2019年4月19日。旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三・元被告が、東京・東池袋で運転する車を暴走させた事故。松永真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(当時3)が死亡し、飯塚元被告は裁判では一貫して無罪を主張。最終意見陳述でも「これまでの裁判を通じて、私がアクセルとブレーキを踏み間違えた記憶がないと話しましたが、今もそう思っています」と述べていた。

実刑判決を言い渡される飯塚幸三・元被告(イラスト:大橋由美子)
この記事の画像(9枚)

東京地裁は9月2日の判決で「ブレーキと間違ってアクセルを踏み続けた」と飯塚元被告の過失を認定した上で、亡くなった2人について「将来の希望や夢を絶たれ、その無念は察するに余りある」と述べ、禁錮5年の実刑を言い渡した。

そして17日、飯塚元被告側も検察側も双方が控訴せず、飯塚元被告の禁錮5年の実刑が確定した。実刑確定は、遺族にとっては重要な節目の日。この日に合わせて、松永拓也さんら遺族が会見を開いた。

記者会見に臨む松永拓也さん(9月17日 東京・千代田区)

「心から愛していると伝えたい」松永拓也さんが思いを語る

松永さんはいつも通りの様子で会見場に入り、カメラのフラッシュが大量にたかれる中、亡くなった2人が写る遺影を机の上に置いた。弁護士からは冒頭、この会見が“最後の会見”になる見込みが告げられた上で、松永さんが重い口を開いた。

松永拓也さん:この度(飯塚元被告の)禁錮5年の刑が確定しました。長かった裁判がようやく終わって、安堵の気持ちと正直複雑な心境です。

会見中、松永さんは、亡き妻と娘の遺影を手元に置いていた。

発せられたのは「複雑な心境」と言う言葉。まっすぐとカメラの方を見つめてこう続けた。

松永拓也さん:何より知りたいのは過失を認めた上での控訴断念なのかと言うこと。ご承知の通り彼は過失をずっと否定している状態。裁判所は判決で、過失と認定した上で裁判に納得したのであれば、罪を認めた上で被害者に謝罪してくださいとおっしゃっていた。

飯塚元被告から直接の謝罪の言葉はないという

松永拓也さん:今のところ飯塚氏から自分の過失だと思うという言葉が私は聞けていません。私はずっと自分自身の過失だと思うとその一言を言ってほしかった。そのたった一言で遺族がどれほど救いになったか。それが聞けなかったのが非常に残念。

飯塚元被告は今回控訴せず判決を受け入れたが、過失を認めた上での松永さんら遺族への謝罪はなかった。それが本当の“贖罪“を意味するのかという言葉も松永さんの口から語られた。

松永さん以外の遺族も、被害者参加制度を活用して、裁判に参加していた。

松永拓也さん:今後刑務所で過ごす5年間で自分自身の過失だったなと素直に思える日がくるのであれば、飯塚氏にとって本当の意味で贖罪の始まりと思います。人間として他者を思いやる心を取り戻す5年間にして欲しいなと思っています。

最後の会見になるとした上で、亡くなった真菜さん・莉子ちゃんへの思いを涙ながらにこう話した。

松永拓也さん:2人に出会えて幸せでした。たくさんの愛を教えてもらって、たくさんの愛をくれました。心から愛していると伝えたいです。交通事故を一つでも減らす事が出来たよって自分が命尽きる時に言えるようにしたい。

亡き2人への思いを語る際、松永さんは言葉を詰まらせた。

松永拓也さん:裁判が終わった今、やっと争いではなく2人の愛してくれた私らしく生きていけるなと。これからは2人の愛してくれた僕に戻って、生きていきたいなと思っています。

会見では、これまでに行ってきた交通事故撲滅の活動にも触れた上で、今後起きうる交通事故を減らしていくためにも、国・自治体・メーカーへの技術面や法整備の面で提言などを続けていくことなどを力強く口にした。

“池袋暴走事故”飯塚元被告は近く収監へ

9月2日の判決の際、裁判長から「認定に納得できるならば被害者、遺族に過失を認め、真摯に謝っていただきたい」と告げられると、飯塚元被告は表情を変えずに小さく頷いた。その頷きに飯塚元被告の本心がこもっていたのか、実際に控訴はしなかった。

暴走事故が起きた現場(2019年4月 東京・東池袋)

飯塚元被告は控訴期限の前日の9月15日に加害者家族支援のNPO理事長と面会した際、「遺族に対して申し訳ない。収監を受け入れ罪を償いたい」と話し、高齢や健康状態を理由とした刑の執行停止についても申し立てせず、収監に応じる意向を示していたその上で、収監後に持病の薬をどうするかや面会手続きについて確認をしていたという。

90歳の飯塚元被告は近く収監される見通しだ。

今後松永さんら遺族に対して、飯塚元被告の口から過失を認めた上での謝罪は成されるのだろうか。松永拓也さんが口にした「本当の意味での贖罪の始まり」は訪れるのだろうか。近く、飯塚元被告は収監される見通しだ。

(フジテレビ社会部・司法クラブ 熊手隆一)