2019年10月、福岡・太宰府市で、佐賀・基山町の主婦・高畑瑠美さん(当時36)が凄惨な暴行を受けて死亡した「太宰府事件」。

2021年3月、一審判決で福岡地裁は、傷害致死などの罪に問われた山本美幸被告(42)に懲役22年、岸颯被告(26)に懲役15年などの判決を言い渡した。

山本美幸被告と岸颯被告
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事件の審理が次の段階へと進む中で、遺族が抱え続けているのが佐賀県警に対する「怒り」だ。

遺族の問いのカギ「佐賀県公安委員会」

なぜ警察は動いてくれなかったのか―。
この切なる問いに対して、佐賀県警は「一連の対応に不備はなかった」という主張を変えることはなかった。

そんな県警の対応を検証する上で大きなカギを握る機関が、県公安委員会だ。

公安委員会は、警察組織を管理するとともに、市民の良識を警察の業務に反映させるという役割を担っているとされている。
この公安委員会が管理機能を果たしていたのか?
佐賀県議会の場で、その対応を問う追及が行われた。

犠牲となった高畑瑠美さん

「対応に不備があると事実認定していない」

9月16日、本会議で答弁に立った佐賀県公安委員会のトップ・吉冨啓子委員長。
焦点となったのは、太宰府事件への対応についてだった。

<佐賀県議会 2021年9月16日>
井上祐輔県議(共産党):
この事件について、問題はなかったという認識なのか?

吉冨啓子公安委員長:
引き続き、警察を適切に管理してまいります

佐賀県警の見解を踏襲する、これまでと同じ答弁が繰り返された。

遺族は捜査に乗り出さなかった佐賀県警鳥栖警察署の対応について、2021年1月、県の公安委員会に第三者による再調査を求めていた。
しかし、返ってきたのはたった1枚の文書だった。

遺族が求めた再調査についての回答

公安回答書(取材メモより)
「当時、様々な相談の中で、(略)ご親族の被害について直ちに事件化の判断に至ることは、難しかったと考えられます」

さらに、2021年3月の議会で当時の委員長は…

<総務常任委員会 2021年3月10日>
安永恵子前委員長:
一連の対応について私どもで検討した。その中で、一連の対応の中で不備があると、われわれは事実認定していない

会議録に具体的な記載は一切なかった

警察組織を管理する公安委員会で、一体どのような検討がされたのか?
取材班が入手した当時の「会議録」がある。そこには…

会議録(1回目・令和3年1月14日)
「総務課、刑事企画課等から公安委員会宛文書の受理について申出状況、申出内容等の報告がなされた」

具体的な記載がない会議録

会議録(2回目・令和3年1月20日)
「総務課、刑事企画課等から鳥栖警察署への申出等に関して説明等がなされ、議論した」

会議録には、どのような議論が行われたのか、具体的な記載は一切なかった。

これについて、刑事法に詳しい福岡大学の新屋達之教授は…

福岡大学法学部・新屋達之教授:
(経過が)詳しい方が、事後的な検証には分かりやすいですよね。特にこういう大きな問題だから、きちっとしたプロトコル(手順)が残る方が望ましいと言える

各委員の「発言の記録」は残されていないのか?公安委員会補佐官室に尋ねると…

公安委員会補佐官室(取材メモより)
「書記官がメモは取ったが、会議録を作成して削除した。これは運営規則に則っている」

事後の検証が不可能な上、県警を管理するはずの公安委員会の当時のトップが勤める弁護士事務所に佐賀県警の顧問弁護士がいることも明らかとなった。

新屋教授は公安委員会の人選を始め、形骸化してしまっている制度そのものに問題があると指摘する。

福岡大学法学部・新屋達之教授:
警察の管理監督という建前がかなり弱くなっている。そういう状況で、警察は人的・物的に力を持っているから、どうしても引きずられてしまうという話。
警察に物言わない人で固まっちゃうと、下から(問題が)上がってきた時に、事実を追認してしまうということもあり得る話ですよね。そうすると、「やらせの会議」となってしまう

遺族が再調査訴えて「請願書」提出

そして9月16日の佐賀県議会でも、公安委員会が公平・中正な判断ができたといえるのか、追及の声が上がった。

<佐賀県議会 2021年9月16日>
井上祐輔県議(共産党):
公安委員会の判断を是正する仕組みはあるのか?

吉冨啓子公安委員長:
被害者の女性の生命身体に対する危険に及ぶことを認識することや、ご遺族の被害について、ただちに事件化判断に至ることは難しかったと考えている。県公安員会では、本件を含め、法令に従い、任務を果たして参りましたが、これからも県警察を適切に管理して参る所存であります

遺族は、公安委員会の対応に関する再調査や現状改革を議会に訴えるため、佐賀県議会議長に宛てて「請願書」を提出。今後、議会で審査されることになる。

また、9月17日に開かれた控訴審の初公判では、検察側が死体遺棄の点について、車のスモークガラスから後部座席にいる人が見えるかどうかなどの証拠を提出したが、採用されなかった。
公判は即日結審し、判決は12月3日に言い渡される予定だ。

(テレビ西日本)