特集です。長野市鬼無里に縄文時代の住居を模した小屋が建てられました。手掛けたのは、94歳のかやぶき職人です。昔のようには働けませんが、かやぶきの良さを広めたいと今も「現役」です。

「10番、第1ゲート通過!」

さっそうと球を打ち込むのは、清水加久雄さん。94歳とは思えないプレーぶりです。

清水加久雄さん(94):
「疲れないね!大勢と接して楽しんだり、運動になるのが何よりだね」

仲間:
「若いし、全てやる動作が若い者にはかなわない!」

週1回のゲートボールと共に、楽しみにしていることがあります。それは…自分で建てた“縄文小屋”で過ごす時間です。

アナウンサー:
「すごく立派な建物ですね!何を使ってつくってあるのですか?」

清水加久雄さん(94):
「かやだね。二通りあるんだよ、こっちが『ほんがや』。これは『こがや』、細いね、全然違うね」

アナウンサー:
「触らせてもらってもいいですか?」

清水加久雄さん(94):
「あぁ、こわれもしねぇだ」

アナウンサー:
「わっ!すごい力で押しているんですけど、びくともしない!」

高さ3メートル、奥行き4メートルほどの“縄文小屋”。竪穴式住居を模していて、タケやスギを切り出して骨組みにし、ヨシやカヤを使い分けて、屋根や壁をふきました。

実は、清水さん、今や鬼無里で唯一のかやぶき職人なんです。鬼無里で生まれ育った清水さん。終戦から2カ月後の昭和20年(1945年)10月、18歳で戸隠のかやぶき職人に弟子入りしました。鬼無里を含め山間部では、昭和40年代頃までかやぶきの屋根が主流でした。

清水加久雄さん(94):
「自分の家が雨漏りがしてしまって、かやぶき屋根で。ところが、職人が(他の家も)ほとんどかやぶきだから、2、3カ月来ない。自分でふけたらいいかなと思って」

秋、高さ3メートルにもなる、かやを刈りとります。時代の流れと共にかやぶきの家は減っていきましたが、清水さんは土木の会社で働く傍ら、依頼に応じてかやぶきの仕事を続け、戸隠神社や宿坊などのふきかえにも携わったことがあります。

定年退職後は地域に貢献しようと、地元の神社や水車小屋のふき替えをしています。

こちらは去年、仲間と手掛けたバスの待合所。これまでにふき替えした物件は、民家を含めて200件以上にのぼります。

90歳を過ぎると、さすがに家族に止められ屋根には登らなくなりましたが、依頼があれば現場に出かけ倉庫の中には刈り取ったかやを大量に保管しています。

さらに、空いた時間を利用して…

清水加久雄さん(94):
「(水車小屋は)全集落に一つずつあっただ」

水車小屋や昔の民家のミニチュアを制作。屋根は乾燥させた芝でかやぶきを再現しました。

こちらは麻糸を作る作業。人形は、今は病気で入院中の妻・みち子さんが作りました。かやぶき屋根の下、家族や近所の人たちと力をあわせてきた昔の暮らしぶりを伝える力作です。

清水加久雄さん(94):
「こういう昔ながらのかやぶき屋根がもう消えつつあるし、作業している姿は若い人にはわからないし、そんなことが後世に残ればいいなと」

かやぶきの魅力をもっと広めたい…。その思いで作ったのが冒頭で紹介した“縄文小屋”です。この夏、10日ほどかけて完成させました。

アナウンサー:
「わあ、涼しい、意外と。すーっとした空気が通って気持ちいいですね」

清水加久雄さん(94):
「熱が外から入らないし、冬は全体が温度を吸収してあったまる」

アナウンサー:
「究極のエコ素材なんですね!」

清水加久雄さん(94):
「エコだ」

「いろり」も設置…。

アナウンサー:
「いろりもついているんですね」

清水加久雄さん(94):
「やっぱり、いろりがなきゃね。煙によって、屋根が長持ちする。煤で強くなる」

アナウンサー:
「なぜですか?」

清水加久雄さん(94):
「ちょっとした燻製みたいになって腐りにくくなるんだね。夢があったんだよ、お茶飲めるような何かつくれたらいいなって」

8月30日―。

近所の人:
「すごいなー、だって94歳でこんなねぇ」

完成後、近所の人が見学に訪れていて「かやぶきの魅力を改めて感じてもらう」という清水さんの夢が叶いつつあります。

近所の人:
「懐かしい!昔はかやぶきだったから。ここに棚つけて、(冬に)子どもの頃、わら靴で遊んで、干してもらって」
「『ひだか』ってのがあってな」
「いろりの姿を思い出すよね。すいとんとか、お鍋でぐつぐつ、『とっちゃ投げ』…」

昔話に花が咲く…

清水さんは、コロナが落ち着いたら友人と気兼ねなく、雪をかぶった縄文小屋でいろりを囲み、「お茶っこ」をするのが楽しみです。そして、いずれは地元の小中学生も招きたいと話しています。

清水加久雄さん(94):
「昔はこういう中で生活していたんだなとわかってくれたらいいな。かやってのは、『厚さ』があるから、かやの『ぬくもり』がある。この土地の人はかやの屋根の下で産声をあげたから、みんな懐かしいんだよね、かやの屋根を見ると」