日本初の試み達成

13日午前9時半すぎのJAXA筑波宇宙センター、祈るような表情でJAXAの職員が待っていたのは、“日本初の偉業”を成し遂げた、カプセルの中身だ。

「小型回収カプセルで実験サンプルを宇宙ステーションから回収し、ユーザーに引き渡すということができました。ずっと夢見てきたわけですが、それがかなったというところで感無量です」(13日午前・JAXAの会見より)

実はこのカプセル、11日まで宇宙空間にあり、医療の未来を切り開く“鍵”を、地球に届けるものだった。地表から約400km、ISS=国際宇宙ステーションから今月8日に分離した、日本の無人補給機「こうのとり7号機」。

“最後のミッション”は「ISSから実験試料を持ち帰る」という、日本初の挑戦だった。ISSにある日本の実験棟「きぼう」、今回持ち帰られたのはこの「きぼう」で作られたタンパク質だ。

ISS/日本の実験棟「きぼう」

重力の極めて小さな「きぼう」内部では、重力が邪魔する地上では作ることが難しい高品質なタンパク質の結晶の生成が可能。これらのタンパク質には“新薬の開発”など、人類の未来を切り開く可能性がある。

「きぼう」での実験にも携わったことがある、北海道大学の古川教授は…
 
古川義純・名誉教授:
(タンパク質の)分子の構造がわかると、新しい医薬品を開発するとか、医学的な目的に使える。将来、日本のロケットを使って、この技術がどんどん発展していけば、つながっていくということだと思います。

JAXA × タイガー魔法瓶

これまで、ISSから物資を持ち帰る技術を持っていたのは、ロシアとアメリカのみ。
その2か国に続くため、今回JAXAは“日本独自の技術”を活かした、帰還カプセルを開発した。それに使われたのが、水筒などで有名な「タイガー魔法瓶」の技術だ。

宇宙から大気圏に再突入する際には、カプセルの表面温度は2000℃に達する。
この熱から容器内のタンパク質を守るため、魔法瓶の断熱技術を応用した保冷容器が開発された。

そして、8日にISSから分離した「こうのとり」は11日に、カプセルを切り離し大気圏に再突入。カプセルはその日の内に、太平洋の南鳥島近海で無事に回収された。

JAXA有人宇宙技術部門・植松洋彦HTV技術センター長

日本初の挑戦、無事に成功の一報を聞いた、JAXA有人宇宙技術部門・植松洋彦HTV技術センター長は思わず涙した。

植松センター長:
帰ってくることがわかっていても、顔を見るまでは安心できない。親の気持ちですかね。感動しました。写真を見て。

地球へ帰還したカプセル内の保冷剤は、まだひんやり

そして13日、筑波宇宙センターへと届けられたカプセル、ISSを後にしてから、わずか5日のことだった。地球に帰還したカプセル内の容器に入れられていた保冷剤は、まだ冷気を発しており、保冷容器の開発に携わった、タイガー魔法瓶・商品開発グループの堀井大輔さんは安堵した。

堀井さん:
まだ保冷剤も良好な状態であったというふうに聞いていますので、ひとつ安心できるかなと思っております。私は一人の技術者としまして、我々が開発した容器に対して、「よく頑張ったね」と声をかけてあげたいなというような思いです。

 
今回持ち帰った“宇宙タンパク質”などは、早ければ午後から解析をする見通しで、未来の新薬開発などに活かされることが期待されている。

宇宙への有人飛行は

今回の成功は、宇宙への有人飛行の夢に前進したことを意味するのではないだろうか。
JAXAによると、有人宇宙飛行へ向けた課題は大きく分けて2つ。

1つ目は“帰還技術”だ。大気圏に再突入する際に体重の10倍もの力がかかり、人間は普通耐えられない。今回はガスを噴射するなど、姿勢を制御することで負荷を人間が耐えられるレベルまで軽減していた。

もう1つは“生命維持技術”だ。温度や湿度の維持であったり空気の循環、排泄や食事といったもので、今後も課題となる。空気の循環に関しては、潜水艦に使われている技術を応用することが可能とされている。

有人宇宙飛行がいつまでに実現するかなど、具体的な日程は決まっていないが、今後1つ1つ積み上げていくことになる。


(「プライムニュース イブニング」11月13日放送分より)