今、「働き方改革」が進んでいるが、見方を変えれば、自分自身の働き方を改革できるチャンスだと捉えることもできる。

自分の仕事に自信が持てなかったり、向いているのか分からなかったり…そんな不安を抱えている人も多いだろう。そんな人たちのために、社会人のための職業体験サービス「仕事旅行」を提供するのが、仕事旅行社の代表取締役である田中翼さん。

田中翼さん
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著書『働くコンパスを手に入れるーー<仕事旅行社>式・職業体験のススメ』(晶文社)は、社会人向けの職業体験を提供してきた田中さんの経験を通して見えた、働き方を考えるガイドブックだ。そんな田中さんに自分自身でできる「働き方改革」について聞いた。

“仕事迷子”が増加中

日本の伝統的な職業や専門的な仕事など、170種類以上の職業体験という“旅”を提供している「仕事旅行」。このサービスに至った経緯は、田中さん自身が前職で資産運用会社に勤めていたとき、“仕事迷子”であったことから始まる。

「ずっとこの仕事で生きていくのか、今の仕事をずっと続けていくイメージはわかないが、何をやりたいか分からない自分がいて。個人的に気になる会社の職場訪問を繰り返す中で、自分の進みたい方向性が明確になって、この体験を他の人にも体験してもらいたいと思い、このサービスを立ち上げました」と田中さんは語る。

そして今、こうした仕事や働き方に対する悩みを抱える“仕事迷子”が増えているという。

基本的には社会人向けの短期の職業体験ができる、このサービス。“仕事迷子”の人たちが仕事に対する悩みを解放できるための場を設け、自分の世界を広げたり、仕事の考え方を広げたりするための“学び”が得られるようなプログラムを練っている。適性を確認する場であるため、就職が前提となるインターンシップとは異なり、この職業体験は何かを学ぶための“研修”という位置づけだ。

受け入れる企業がホスト役となり、直接話ができたり、仕事観やキャリア意識に触れることで、自分自身の働き方を見直す機会も与えられるのだ。

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「『この仕事に就きたい』という方もいますが、世界観を広げたいと全く異なる仕事に参加する方も、気になっている分野を体験するという人もいます」と田中さんが語るように、参加する人たちのモチベーションはさまざま。

参加者の動機は大きく分けると3つで、(1)好奇心(2)ステップアップ(3)独立や起業だという。このような動機から、探偵、占い師、神主などの非日常でエンターテインメント性の高い仕事を体験したり、今の仕事をベースにしながらステップアップを目指すために現在の仕事に関連している仕事、自分でも開業できそうな仕事を選んだりしているとのことだ。

興味本位でも体験できるからこそ、「全く興味のない分野や今の仕事とは異なる分野を体験すると、自分が何に喜びを感じ、何が嫌なのか気づくきっかけにもなります。私たちは自分と距離のある分野を選んでもらうことを狙っています」と話す。

仕事人の共通点は5つ

これまで20代後半から30代前半を中心に約3万人が体験。社会に出て数年が経ち、将来や見識を広めたいと考え始める年齢だろう。

著書の中では自分らしい働き方を実践している11人の仕事人を通して、「仕事とは?」「働く意味」について問いかけている。

こうした11人に共通する点は5つ。「やりたい気持ちを優先する」「小さく始めて小さく育てる」「無計画で始めてもいい」「共感から協力者が現れる」「『自分探し』をあきらめない」こと。

しかし、初歩的な自分らしく働くフィールドややりたいことはどう見つければいいのか。その見つけ方を田中さんは「やるしかない、やってみるしかない」と一言。「やってみて、自分が受けた感覚からジャッジする。食べたこともない食べ物を好き、嫌いと判断できないように、まずは食べて(やって)みて、好きだったら何が好きなのか、嫌いだったら何が嫌いなのか自分の中で把握していくと絞られていくと思います。頭の中で悶々と考えても答えは見つからないので、動き出すしかない」とアドバイスしてくれた。

もちろん、こうした職業体験を通じての“失敗”もあるという。「やってみたい、憧れていたという気持ちで体験して、実際の厳しさを味わったり、できると思っていたけど手を動かしてみたら自分には向いていなかったりという人もいました。やってみないと、できる、できないも分からないんですよね」と、こうした失敗も参加者にとっては良い経験となると田中さんは言う。

これからは水平の学びが重要

仕事旅行社がこのような職業体験を「研修」と呼ぶように、最近では職場以外の場所で学ぶ「越境学習」として取り入れている企業もあるという。

その理由は学びの方向性の違い。「学びには垂直と水平があり、垂直は一つの内容を深めていく学び。例えば語学力やPCのスキルなど基本的にはスキルアップのこと。最近の企業はそういったスキルアップのフォローは充実しているかと思います。一方で、これからは水平の学びが重要になります。水平は視点を変えたり広げること、発想のポイントを変えること。他業種に足を踏み入れることで、そうした学びが得られると考えています」。

こうした体験を通して、仕事って何だろう?と立ち返るきっかけにもなり、また今、自分がいる場所の良さ、「自分の会社っていい会社じゃん」と気づくきっかけにもなるというのだ。

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「仕事旅行社」で提供している職業体験は、「働く力」を高める“学び”のサービス。では、「働く力」とは何なのか。

「これからの『働く力』には“軸と幅”が必要です。さきほどの水平、垂直の学びにも似ているのですが、まず、軸というのは仕事をする上で、方向性や興味関心。多くの選択肢の中で未来を自分で作るためには受け身ではなく、自ら取捨選択しなければなりません。そのときに必要となり、基礎となる部分が軸。それが土台となり、基礎的な能力が幅。幅は6つのカテゴリーに分かれ、どの仕事にも共通すること。その幅を広げることも重要。自分の方向性が固まり、基礎力がついたところで、専門的な知識や能力を高めることが必要になりますが、僕らが提唱するのは専門的な知識や能力を高める前の段階までです」

<仕事旅行で得られるチカラ6つのカテゴリー>
・自分から動き、「好き」を形にする
・しなやかに発想し、価値を生み出す
・想いをシェアし、周囲に働きかける
・伝統の知恵に学び、枠を超えていく
・人の声に耳を傾け、人間関係を癒す
・モチベーションを高め、長く続ける

今の時代、定年まで一つの企業を勤め上げる人は少なくなるかもしれない。だからこそ、まるで旅行をするかのように職業体験を行い、自分に合う仕事を探す旅に出てみることもいいのかもしれない。勤務体制や職場環境の働き方改革もいいが、自分らしく働ける場所を見つけるための「働き方の改革」は自分にしかできないのだ。


『働くコンパスを手に入れる〈仕事旅行社〉式・職業体験のススメ』(晶文社)

田中翼
株式会社仕事旅行社代表取締役。大学卒業後、資産運用会社に勤務。在職中に趣味でさまざまな業界への会社訪問を繰り返すうちに、その魅力の虜となり、「働く」ということに対する気付きや刺激を多く得られる職場訪問を他人にも勧めたいと、2011年仕事旅行社を設立。「仕事観」や「仕事の魅力」について大学や企業、地方自治体を対象に講演も実施している。

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