保釈中に起きた不可解な”連続殺人”事件

これを「保釈中の被告が、また事件を起こした」と批判していいものか。評価が分かれるところだろう。小玉喜久代容疑者(77)は、我が子に”頼まれ”、その首を絞めて殺害した「嘱託殺人罪」で起訴されていた。そして保釈中に、今度は、実の妹の首を絞めて殺害したとみられている。小玉容疑者は再び「殺してくれと頼まれた」と供述している。

移送される小玉喜久代容疑者(福生警察署)
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”頼まれて”息子の首を絞めた 嘱託殺人罪で起訴

小玉容疑者は、2021年4月2日午後、東京・あきる野市の自宅で、息子(47)の首を絞めて殺害したとされる。小玉容疑者と息子は2人暮らし。糖尿病を患っていた息子は、この日、大量のインスリンを投与し自殺を図っていた。小玉容疑者は、息子から「これでは死ねないから殺して欲しい」と頼まれ、トレーナーで首を絞めたという。

殺人未遂容疑で逮捕された小玉容疑者は、6月24日、嘱託殺人罪で起訴された。嘱託殺人とは、被害者本人から、積極的に「殺して欲しい」と頼まれて殺害に及ぶ行為だ。殺人罪と比べて刑は軽い。検察は、小玉容疑者に対する精神鑑定を実施した上で、「頼まれて殺した事件」と認定した訳だ。

小玉容疑者は、自宅で47歳の息子を殺害したとされる(あきる野市)

殺人事件で保釈が認められるのは「10人に1人」

7月8日、小玉容疑者は保釈される。殺人事件の当事者でも保釈が認められるのかと驚いた人も多いだろう。適用されたのが嘱託殺人罪だったことが影響した可能性もある。ただ実際には、殺人事件だからと言って、保釈が許可されない訳ではない。

司法統計によると、2020年度、殺人事件で勾留された216人のうち、25人は保釈が認められている。事件全体の保釈率は3割程度。それに比べると保釈率は低いが、それでも人の命を故意に奪っても10人に1人が保釈される計算だ。

嘱託殺人罪で起訴された小玉容疑者。その後、保釈され、再び事件は起きた。

データがある訳ではないが、家族間の殺人事件で保釈が認められるケースが多い印象だ。例えば、老々介護の末の殺人事件など。自分の息子を殺害した罪に問われた元農水次官が、おととし、一審で懲役6年の実刑判決を受けた後、保釈が認められたことがあった。”異例の保釈”と報じられたが、昔よりも、被告の人権を尊重する傾向が強まっているのは間違いない。

話を本件に戻すと、保釈後、小玉容疑者は妹(74)と同居を始める。そこで再び事件が起きた。

保釈後、小玉容疑者は妹の自宅に身を寄せ、2人で暮らしていた(羽村市)

「苦しいから殺してくれと言われて」 容疑者は妹の首を絞めた

「同居の妹を殺してしまった」。9月20日午後、110番通報したのは小玉容疑者本人だった。現場は羽村市にある妹の自宅。警察官が駆けつけると、妹は1階の寝室の布団の上で仰向けに倒れていた。小玉容疑者は殺人未遂の疑いで逮捕され、妹は病院で死亡が確認された。

調べに対して小玉容疑者は、「妹は9月中旬に自宅で転んで腰を骨折した。その後『生活がしにくくて、つらい』と嘆くようになった。事件当日、妹から『苦しいから殺して』と言われ、電気コードで首を絞めた」と供述している。

小玉容疑者は「妹から『苦しいから殺して』と言われて首を絞めた」と供述している

”頼まれて”家族2人を相次いで手に掛けることがあるのか。警視庁は、容疑を殺人に切り替えて捜査する方針だ。まずは、妹が本当に骨折していたのかなど、「殺してくれ」と頼むような状況だったかを調べることになる。さらには、再び精神鑑定も実施されるだろう。”保釈中”の容疑者に何があったのか。そして保釈判断の是非も検証されるべきだ。

(フジテレビ解説委員 平松秀敏)