お尻で押して、ようやく閉まるドア

テレビ西日本 仲村健太郎記者;
不具合が相次いでいるというマンションなんですが、こちらですね。大きくてかなりきれいです

最寄り駅から徒歩3 分と好立地のマンション。
価格は3 千万円前後で1995年頃に分譲され、当時は倍率が30 倍に上ったという人気物件。

このマンションで、次々に異変が起きているという。
ここに住む男性の部屋の玄関では…

マンションの特別理事 佐々木太氏;
力を入れて開ける。閉まると、この状態ですから

テレビ西日本 仲村健太郎記者;
閉まらない?

マンションの特別理事 佐々木太さん;
ええ

力を加えて押しても閉まらない玄関ドア…

テレビ西日本 仲村健太郎記者;
閉まらない時はどうしている?

マンションの特別理事 佐々木太さんの奥さん;
お尻でやってます

テレビ西日本 仲村健太郎記者;
お尻?

マンションの特別理事 佐々木太氏の奥さん;
こうやって…(ドアをお尻で強く押して)これが一番楽です

ドアの開け閉めがしづらいのは、枠が歪んでしまったため。外に出るのも一苦労だ。

テレビ西日本 仲村健太郎記者;
でも、もし火事とか…

マンションの特別理事 佐々木太さん;
あ~、もう大変なことになります。下の階のおばあちゃん。もう80歳以上ですもんね

別の住民のケースでは室内にも不具合が…なんと天井と壁の間に隙間ができている。

夜、明かりを消すと隣の部屋から光が漏れてきた。

住民×施工会社…食い違う主張

壁の至る所にヒビが入り、ドアの開け閉めも困難になったマンション。

(Q.こうした不具合は、いつ頃から始まった?)
マンションの特別理事 佐々木太さん;
築1,2年では、もうすでに出ていた

入居後まもなく相次いだという、ヒビ割れ。
当時、施工会社側はその箇所を補修した上でこう回答していた。

施工会社側(文書)「主要構造部分への影響はないことを確約します。皆様の心配されているような、建物倒壊には決してつながりませんので、御安心下さいますようお願い申し上げます」

マンションの特別理事 佐々木太さん;
販売会社を信頼していたから、何かあっても大丈夫だろうと

しかし、その後も異変は生じ続けた。
それも、数棟あるマンションのうち佐々木さんが住む1棟だけで…

これは2017年、住民側の指摘を受け、施工会社側が行った測量調査の結果。
そこには、同じ階でなんと最大104mmの高低差があることが示されていた。つまりこのマンションは100mm=10cm以上も傾いていた。

そこで住民側は、自ら約200万円かけ、専門の業者によるボーリング調査を独自に実施した。
すると…

マンションの特別理事 佐々木太さん;
杭がこれぐらい支持層の手前で止まっていた
(Q.杭が支持層に届いてない状態?)
届いていない

通常、マンションは地震などが起きても傾かないよう『支持層』と呼ばれる固い地盤に何本も杭を打ち込むという。
しかし今回のマンションでは、杭が支持層に届いていないとの調査結果が出たため、住民側はそれが原因で傾いたのではないかとみている。

この結果を受け、施工会社側も杭の調査を行ったのだが…

施工会社側(文書)「傾斜の原因とされた杭の未到達の問題については、杭は支持層以下まで到達していると考えられる。よって傾斜の原因が杭と断定することは難しいと思われる」

食い違う両者の主張
傾きの原因が特定できない中、住民側は1月15日、さらに500万円ほどかけ、杭のより詳しい調査に乗り出した。
現場を下見した1級建築士は…

1級建築士 岩山健一氏;
10cm傾くということは、まともじゃないですよ。明らかに何らかの施工上の問題があっての話だと思います

これに対し施工会社側は「杭を再調査する予定はない」とコメントしている。

補修には億単位の費用…しかし訴訟には「時効の壁」が

1級建築士によると、傾いたマンションを補修するには億単位の費用がかかるという。
住民側は今後、杭の問題を『不法行為』として損害賠償を求める裁判も視野に入れている。
しかし、実はそこには原則20年という『時効の壁』が存在していた。

建築訴訟に詳しい 米田宝広 弁護士;
基本的には加害行為、何か不法な行為がなされた時から20年以内。それまでに訴訟を提起しないといけないというルールです。
杭が届かなかったその日を始まりとすると、もう20年過ぎてしまっているのは間違いない。
『タイムリミットが過ぎているから、訴訟できない』と門前払いになる可能性はありますね

法的には、不法行為に対して損害賠償を請求する権利は、その行為があった日から20年で『時効』となる。
今回のケースでは、仮に支持層に杭が届いていないとすると、『杭を打った日』が起点となる。そうすると、既に20年が経過している。つまり『時効』となっていて、賠償請求の権利は消滅。裁判を起こすことすらできないことになる。
ただし、この“20年のルール”には『原告側が不法行為を知った』その日を起点にする例外もあるということだが、それはあくまでも稀なケース。
住民側にとって、厳しい闘いとなりそうだ。

(テレビ西日本)