今年8月、東京・港区の地下鉄・白金高輪駅で会社員の男性が硫酸をかけられ重傷を負った事件。逮捕された花森弘卓容疑者(25)は、現場からおよそ1500キロ以上離れた沖縄に逃走していたが、発生から86時間後、警視庁に逮捕された。逮捕の裏側には、3つの決め手があった。

花森容疑者の様子を捉えた防犯カメラ画像(8月24日・白金高輪駅)
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逮捕の決め手➀「250台を超える防犯カメラ」

警視庁は容疑者が逮捕されるまでに250台にのぼる防犯カメラを調べた。この捜査にあたったのは、捜査一課の「初動捜査班」という防犯カメラ捜査のスペシャリスト集団。現場周辺、駅、自宅、空港など、防犯カメラの映像を”リレー”のように繋いでいき、花森容疑者を追い詰めていった。

逮捕の決め手②「捜査員の”眼”」

大量の映像から容疑者を絞り込んでいくのは、やはり捜査員の「眼」だ。事件直後、捜査員が白金高輪駅周辺で、容疑者が逃走した方向の防犯カメラを確認していたところ、ある映像が捜査員の目にとまった。

実際の防犯カメラの画像。捜査員は手を挙げる容疑者を見逃さなかった(東京・港区)

その防犯カメラには、男が建物の影に消える直前に手をあげる瞬間が映っていた。しかし男の服装は、犯行時の容疑者の洋服の色とは違った。しかし捜査員の”眼”は、直感的に「容疑者は着替えた」と見抜いた。さらに「手を挙げる」動作を見逃さなかった。「この後、タクシーを拾ったにちがいない」と即座に結論づけたのだ。

逮捕の決め手③「捜査員の”勘”」

防犯カメラに映っているのは過去の行動であり、容疑者は既にその場所にはいない。一刻も早く容疑者を追い詰めるには逃走ルートを先読みする必要がある。そこでモノを言うのが捜査員の「勘」だ。

静岡駅でも防犯カメラに花森容疑者の姿が捉えられていた(8月25日)

「決め打ち」捜査とも言われ、捜査員が経験に基づいて容疑者の逃走ルートの予測を立て、居場所の的を絞り、容疑者を追い込んでいく。白金高輪駅で「容疑者はタクシーを拾った」と判断した捜査員は「長距離の逃走するために、タクシーで大きな駅に行こうとしている」と予測を立てた。そして事件現場から、新幹線の最寄り駅に当たる品川駅に向かったのだ。

品川駅付近の防犯カメラには、捜査員の予想通り、容疑者が駅のロータリーでタクシーから降りる様子が捉えられていた。その後、容疑者が静岡駅に向かった事が判明。捜査員が静岡駅の防犯カメラを確認すると、大きな荷物を持った容疑者が映っていた。

潜伏先の沖縄から都内に移送される花森容疑者(8月28日)

その映像を見た捜査員は「この大きさの荷物なら、遠くに飛んだにちがいない」と判断。空港に的を絞り、中部国際空港の防犯カメラを調べたところ、沖縄に逃走したことが判明。花森容疑者は、立ち回り先の宜野湾市内で逮捕された。

防犯カメラが事件解決の糸口になるケースは増えている。しかし、そこに映るのはあくまでも一瞬を捉えた映像である。その映像から事件解決の糸口を見いだすのは”人”だ。「防カメ捜査」には、捜査員の経験に裏打ちされた容疑者の行動を見逃さない「眼」と、的確に予測する「鋭い勘」が欠かせない。

(フジテレビ社会部・警視庁担当 林英美)