「断腸の思い...」 先祖代々の土地を手放す苦渋の決断

熊本県南阿蘇村立野新所区の山内博史さん。地震当時、区長を務めていた。
元日の午前0時、2020年も、住民たちと地元の神社で初詣。

この記事の画像(12枚)

山内博史さん:
もとのように活気ある立野になれば、みんな喜んで安心して暮らしていける。

2016年4月、新所区では、熊本地震の本震で九州電力の貯水槽が壊れ、大量の土砂によって9世帯が被災。夫婦2人が亡くなった。

土砂は、山内さんの家にも押し寄せた。山内さんは、住み慣れた家を解体。
九州電力との補償交渉の末、先祖代々守ってきた土地を手放す苦渋の決断をした。

山内博史さん:
ただ時間だけが過ぎて、自分たちの再建の見通しが立たない。断腸の思いでここから出ることを決めた。先祖に対する気持ちも情けない、申し訳ない気持ち。

2019年4月、山内さんの再建する家の棟上げ。
元の場所ではないが、同じふるさと立野で再出発する。

山内博史さん:
けじめをつけて、これから先、わが家はもちろんのこと、立野地域、新所区の発展を皆さんとやりたい。

立野の住民:
一軒でも家が増えると、立野もよくなっていく。

「昔のように」 先祖の墓に刻まれた“蘇”の文字

2019年11月、これまで暮らしてきた大津町にある、みなし仮設住宅。
引っ越しの日を迎えた。

山内博史さん:
引っ越しは慣れていない。みなし仮設住宅は、ゼロからの出発といっしょだったので、何もない状態だった。

新しい家に荷物が運ばれてきた。ふるさと立野での生活がようやく始まる。

山内博史さん:
自分だけ喜ぶわけにはいかないが、少なからず家が建って、ここで生活ができるということで、家族全員で喜んでいる。

2019年12月、親戚みんなで、家の完成を喜んだ。

山内博史さん:
今日は、わが家の新築祝いということで、みんなに集まってもらった。

山内さんの弟・茂実さん:
元々の場所の家には帰れないが、こうやって集まる場所ができたことは、とてもうれしい。

山内さんの長男・裕一朗さん:
やっと立野で集まれるようになって一安心。

山内さんは、家の隣に先祖の墓を建てた。刻まれた字は、「蘇」。

山内博史さん:
蘇るという、ここで再生するという気持ち。阿蘇の“蘇”、南阿蘇村の“蘇”、(被災した)立野地域が一緒に昔のようになるように蘇っていけるならという思いも自分の心にある。

地震で気づかされたこと... 「自分たちが承継し子や孫に」

家を再建して初めての正月。

山内博史さん:
再出発するつもりで頑張ろう。元の家だったら、まだ違ったかもしれないが、新しい家で再建ができたので、それ以上の喜びはない。

山内さんの妻・久美子さん:
昔に戻ったような感じ

1月12日、熊本地震で大きな被害を受けた立野地区の「どんどや」。
住民たちが集まり、地域の復興を誓った。

山内博史さん:
今まで気づかなかったことを今回の地震で気づかされた。それは人とのつながりだったり、ふるさとのいいところが見えてきたと思う。それを継続して、今から自分たちが承継して、子どもたちや孫につなげていけるならと思う。

2021年4月から、また地元で区長を務める予定の山内さん。
ふるさと立野の再生に向け、決意を新たにしていた。

(テレビ熊本)

【関連記事:日本各地の気になる話題はコチラ】

テレビ熊本
テレビ熊本

熊本の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。