自動車窃盗の新たな手口「CANインベーダー」その仕組みと対策
愛知県で車の盗難が多発している。
名古屋市緑区では8月、ひと晩のうちに同じ車種の4台の車が盗まれる被害があった。犯行時間はわずか2分、窃盗団の新たな手口を取材した。
助手席のグローブボックスが外され、むき出しになった配線。車内の複数の場所に破壊された形跡が残されている。
この記事の画像(14枚)被害に遭った男性:
ドライブレコーダーは外されているし、こちら(の配線)も切られている
8月に自宅の駐車場から車が盗み出されたという名古屋市緑区の男性は、納車されてすぐの被害だったと言う。
被害に遭った男性:
まだ買ってきて1カ月経っていないんですよ。
(Q.車の中の状態を見た時は?)
ひどいなと思いました。なんでそこを開ける必要があるのか、なんかあるんでしょうね
車が盗まれたのは名古屋市緑区の住宅街。8月22日の夜から23日の明け方にかけ、半径1キロほどのエリアで4台もの車が相次いで盗まれた。
男性の車は近くの公園で見つかったが、狙われた車はすべて同じ車種だった。
被害に遭った男性:
ランドクルーザープラドの白色の車ですね。10年ぐらい前も(自分のプラドを)1台やられたので、またかと
盗難被害の多いランドクルーザー。愛知県警によると、車種別では「レクサスLX」に次ぐ2番目の被害の多さで、特に「プラド」の盗難が増えているという。
荒らされた車内の状況に、専門家は…
キッズガレージの代表:
グローブボックスを外して、GPSのユニット(機械)を外しているんだと思います。GPSで後を追えるんです。どこにいるかって現在地が分かるんですけども、それで(警察に)追われちゃうと窃盗団も見つかっちゃいますんで
プロが指摘するのは、左前方のバンパーが壊された痕。ここに新しい手口の手がかりがあると言う。
キッズガレージの代表:
ここの場所が一番狙われていますね。「CANインベーダー」という手口ですけれども、純正セキュリティーを解除してエンジンをかけるという、比較的(車の)外から簡単に繋げられますので
これまで、自動車盗で主流とされていたのは、家にあるスマートキーから出る微弱な電波を特殊な機械で増幅させてロックを解除する「リレーアタック」と呼ばれる手口だった。
一方、今回使われたとみられるのは「CANインベーダー」と呼ばれる新たな手口。
特殊な装置をバンパーの裏側にある配線に接続し、車の制御システムに侵入することで、ロックを解除してエンジンも始動する。スマートキーの電波が不要なため、環境を選ばずに犯行が可能となる。
CANというのは車の中のコンピューターとコンピューターをつなぐ通信の線で、いたるところに配線が張り巡らされ車の制御をしているが、ここに侵入することから「CANインベーダー」と呼ばれている。
バンパーの裏側にあるCANにつながる配線に特殊な機器をつないで、ハッキングをして鍵をあけたり、エンジンをかけたりする手口だ。
一度解錠できると、同じ仕組みの車はどんどん解錠できてしまうため、同じ車種ばかり狙われたとみられるケースが相次いでいる。
実際に8月、名古屋市東区でレクサスLXが盗まれた際の防犯カメラの映像でも、不審な人物が車の左前方でしゃがみ込んでいたかと思うと、わずか2分ほどですぐに車を発進させた。
キッズガレージの代表:
特にヘッドライトにそういうコンピューターが入っているのは、高級車の場合が多い。高い車ほど今狙いやすい、盗みやすい感じになっています
兵庫県警が押収した「CANインベーダー」で使われる特殊な機械。一見普通のモバイルバッテリーにみえるが、反対側には赤と黒のボタンがついている。
兵庫県警などが8月に逮捕・送検した男2人は、この機械を使って200台近くの車を盗んだとされていて、被害総額は10億円以上とみられている。
狙った車を素早く持ち出せることから、主流になりつつある「CANインベーダー」。対策はあるのだろうか。
キッズガレージの代表:
純正はどうしても、一台解析しちゃえばあとの車は全部一緒ですので、やはり後付けのセキュリティーをつけることが大事ですよね
メーカー純正のセキュリティシステムでも乗っ取られる危険があるということで、対策としてはハッキングを防ぐために窃盗団に解析されていない別のセキュリティーをつけることが有効だ。
次々と出てくる窃盗団の手口。
ほかにも、犯人は時間がかかることを嫌がるために、ハンドルロックやタイヤロックといった物理的な防犯装置を二重三重と付けることも有効だ。
(東海テレビ)