自民党総裁選の告示日が迫る。三つ巴の構図が固まりつつある中、出馬を表明した3人の候補は、リモートによる対話集会やテレビ出演、あいさつ回りなど、支持拡大を図り精力的に動いている。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、今回の総裁選でいち早く出馬を表明した岸田文雄前政調会長を迎え、政権取りへの戦略をうかがった。

人気者を揃える河野氏陣営はバランス取りが課題 岸田氏は「自らの戦い」

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新美有加キャスター:
岸田前政調会長が出馬表明をした8月26日の後、菅首相が総裁選不出馬を、高市前総務相と河野規制改革担当相が出馬を表明。戦い方の変更はありますか。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
状況や環境はずいぶん変わったが、やることに変わりはない。政治不信と言われる中で信頼を取り戻すことが原点。国民、党員に向き合って選挙を行うという基本は全く変わらない。

新美有加キャスター:
9月14日、小泉環境相が地元横須賀市で会見をした様子です。

小泉進次郎 環境相(9月14日):
横須賀市連合支部として、全会一致で河野太郎さんを総裁選で支持すると機関決定しました。支持理由は、今の候補者で唯一コロナ対策を経験している直接の責任者であること。そして私からすれば、気候変動の危機を重要課題として挙げている唯一の候補であること。誰が党風一新できるか。答えは明らか。

反町理キャスター:
小泉さんの動きは想定内?

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
国民の政治不信の中、自民党を変えなければいけない。私の出馬表明時に第一に掲げた自民党改革という訴えと全く同じ。私の提案が大きな影響を与えたと思っている。徹底的に最後まで訴えていきたい。

反町理キャスター:
安倍前首相と麻生財務相は盟友関係にあり、派閥は別だが連携。2人は自分が総理だったときに石破茂元幹事長が退陣要求を突きつけたこともあり、石破さんを政治家として評価していない。その石破さんが河野さんを支持する意向となれば、ふたつの派閥は今後どう動くか。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
河野さんはいいが、背後に石破さんがいれば許せないということ。今後辛くなるのは、河野さんが所属する麻生派の麻生さん。河野さんが石破さんと協力関係を深めれば深めるほど、河野さん支援に回る麻生派の議員の問題もあり、麻生さんは困る。

反町理キャスター:
すると石破さんが不出馬を表明して河野支持を表明すれば、河野さんは「塩対応」するようなことになる? 

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
河野さんの言葉遣いは非常に難しい。挙党態勢という話をしているが、人事の約束もしたのではないかと見られ、細田派は河野さん以外に投票するという意向になっている。バランスの取り方が河野さんの一番大きな課題。

反町理キャスター:
次の首相について世論調査を行うと、河野さん、石破さん、小泉環境相の人気が高い。3人足せば60%の支持で勝ちだと言う人もいるが、岸田さんは。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
自分自身が何を訴えてどう戦うか。確かに相手の動きを気にはしていますが、自らの戦い、これをしっかりと進めていくことにより専念する。

「コロナ禍では、対話から信頼を得る自分のようなリーダーが必要」

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長
岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長(9月10日):
政治は全員野球。しっかりとしたチームを組むことが大事。怒鳴ってばかりではチーム力は発揮できない。

反町理キャスター:
岸田さんは、毒を吐くのは不得意な人と僕は思っていたんですが。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
これは毒ですか(笑)。誰かのことを指しているのではなく、チーム力は大事ということ。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授
田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
今回の政局は岸田さんが切り開いている。もっと控えめで、あまり人のことを攻撃しない非常に紳士的な対応をされる方だと思っていたが、やっぱり出馬表明をした8月26日で人が変わったのでは。

反町理キャスター:
戦術として、これまでの自身のイメージを壊さなければ勝ち抜けないと腹を決めた瞬間があった?

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
いえいえ、自民党改革や政策について練りに練ってきました。大事なのはチーム力だと当然のことを言っているが、そういうふうに取られるものなんでしょうか(笑)。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長、河野太郎 規制改革担当相(画面)
岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長、河野太郎 規制改革担当相(画面)

反町理キャスター:
そうです(笑)。例えば河野さんは実行力、突破力を売りにしている。閉塞感のあるこの時代では、自分のような人間が首相になることが日本に希望をもたらすと。岸田さんは? 

