたら、「『子供がやりました』って言ってます」って。そこでおかしいなって思って。絵本…絵本っていうか車のおもちゃが載ってるような本が落ちてるし、しかもよく考えるとそんな時間に子供がなぜ投げるかって。夜中12時やから、うちもその瞬間に警察の方には、「絶対こんなんありえへん」って、「虐待かそんなんちゃうの?」って言って。そういう話は(警察と)してた

今回、改めて事件が起きた現場のマンションででベランダから上の階の方を見上げると、その時落ちてきたものの中の1つであるタオルが今でも柵の外枠に引っかかったまま残されていました。

上の階のベランダの柵の外に引っかかったまま残っている当時のタオル

この事件に至るまで、桜利斗ちゃんの虐待に関する情報をめぐって対応を続けてきた摂津市は緊急性がないとして、警察に通報していなかったといいます。

5月28日の通報の時点で、警察に“異変”は伝わっていたものの、充分にその情報が生かされたのかは定かではありません。

他にもこの頃、近隣住民や母親の知人のなかで“異変”は生じていました。

いくつかのSOS

近隣住民:
主人によると、上でなんか「開けてー開けてー」って泣いてたみたい。5月、6月かな…(子供が)頭に包帯巻いてたこともあったって…

事件の3カ月ほど前には、松原容疑者の暴力について母親は摂津市役所を訪れ、「交際相手が、子どもの頬をたたいた」と相談していました。

その後、摂津市の担当者が自宅を訪れ、松原容疑者とも面会しています。

摂津市の担当者「手を出すのはやめてください」

松原拓海容疑者「子どもに絶対に手を出さないようにします」

このようなやりとりがあったといいます。

しかし、その後も、母親の知人は虐待を疑う場面を目にし、市役所に情報を寄せていました。

桜利斗ちゃんの母親の知人:
なんかあざがあったりとか、顔ですね。(母親が)周りとも接触しなくなってきたんで、何かを隠しているんか、怖いなと思ったので虐待のおそれがあると、市役所の方に行ってきました。『このまま放っておくと桜利斗くん亡くなっちゃうよ、死んじゃうよ』って言ったんです

母親、その知人、下に階の住人、そして、桜利斗ちゃん自身が発していた「虐待」のSOS。
市役所が対応を続けていていましたが、それでもなお、殺人事件に発展してしまいました。

8月31日 3歳児の身を襲った悲痛

事件が発覚したのは、8月31日の午後5時前のこと。

松原容疑者本人からの119番通報で、「3歳の男児が浴室内で意識がない」というものでした。

消防が駆けつけると、桜利斗ちゃんはすでに心肺停止の状態で、頭から上半身の皮膚がただれ、熱傷性ショックで死亡が確認されました。

シャワーの温度は、別室にある操作パネルを調べたところ、最大75度まであげることができたといいます。

松原容疑者は逮捕前の事情聴取に対し、「桜利斗ちゃんの体を洗うために風呂場に連れて行き、高温にしたシャワーで遊んだ後、別室に移動した」。このような趣旨の話をしていたといいます。

松原拓海容疑者(23)

さらに調べに対し、松原容疑者は「熱湯を故意に浴びせていません」と殺人の容疑を否認しています。

取材から浮かぶ松原拓海容疑者の2面性 “子煩悩な父” “保育士の夢”

近隣住民の中には、桜利斗ちゃんと松原容疑者がいつも一緒にいる様子から、松原容疑者を「実の父親だと思っていた」と話す人もいました。

近隣住民:
近くにずっといた感じですよ。一階の駐輪場で桜利斗くん抱っこしてでかける様子、別に嫌がったりもせん。で、エレベーター下で会ったときとか2人でなんかコンビニの袋もってはったりもしたから、子煩悩なお父さんなんやなって。エレベーターで鉢合わせしたときも、桜利斗くんバイバーイって言ったら、お父さん(松原容疑者は「おりくん、バイバイは~?」って、優しい声で言ってて…

さらにこの近隣住民は、松原容疑者が逮捕された日の朝7時ごろ、松原容疑者とみられる男性が、家の前にビニール袋に入ったお菓子などを供えて行った姿も目撃したといいます。

証言から垣間見えたのは、桜利斗ちゃんへの熱湯による殺人容疑とはかけ離れた松原容疑者の「父親」としての一面。

さらに、松原容疑者について、小・中学校のころ、松原容疑者と仲が良かったという同級生が取材に応じました。

松原容疑者の小・中学時代の同級生:
年の離れた兄弟がおって、よく面倒をみたりしよって。それで中学校ぐらいで保育士になりたいみたいなこというとって、その時は。なんで、小さい子が好きって言ってたんで、逆にその虐待とかすると思わなくて。真逆すぎて、逆にほんまに驚きしかないぐらいなんで、あんなん見て

松原容疑者の小・中学時代の同級生:
知らん子供とかに、例えば、ボール転がってきたりとかしてもめちゃめちゃ笑顔で返してあげたりとかをしとったですね。将来何になりたいみたいな話をしよった時は、保育士になりたいってその度に言ってますね。ただただ子供が好きやからみたいな、小さい子の面倒みるのが好きだからみたいな

同級生が語ったのは、面倒見が良く、ムードーメーカー的存在であった松原容疑者の性格。
今回の逮捕は本当に驚きだったという率直な感想でした。

ただただ、子供が好きという思いで「保育士になりたい」と夢見ていた学生時代の松原容疑者。
23歳になったいま、わずか3歳の尊い命をめぐる容疑者として逮捕されることを知人たちはまったく予想だにしていませんでした。

松原容疑者の小・中学時代の同級生:
僕のお母さんもこの子の事知ってたり、兄弟も知ってたりするんで、これ見た時にお母さんに言ったら「この子絶対こんなんしない子やのにな」って。ずっとみんなが言ってて、僕の周りが。
まあ逆に穏やかな子なんで、怒ったら何するか分かんない、そこは。

めざまし8ディレクター:
怒ったら何するか分かんないというのは?

松原容疑者の小・中学時代の同級生:
そんな怒ることがまずなかったんで。なんで、逆に僕もそうでしたけど、めったに怒らんから、逆に本気で怒った時ってどうなるか分からんなって。逆にそこまで怒ることなんか見たことないんで…

取材で見えてきた松原容疑者の2つの顔。

優しさを繕うがゆえに、いつしか生まれてしまった抑えきれない感情というものがあるのでしょうか。

なぜ、私たちがともに暮らす世の中では桜利斗ちゃんの死を防げなかったのでしょうか?取材で耳にした市の対応への不信感。

一方、目を向けなければならないのは、本来優しいはずの心にも生まれる何らかの感情なのかもしれません。この先、このような悲劇が繰り返されないためにできることをひとつでも探す必要があります。

(めざまし8 9月24日放送より)