定年後に迎えた初めての「里子」

広島県神石高原町に住む秋山さん。5年前、定年退職してから始めたことがある。

秋山泰章さん;
(当時は)この子がおった
(Q.かわいくて仕方がなかった?)
ですね、ぼちぼち歩く直前でね。言葉をしゃべりだすんですよ。「お父ちゃん、お父ちゃん」言うて…

映っているのは、自分の子でも孫でもない。
子どもが大好きな秋山さん。
35年間教師をしてきた。
妻との間に子どもはいない。

広島県東部地区里親連合会 秋山泰章会長;
退職してから何をしようかなと考えていたとき、妻から、小さな子を育てたことがないから里親っていうのがあると。パンフレットを見てやってみようかな、と

里親とは、病気や死別、虐待などの理由で実の親と暮らせない子を、一時 親に代わり養育する制度。
公的な役割であるため、約7万~12万円/月の手当と、生活費や教育費などが支給される。

広島県独自のものとして、週末や夏休みに施設の子などを短期間預かる「ふれあい里親」という制度もある。
最初は「ふれあい里親」になった秋山さん。

秋山泰章さん;
いざ引き受けたら、やっぱり違いますね。もうとにかく、抱っこ・抱っこ・抱っこ…。やっている時はバタバタして大変

しかし、5年間で7人の子を、最長11カ月間見ていくうちに、疲労は違う感情へと変化する。

秋山泰章さん;
子どもが変わっていくんですよ。それが一番こっちも驚きだし、感動だし…。
精一杯、親代わりをして、人間作りのベースのような部分、野菜でいったら土づくりですよね。そこの部分を僕らがやってやることが大事。自分自身の生きる意欲につながった

現在、里親をする人は広島県内に88世帯(2017年度 広島県・広島市発表)。
しかし、広島県の委託率は16.1%と全国平均より低く、里親は足りていない。
児童虐待が増加し、家庭のぬくもりを知らない子が増える中、里親のニーズは増え続けている。
施設もある中、なぜ今 里親なのだろうか。

広島国際大学大学院心理学研究科実践臨床心理学専攻 松崎佳子特任教授;
家庭を経験することは、子どもが大人になった時に家庭を築く一つのモデルでもありますよね。
どうしても施設は交代勤務にならざるを得ない。
愛着の関係をきちんと作っていくというのは、特定の大人との変わらない日常生活の中でできあがっていくものです。
里親さんというのは大事な存在なんじゃないかなと思います

妊娠をあきらめた夫妻の「21人の子どもたち」

呉市にある「稲垣ファミリーホーム」。
その食事風景
子どもの可愛い「どうぞ、めしあがれ!」の声。それに応える「いただきます!」。

約30年、里親をしているご夫婦。
これまで総勢21人、今は6人の子を世話する稲垣さんご夫妻。
ベテランの2人の元には、様々な育ちの子がやってくる。

(Q.どんなお父さん?)
里子の女の子;
明るくって、面白いだけ(笑い)

里親の稲垣りつ子さんと、肩たたきをする里子

里子の男の子:
お母さんの力持ち~

その姿は、本物の家族のようだ。

里親になったのは30代の時。
子宮外妊娠がきっかけで、妊娠は望めなかった。

約30年里親をする稲垣りつ子さん;
あきらめないと仕方がないんで…。でも子どもが好きだったんですね

そんな時、里親制度を知ったが、夫の薫さんは反対した。

約30年里親をする稲垣薫さん;
犬や猫と違うんで、預かる以上責任があるし、そういう大事なお子さんを預かるのにそれだけ責任が持てるんだろうか、と

覚悟を決め、いざ預かると…「お父さん」「お母さん」と懐いてくれた

約30年里親をする稲垣薫さん;
子どもら自身が楽しいと言ってくれるのが一番うれしいし、自分が何かの役に立てているという気持ちにもなる。(里親になって)すごく良かった

今は、子どもたちの世話を手伝う友美さんは、2番目の里子として稲垣家にやってきた。
児童虐待を受け、施設に入っていた友美さんは、ここに来たときのことを今も覚えている。

友美さん;
いろいろな生き方があるというか、色々な生活が人にはあるんだなっていうのが分かったのかも。「家族です」や「団らんです」というのを意識せずに、自然にできるというのがいいのかなと思います

ベテラン里親の稲垣さんのもとには、里親に関心のある人がよく訪れる。

稲垣りつ子さん;
なぜ里親になろうと思った?

訪ねてきた女性;
自分の人生、社会貢献していきたいと思って

稲垣りつ子さん;
ギブアップして、返しますって言ったら子どもが犠牲でしょ。楽しいばかりではない。大変なこともある

まず問うのは覚悟。
でもそれだけではない。

稲垣りつ子さん;
私らなんて、今68歳なんよ。でも幼稚園のお母さん方と交流があるわけ。里親になっていろいろな方と出会える。これが最高。
今の自分があるのは子どものおかげだなって、常に思っとる。それは主人もそうだと思う

訪ねてきた女性;
(里親について)無知だったと思う。すごく感謝というか…まだまだ知らないことがいっぱいあると思いました

稲垣家を訪れる地域の支援者;
これ、蒲刈で獲ってきた無農薬のみかん

稲垣りつ子さん;
いつもすみません。ありがとうございます

稲垣家には、地域の多くの人も支援に訪れる。
遊んでくれる人、勉強や絵画を教えてくれる人…。

支援者が、それぞれの得意分野で夫婦と子ども達を応援し、それは子どもたちの成長につながっている。

稲垣りつ子さん;
オープンにしておくと、色々な人が関わる。社会全体で子どもを育てるシステム。それが一番ベストなんじゃないかな

稲垣薫さん;
とにかく(里親になる)一歩を踏み出してほしい。絶対的な価値があると思う。困った子がおったら、ひとりでも助けてもらえれば、すごく世の中もよくなるんじゃないかという気がしますね

(テレビ新広島)