残業時間が多い職種は建築土木系のエンジニア

2019年4月に施行された働き方改革関連法では、残業時間に月45時間・年360時間まで(特例あり)という上限も導入された。なお、中小企業には1年間の猶予があり、2020年4月から上限規制の適用が始まる。

このように政府を挙げての働き方改革が進む中、パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」が「残業時間ランキング2019」(2019年7月調査)を発表している。調査対象は20~59歳の正社員で、インターネットによるアンケート調査で1万5000人から回答を得たもの。

その結果わかったのが、ビジネスパーソンの平均残業時間は1カ月24.9時間残業時間の多かった職種の1位は「設備施工管理」で41.6時間、2位「建築施工管理」(36.7時間)と建築・土木系エンジニアが占めた。続いて3位「食品/消費財メーカー」(35.9時間)、4位「プロデューサー/ディレクター/プランナー(出版/広告/Web/映像関連)」(35.2時間)、5位「ITコンサルタント(アプリ)」(34.4時間)で、6位にまた建築・土木系エンジニアである「土木施工管理」(34.2 時間)が入った。

「残業時間ランキング2019」(画像:パーソルキャリア)

残業時間が多い職種上位20位を見ると、7位の「総合商社」や11位の「証券会社(法人)」など営業に分類される7職種、建築・土木系エンジニアが5職種ランクインした。

営業の残業時間が長いのはイメージできるが、なぜ建築・土木系エンジニアも多いのだろうか? 働き方改革が進んでいないのか?

キャリアアドバイザーとして転職希望者のキャリアカウンセリングやサポートに長年携わり、現在はdoda編集長の大浦征也さんに詳しく話を聞いた。

建築土木系の残業が多いのは受注ラッシュが要因

ーー残業が多いトップ10には、1位 設備施工管理、2位 建築施工管理、6位 土木施工管理と建築土木系エンジニアが占めている。その理由は?

一言で言えば、受注ラッシュであることが要因です。東京オリンピック関連のニーズだとも言われていますが、実はそれほどでもありません。全国的にさまざまな建築建設系のニーズがあるのです。例えば気象の変化が著しく災害が起こっている昨今、災害対策としてデータセンター増設のニーズがあり、さらに近年は物流が増えていますのでECサイトの工場や物流拠点の建設が続いています。

そして意外に多いのが設備保全のメンテナンス系です。老朽化施設のリニューアルや耐震補強などの需要も高く、建築土木系エンジニアに対するニーズがあります。


ーーつまり、仕事への需要があるけど人手が足りないということ?

そのような側面はあると思います。さらにこれらの仕事は、施工管理技士など資格保有者でないと業務に携わることができないことも多いです。資格保有者は限られているので、その保有者の残業に頼らざるをえないという展開になりがちです。かつ、これらの仕事は納期が決まっていることから、現場には「残業をしてでも間に合わせる」という雰囲気が、少なからずあると思います。

一方で、今まで残業が多かったとされる営業や販売では、管理する会社の方針が変わってきました。「営業に残業させないために、過度な受注を断る」「販売員に残業させるのならば営業時間を短縮する」などの、働き方改革が進んでいるようです。建築土木系エンジニアの残業が際立って見えるのは、他の職種の労働環境が改善されたからとも言えます。

営業の職種の残業時間は昔より減少傾向に

まだテクノロジーを活用しにくい仕事

ーー建築土木系エンジニアは以前から残業が多い職種ではあった?

「doda」が行ったの2013年や2018年の過去調査を見てもベスト10にランクインしていましたので、恒常的に残業が発生している職種と言えるでしょう。

ただ、2000年代の始めから東日本大震災前後までは、営業や販売の職種の方が残業は多かった印象です。そしてこの未曾有の震災をきっかけに働き方を見直す人が増え、さらには政府による働き方改革が色濃くなったことから、それらの仕事ではテクノロジーの進化もあって改善されました。

営業などの職種では、テレワークやアウトソーシング、ワークシェアリングなど今では当たり前になっています。一方で建築建設施工系の仕事は、最近やっと現場の作業効率を上げるアプリなどが出てきましたが、まだテクノロジーを活用しにくい点はあると思います。加えて、本人が現場に行かないと仕事ができないことが多い職種ですので、なかなか労働環境を改善しにくい点はあると思います。


ーー建築土木エンジニア系の仕事の特徴は?

土木は、道路やトンネル、橋のようなインフラ系の工事。公共需要系の仕事が多く、政府の財政政策に影響を受けやすい。かつ一回プロジェクトに入ると年度末までの納期が決まっていて、仕事の量はコントロールしにくいようです。

家やマンションに代表される建築系は民間需要なので需要予測も立てやすく、短納期のものから中長期のものまで種類は豊富です。これは民間企業の需要となるので、働き方に関しては柔軟性があります。

設備系はtoBの仕事が多く、商業施設だとか会社の工場、空調やプラント、配管の施工管理が主な仕事です。計画的で安定的に進めることができるのですが、ロケーションが地方になるケースも多く、一方で地方には人材が集まらないこともあるので一人当たりの残業が増えるという傾向にあります。

一般的に労働時間が長いほど満足度は下がる傾向

ーー過去の「労働時間」に対する満足度の調査では、全職種の平均73.6点のところ設備施工管理は61.8と平均以下。これは労働時間の長さが影響している?

そうですね。労働時間が少なければ少ないほど満足度が上がるわけではないのですが、残業が長いと満足度は下がる傾向にあります。もちろんこれだけが要因ではありませんが、一般的にみて労働時間や労働環境の厳しさが満足度に影響しているというのは否定できません。

「doda」仕事満足度ランキング2019(画像:パーソルキャリア)

ーーちなみに残業が多い職種って、現在は応募を敬遠する人が多い?

必ずしもそうではありません。興味深いことにある程度の残業は仕事に対する満足度に正の相関があるというデータもあります。やりがいを感じて高いモチベーションがある人は、残業をしても満足度が高いのです、もちろん、残業がいき過ぎるとモチベーションが下がり、ネガティブな影響があるのも事実です。

近年の応募者の傾向は、自分に合わせて働き方などを柔軟に選択できるかを重視しています。残業の有無を見ているのではなく、一般的に自由度のなさを感じられる求人を敬遠する傾向があります。残業が多いことだけを焦点に敬遠されることはあまりないと思います。


なお政府が進める働き方改革の効果もあり、相対的に残業時間は減っている傾向にあるという。また大浦編集長は、建築土木系エンジニア系でも今後はさらにテクノロジーが発達し、残業時間が減少していくと推測している。

建築土木系エンジニアの残業時間が多いのは、現場に行かないと仕事ができないという理由や建築土木の仕事への需要の高さにあった。

「変わらなきゃ!働き方改革」特集をすべて見る!