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
今の時代に求められているリーダー像。私は2020年の総裁選に負けてから、多くの国民の皆さんの声を聞いてきた。コロナ禍の中で多くの皆さんが疲れている。そんなときに、上に立って俺についてこいというリーダーが求められるのか。そうではなく、国民の心に寄り添って、対話から信頼を得て協力を引き出すリーダーが求められる。私こそそうなれると信じて、立候補を決意した。

反町理キャスター:
河野さんの突破力・実行力と、岸田さんの癒し・包摂。これが今回の総裁選の対立軸になる?

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
そうだろうと思います。また、高市さんも日本を守ると強く打ち出され、強いリーダー像。コロナ禍においてどんなリーダーが求められるか、我々も考えなければいけない。

まずは党員票が大きなポイント 最後はギリギリの議員票の争いに

反町理キャスター:
今回の総裁選はいわゆるフルスペックで行われ、国会議員票だけではなく党員・党友票が大きく結果を左右します。どちらの票にウエイトをかけていく?

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
9月17日の告示と同時に投票用紙が配られる。告示後数日間が党員投票の勝負になるので、まずは党員票が大きなポイント。

反町理キャスター:
党員・党友にどのように訴え、浸透させていくか。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
今の時代をどう受け止め理解するか。国民の心はどこにあるのか。これを党員の皆さんにもよく考えていただき、ふさわしいリーダーを真剣に考えてもらう。しっかり判断していただく努力をタイムリミットまで続ける。そこから先は、ギリギリの議員票の争いになる。

コロナ病床確保では法改正も視野に 各年代を登用し挙党体制を敷く

反町理キャスター:
岸田さんのコロナ対策は、医療難民ゼロ、病床や医療人材の確保を国主導で進めるための法改正などを謳っている。病床確保のための強制力についてどうお考えか。国が直接、医療機関に対して病床を作れと言うことは?

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
現場の声として、現状は国・地方自治体・医療機関が横並びであり、しっかりと司令塔機能が必要であると聞く。そこで国として「健康危機管理庁」を作る。現状でも国としてリーダーシップを発揮する余地はあるが、都道府県と協力し、さらに法改正も必要なら考えていく。

反町理キャスター:
勝った場合の人事、岸田さんの考える挙党態勢について。河野さんや高市さんを閣僚や党役員として起用するお考えは? 

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
どなたも排除することはない。チーム力が大事。老壮青のバランスの中で、若手もしっかりと登用する。

「聞く力」がまず大切。信頼のために党に不利な説明をすることも必要

新美有加キャスター:
視聴者の方から。「国民は岸田さんに『聞く力』があることなど十分わかっている。むしろ聞きすぎて甘い対応をすることを危惧し、闘う力・人を見抜く力を求めている」。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
聞く力を持ち合わせない政治家もたくさんいる。自分は1時間も2時間も演説をするが、人の話は5分も聞けないという政治家も多い。信頼回復のためには、しっかりと聞く力を発揮した上でこの発信・実行力につなげていくのが順番だと思っています。

新美有加キャスター:
こちらも視聴者の方から。「党の説明責任・透明性、ガバナンス改革を考えなければいけないと発言されています。党に不利な事実であっても同様の対処ができるのでしょうか」。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
不利・有利ではなく、結果として自民党が公党として信頼を確保するために、しっかりとした説明を果たさなければいけない。時には不利なことであっても必要な説明はあり得る。自民党が国民政党としてしっかり国民の声を聞き、選択肢を用意して信頼できる政党として評価されるために、そうした説明や政治とお金における信頼を大事にしていかなければいけない。

反町理キャスター:
あと2週間ほどで、何を一番に訴えていきますか。

岸田文雄 衆議院議員 自民党前政調会長:
先ほど言ったリーダー像、自民党改革、そして政策に尽きると思っています。

BSフジLIVE「プライムニュース」9月14日放送