仙台市太白区の住宅で2013年10月、宮城県芸術協会職員の鈴木裕子さん(当時43)が殺害され、現金や貴金属が奪われた事件の裁判は9月22日午後から被告人質問が行われた。

強盗殺人などの罪に問われている菅野裕太郎被告(38)は、「不在だと思って盗みに入ったが、女性がいることに気づきパニックになり飛びかかった」と述べ、殺害の計画性はなかったと主張した。

事件の概要

2013年10月、仙台市太白区諏訪町の住宅で、この家に1人で暮らす県芸術協会職員、鈴木裕子さん(当時43歳)が2階寝室で死亡しているのが見つかった。死因は窒息死で、家の中には物色されたような跡があった。警察は殺人事件と断定し、捜査していたが、捜査は難航。

事件から7年4カ月経った2021年2月25日、窃盗罪などで宮城刑務所に服役していた菅野裕太郎受刑者が強盗殺人などの疑いで逮捕された。

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被告人質問始まる 傍聴席には捜査幹部の姿も

9月22日午後1時半、仙台地裁102号法廷。
傍聴席には、菅野被告の強盗殺人容疑での逮捕に向け、捜査の指揮を執った宮城県警の当時の捜査幹部の姿もあった。
菅野裕太郎被告は午前の公判と同じようにうつむきながら法廷に入ってきた。

「金に困った時、1人暮らしの鈴木さんのことを思い出した」

弁護人からの被告人質問が始まった。
犯行前の生活状況について菅野被告は、「貴金属買い取り業の会社を辞め、無職になり、外に出たくなくなって、ひきこもるようになったが、以前と同じペースで金を使っていて、同居女性に甘える生活になっていった。同居女性の財布から金を抜き取ったりしていたが、ばれないように1000円、2000円単位で抜き取っていた。キャッシュカードで10万円引き出した時はすぐにばれた。
同居女性との関係も悪くなり、女性が家にいる夜の時間は、車で出かけて、車の中で過ごすような状態だった。そんな追い詰められていた時に、以前、貴金属買い取り訪問の飛び込みで自宅を訪れた鈴木さんのことを思い出した」などと述べた。

被告の口調は早口で、声は小さく、裁判長からたびたび「ゆっくり話すように」と注意されていた。

下見を繰り返し家の明かりで不在時間を確認していた

弁護人:飛び込み営業で多い時には1日に300軒もの家を訪問していたのに、鈴木さんの家を選んだのはなぜか

被告:鈴木さんは1人暮らしだった。ジュエリーボックスに多くの貴金属があったが、一部しか買い取りできなかったので、まだあるんじゃないかと思った。お金持ちの女性だと思った

弁護人:下見はいつから、どの程度したか

被告:8月下旬から9月上旬ごろから下見に行くようになった。平日、休日それぞれどのような生活なのか、部屋の明かりがついているかどうかで在宅時間の傾向を見ていた。不在であることが確認できなければ、盗みに入らないと決めていた。1、2週間前からは、夜に家の周りを下見していた

弁護人:10月5日以外にも不在だと思った日はあったか

被告:2回あった。1回目は下見を始めてすぐだったので、盗みに入る準備をしていなかった。2回目は、準備はしていたが、怖くて入れなかった

弁護人:当日の下見はどのようにしていたか

被告:午後5時台から深夜0時台まで、1時間に1回は家の周りに行って、部屋の照明がついていないことを確認した

弁護人:鈴木さんが家にいる可能性については考えなかったのか

被告:鈴木さんは通勤に電車かバスを使っていると考えていた。終電時刻から時間が経っていたので、外泊することもあるのだろうと考えた
 

センサーライトの向きを変えた上で1階の浴室窓から侵入

その後の質問で、菅野被告は、家には浴室の細長い窓から侵入したこと、家の外に設置されていた防犯用のセンサーライトがついたので、室外機を足場にのぼり、ライトの向きを変えたこと、1階の洋室を物色した際、鈴木さんが突然帰宅した場合に逃げることを考えて窓の鍵を開けたこと、リビングダイニングを物色した際にのどが渇いて、水道の水をコップに入れて飲んだこと、
さらに逃げ道を確保するために勝手口のドアを開けておいたこと、階段で2階に上がり2階の収納の中にブランド物の小物を見つけ20~30点は袋に入れたこと、2階の洋室には衣類などしかなく興味を引くものがなかったことなどを述べた。

