2020年の受験シーズンも佳境を迎えつつある。
受験生本人が一番大変なことは間違いないが、時代の変化に対応できるように、志望する学校で少しでもいい教育を受けさせたいと応援する親も気が気ではないはず。

それでは、親や身近な人々は子供たちのために何ができるのだろう。
親心としては何かしてあげたいが、思わぬことが重圧や不安を煽ってしまうかもしれないし、合格・不合格という現実も一緒に受け止めなければならない。

そこで今回は、多くの学生を指導してきた「河合塾グループ」に取材。自らも受験生の子供を持つ、河合塾町田校の校舎長・弘實郁江さんに、受験生への接し方のポイントなどを伺った。

「緊張や不安が今の子供は強まっている印象」

――受験シーズンの受験生は、どんな感情や問題を抱える?

緊張や不安は受験につきものですが、今のお子さんはそれが強まっている印象を受けます。
昨今の受験は複雑かつ難度も上がっていて、受験生は過度の重圧や不安を受けがちです。そうした状況でさらに、進路について両親の意見が違ったり、お金の問題が出てくるといった、お子さまの不安要素が増えているようです。親子仲が良い家庭も多いのですが、双方の感情がその分伝わりやすくなってしまい、不安が不安を呼んでいるケースが目立ちます。


弘實郁江さん

――それでは、親はどう支えてあげればいい?

個人的な意見ですが、特別なことはしなくてもよいと考えています。受験はお子さまが社会的自立に向けた経験を得る大きなチャンスでもあります。口を出しすぎると自立心が失われたり、指摘を受け入れられなかったり、精神的な不安定につながることもあります。

保護者にお願いしたいのは、お子さまが普段通りに安らげる場所でいてあげることです。規則正しい生活を送れるよう、家庭・食事環境も整えてあげてほしいですね。力になりたい、大丈夫かと不安になると思いますが、思い詰めたり特別なことをしすぎると、その気持ちがついつい口から出てしまい、お子さまが「合格しなければ」という強迫観念まで抱きかねません。


――子供が受験で悩み込んでいたら、どうするべき?

普段通りの自分でいられるように励ましてあげるべきでしょう。受験生を持つ家庭では、お子さまより保護者が不安・緊張に悩むこともありますが、一番つらいのはお子さま自身です。「いつもの自分が出せるように頑張ろう」などと、落ち着いたトーンで声をかけてあげましょう。

保護者が過剰反応しない、大げさな行動を取らないことも大切です。安心したい、悩みから救われたいという思いから、お子さまに不安を吐露してしまうこともあります。その不安はお子さまにも伝染してしまうので、努力を信じてあげるべきだと思います。


親がやってはいけないこと

――子供が重圧を抱えていないかどうか、注意すべきサインはある?

重圧を感じても、お子さま自身の前向きな意欲によるものならプラスに働くことが多いです。「合格したらこれをやりたい、学びたい」といった言動などに表れますね。これが、他者からの期待などを口にするようになると注意が必要です。過度の不安や緊張を抱えている可能性があります。


受験生は口にしなくても悩みを抱えている(画像はイメージ)

――親がやってはいけないこと、避けるべきシチェーションなどはある?

お子さまの頑張りの否定につながる行動・言動は避けたほうがよいでしょう。
実際の例では、ある家庭の子供が「併願受験」(複数の学校を受験すること)して、片方の試験結果が思わしくないことがありました。その際、保護者が併願受験したことを責めたことで親子間の関係性が悪化した、という話を聞いたことがあります。

きょうだい間や他者との比較も避けるべきです。受験生のお子さまは言葉にはしなくても「両親は自分のことをどう考えているんだろう」と悩んでいるものです。そこに「誰々が何点とった、あそこの子供は推薦された」などと話すと、傷付けてしまうでしょう。

また、大学受験などは親世代が経験していないこともあります。この場合、お子さまよりも保護者が切迫した状況にイライラして、全てを知らないと気が済まなかったり、逆に丸投げしてしまうことがあります。これもお子さまの精神的な不安定の要因になります。


頑張りや努力の否定につながることは避けるべきという(画像はイメージ)

――進路や勉強法で意見が対立したら、どうすれば良い?

難しいところですね。保護者とお子さまが意見を戦わせても、保護者の意向が強くなるので、互いの主張に具体性や根拠があるかで話し合うべきではないでしょうか。受験間近になっても意見に相違があるのなら、それまでの話し合いや情報共有が足りなかった可能性もあります。

例えば、高校では1年生のときに文系・理系を選択しますが。保護者が「忙しいから任せるよ」などと放置してしまうと、後悔やトラブルにつながることも考えられます。お子さまの未来に関わりそうなときはしっかり向き合い、その都度話し合うことが大切だと思います。


望ましい結果でなくとも「プラス思考」で行こう!

――合格したときに、備えておくことはある?

学校の偏差値や評判などを気にせず、思いっきり喜んであげてほしいですね、お子さまは「受かって当然だよ」と言うかもしれませんが、今までの努力の成果です。「あなたが認められたんだよ」ということを伝えて、思いっきり褒めてください。次の合格への温かい架け橋ともなります。

備えがあるとすれば、お金周りの準備でしょうか。大学受験の場合、入学金の納付を含めた入学手続きが完了して正式な合格となります。この入学金は数十万単位と高額ですが、納付してから別大学に入学することになっても、お金は戻ってこないことがほとんどです。

そのため、複数の大学を受験していると、第1志望の合格発表日と既に合格した大学の入学手続き締め切り日が重なるようなケースも出てきます。お子さまは合格点をとったのに、手続きに失敗して入学先がないことにならないよう、すぐに動ける準備はしておきましょう。


合格したら「認められた」ことを褒めてあげよう(画像はイメージ)

――望ましい結果を得られなかったときは?

一番悔しい思いをしているのは、お子さま自身です。保護者の感情は後回しにして、温かい笑顔で「お帰りなさい」と迎えてください。そして、結果を糧に次も頑張ろうとプラス思考を持てるように接するべきです。残念な結果でも、そこから学べるメリットなど客観的に伝えてあげると、自然と前向きな気持ちになれるでしょう。

一方で残念ながら、全滅や結果に納得が行かず進学に悩むこともあるかもしれません。
このときはお子さまの悔しさや頑張りに共感しつつ、大学では浪人などの選択肢があることも示してあげるべきでしょう。進路を失ったお子さまはこのままではいけないと分かっていても、社会から見捨てられた心境になります。そんなときに「そばにいるよ」と見守りつつ、行動を起こすまで支えることこそ親の役目だと思います。


保護者も不安を1人で抱え込まないで

――子供を見守る親に呼びかけたいことはある?

保護者が悩んだり不安を抱えると、お子さまの精神状態も不安定になることがあります。気になることは事前に話し合い、ぶれない姿勢で見守ってほしいです。また、思うことをそのまま話すと傷付けてしまうこともあるので、不安でたまらなくなったら、塾・学校の先生・配偶者などの第3者を頼り、ご自身の心境を整理してみてください。1人で抱え込まないでほしいですね。


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子供の努力は、近くで見守ってきた親が一番分かっているはず。試験を行う以上、合格・不合格は生まれてしまうが、その頑張りを否定しないで支えてあげてほしい。願わくば、良い結果が出ることを祈りたい。

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