母親のPFAS血中濃度が高くなると「子どもの体重は落ちる」

2021年8月26日、米軍は人体に有害とされるPFASを含む水を下水道へ放出。
米軍は処理をしたと正当性を主張している事から、同じことが繰り返される恐れがあるとして、母親たちが声をあげた。

※PFAS:約4,000種類以上ある有機フッ素化合物の総称

2021年8月26日 沖縄・宜野湾市 普天間基地
2021年8月26日 沖縄・宜野湾市 普天間基地
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2016年に、沖縄・北谷町の北谷浄水場から45万人に供給される水道水にPFASが含まれていることが明るみに出たことをきっかけに、子どもたちに安心・安全な水をと活動を始めたのは「水の安全を求めるママたちの会」だ。

2021年8月26日、米軍によって放出されたPFASが含まれる汚染水は海に流れ出るため、その影響は計り知れないとして、9月2日に「水の安全を求めるママたちの会」のメンバーは沖縄防衛局に抗議し不安を訴えた。

2021年9月2日 
2021年9月2日 

水の安全を求めるママたちの会 伊礼ゆうきさん:
PFASの有毒性は、とりわけ発がん性や胎児・子どもの発育への悪影響が指摘されています。低出生体重児は、PFAS汚染地域で多い可能性が否定できない、という県内の地域で比較した調査結果があります

なぜ、母親たちが不安を募らせるのか…それは、PFASは”胎児や赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼす”ということが世界の統一見解となっているからだ。

日本のPFAS研究の第一人者は…

京都大学 医学研究科 小泉昭夫名誉教授:
PFASのお母さんの血中濃度が高くなればなるほど、子どもの体重は落ちてくる

京都大学 医学研究科 小泉昭夫名誉教授:
2,500グラム以下の低体重の赤ちゃんが生まれてくる割合が、沖縄県は全国を上回っていて、中でも汚染が疑われる北谷浄水場の水を使う那覇市・宜野湾市・沖縄市は、他の浄水場から水を引く南城市に比べて低体重の赤ちゃんが生まれる割合が高く、きちっと調査する必要があると思います

「水の安全を求めるママたちの会」代表の山本藍さんは、この問題を20年近く調査しているアメリカの環境NGO団体が発信する記事を目にして、より大きな不安を感じた。

記事には、米・ミネソタ州で水道水がPFASに汚染されていた地域では、低体重の赤ちゃんが生まれる割合が36%高く、早産の割合が45%高かったと記されている。

水の安全を求めるママたちの会 山本藍さん:
低体重出生で36%、早産で45%…もう目に見えての数字ですよね、沖縄で子供を育てている私達からすると、レッドライト、赤信号ですよね。

「危険なものを私たちの土地に一滴も流さないで」

国際条約で使用が禁止されるPFOS等を含む汚染水の放出について米軍は、1リットル当たり2.7ナノグラムと、厚生労働省が定める飲料水の暫定目標値よりも20倍安全だと、正当性を主張している。

※現在、国際条約で使用が禁止されている有機フッ素化合物はPFOSとPFOAの2種

同じことが繰り返されるのではないか…危機感を抱く「水の安全を守るママたちの会」は、沖縄防衛局にこれまでの経緯や米軍基地内での汚染水の保管状況を把握し、公表するよう求めた。

沖縄防衛局 宮崎次長:
日米間のやりとりについては控えさせていただきますが、極めて遺憾

2021年9月2日
2021年9月2日

2021年8月26日の放出から一週間が経過した2021年9月2日、日本側は、米軍から一報を受けた通知以外、詳細を記した文書なども得ていないことが明らかになった。

水の安全を求めるママたちの会 山本藍さん:
“遺憾です”のコメントには驚きました。それは県民の意見であって、誰が私達の命を守ってくれるのか。私達は声を上げることはできるけれども、何かそれを止めるとか具体的なことができるわけではない

2021年9月4日、子育て世代の有志約30人が沖縄・宜野湾市役所の前に集まり、抗議の意思を示した。

2021年9月4日
2021年9月4日

参加者の中に、2017年に沖縄・宜野湾市の保育園や小学校に米軍機による相次ぐ部品落下で子どもの命が危険に晒されたことで声をあげた与那城千恵美さんの姿もあった。

与那城千恵美さん:
汚染水の放出はみんなショックで、ショックが大きかったです。私たちのことを何とも思っていないんだなと、とっても思いました

与那城千恵美さんは、「水の安全を求めるママたちの会」にも加わり、普天間基地のすぐ傍で子育てをする母親の想いを国に伝えた。

与那城千恵美さん:
2020年に普天間基地から泡消火剤が住宅地に流出したばかりで、子どもたちの小学校の池で高濃度のPFASが検出されたり、保育園の砂場の砂を入れ替えたり、子どもたちの傍に危険が及んでいて、すごい不安です。基準値だから、処理したとかそういう問題ではなくて、こういう危険なものを一滴も私たちの土地に流してほしくないんです

母親たちは、環境や生物への影響のほか県民への健康調査を行うこと等を求めた。この地で命を育む親たちの切実な声に、米軍や国はどう向き合うのか県民は注視している。

沖縄テレビの取材に対し米軍は、普天間基地にどれだけの量の汚染水を保管しているかについて回答しておらず、沖縄防衛局は「確認中」としている。

沖縄県は二度と同じことを繰り返させないため、普天間基地や嘉手納基地への立ち入り調査を求めるとともに、汚染水の保管状況を公表するよう求めている。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
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