誰もいないと確信していたのに女性がいたのでパニックになった

弁護人:2階寝室にはどのように入ったのか

被告:持参したペンライトで足元を照らしながら寝室に入った。すぐにベッドの上にいる鈴木さんに気付いた。目が合ったような気がした。自分もびっくりしたが、鈴木さんもフリーズしていた

弁護人:それで、あなたはどうしたのか。

被告:ベッドの上の鈴木さんに飛びかかっていた。まさか誰もいないと思っていたので、パニックになった。

弁護人:どういう態勢になったのか

被告:仰向けの鈴木さんの上に馬乗りのような形になり、両手で首を押さえた。首を絞めたら、気絶したと思ったので、離れた。死亡したとは思わなかった

弁護人:息をしているかや、脈を調べたりはしなかったのか

被告:確認していない。確認する余裕はなかった

弁護人:その後どうしたか

被告:ベッドから離れてすぐ、部屋の明かりをつけた。すぐ立ち去らなければならないと思ったが、このままでは帰れないと思い、ジュエリーボックスを探した

「このままでは帰れない」殺害後も盗みを続ける

その後について、菅野被告は、ジュエリーボックスやアクセサリーボックスを見つけ、1つ1つ傷がつかないように丁寧に扱わなければならないことはわかっていたが、余裕がなく、箱をひっくり返すようにして中身を袋に入れ、1階の勝手口から外に出たと述べた。

鈴木さん所有の携帯電話2台を持ち去ったことについては、息を吹き返し通報されたらまずいと思い携帯電話を持って外に出たが、通報される時間を稼ぎたいだけだったので、家のそばに捨てたと述べた。

貴金属を売却して得た金の使い道は

弁護人:家から盗んだものを売却して得た金額はどのくらいか

被告:10月の時点では92、3万円ぐらい

弁護人:何に使ったのか

被告:数十万円は同居女性への借金の返済に充てた。残りはキャバクラなどに使った。
事件のことが報道されてから、眠れなくなった。自分のしてしまったことの大きさに耐えられなくなり、誰かと会話したくなって、キャバクラに行った

弁護人:高級ブランドの時計やダイヤのネックレスを同居女性にプレゼントしたのはなぜか

被告:高級時計はシリアル番号があるし、ダイヤのネックレスは鑑定書があるはずで、売却できないと思って、プレゼントした

弁護人:それを2018年に返してもらっているがどうしてか

被告:結婚し子供が生まれ、自分の過去の犯罪の直接的証拠になるものなので、自分の手元に戻しておきたかった。捨てるつもりだったが、金に困っていた。事件から時間が経っていたこともあり、見つかるかもしれないとは思ったが、売ってしまった

帰宅推定時刻は午後7時20分 「不在確信」は不可解

この日の被告人質問を聞く限り、弁護側が「殺害については計画性がなかった」と主張する意図は感じられた。しかし、被告の「不在が確認できなければ盗みに入らないと決めていた」という理屈はあまりに身勝手だ。検察官が提出した証拠によれば、鈴木さんが当日帰宅した時刻は午後7時20分と推定されている。帰宅した鈴木さんは就寝までの一定時間、部屋の照明をつけていたはず。被告の何度も下見を繰り返していたという話が本当ならば、「不在を確信していた」という部分は不可解に感じた。

鈴木さんが感じただろう恐怖や無念を思うと言葉もない。何の罪もない1人の女性の命を奪った被告の責任は重い。

裁判は、24日に被告人質問の続きや証人尋問、27日に論告と弁論が行われ、30日に判決が言い渡される予定だ。

(仙台放送 澤田滋郎)