初戦から波乱含みの民主党候補者選び

デモイン市内に設置されたメディアセンター 集計結果がビックスクリーンに映し出されることになっていたが・・・

トラブルに見舞われ集計率が100%に至ったのは 2月3日の党員集会から丸3日たった6日夜。その後、集計にミスがあったとメディアが報じたため、最終的な結果確定は10日以降に先送りになった。初戦から波乱含みとなった民主党の候補者選び。アイオワ州党員集会の現時点での結果は、当初の予想を覆す候補者最年少のブティジェッジ氏が勝利、次をサンダース氏が追う形となった。全米支持率でトップを保ってきたバイデン氏は4位と苦戦した。

名門大学卒業のエリートで、若くして市長となり、市長在任中に軍役に従事しアフガニスタンに駐留、そして同性愛者であることを公表している。ブティジェッジ氏が脚光を浴びることになったが、民主党の候補者選びはまだ始まったばかり。ここに来てアイオワ州を含む4つの序盤戦を捨て、無駄な選挙資金を費やさなかったブルームバーグ氏が本当の勝者なのではないかとの声さえ上がっている。

サンダース氏とバイデン氏の動きを現地取材

ワシントン支局はアイオワ州に入り現地取材を行った。

世論調査で最有力候補とされたサンダース氏とバイデン氏の二人に焦点を当てて取材したが、アイオワ州でそれぞれ2位と4位の結果となった。2016年の前回大統領選挙で指摘された世論調査の限界なのか。定説として言われるアイオワを制した者の圧倒的な優位性は本当なのか。まずは取材班が見た二人の動きを集会前日から追ってみる。

キャンペーンバスから孫と手をつなぎながら降りてくるバイデン氏(2月2日デビューク市内)

【党員集会前日12:00バイデン氏の動き】

アイオワ州の中心部から車で3時間の町、デビュークに「バイデン」と大きく書かれたバスが到着した。バスから孫娘と手を繋いで下りてきたのは、トレードマークとなっているサングラス姿のバイデン氏。

この日党員集会前の“最後のお願い”にやってきた。スピーチは8年間の副大統領時代の経験や、外交、安全保障など多岐にわたったが、この街の住民にはいずれも遠い話のように聞こえた。実際に、原稿に目を落として読み聞かせるようなスピーチに会場が熱気に包まれることは無かった。

【党員集会前日17:00サンダース氏の動き】

演説をするサンダース氏(2月2日デモイン市内)

この日、4か所目となるデモイン市内での集会に臨んだサンダース氏、78歳という歳を感じさせない精力的な選挙活動を続けていた。会場に入りきれない支持者や、メディアが建物の外に溢れかえっていた。

【党員集会当日 22:00バイデン陣営のパーティー会場】

ドレイク大学の施設内に設置されたバイデン陣営のパブリックビューイング会場に動揺が走った。ドレイク大学の体育館で行われた党員集会で、バイデン氏がブティジェッジ氏に敗れたとの出口調査の一報が入ったのだ。会場に集まっていた支持者は静かに各地の集計結果を待っていた。

【党員集会当日 23:12】

集計結果が出ない中、バイデン氏が登壇した。その目は血走っていた。
「長い夜になりそうだが、いい気分だ。トランプ大統領を再選させるわけにはいかない」

パーティー会場に現れたバイデン氏の目は血走っていた(2月3日夜デモイン市内)

【党員集会当日 23:00サンダース陣営のパーティー会場】

一方、サンダース陣営のパーティー会場のビックスクリーンにサンダース氏優勢の情報が映し出さられるたびに「バーニーこそがトランプを倒す!」との掛け声が上がった。

満を持してサンダース氏が会場に現れると会場の興奮は最高潮に。

サンダース氏は「非常にうまくいったと感じる。史上最も危険なトランプ大統領の終わりの始まりだ!」と高らかに宣言した。

党員集会の夜、支持者を前に演説をするサンダース氏(2月3日)

【党員集会当日 23:50】

若者たちの興奮冷めやらない中、サンダース陣営のパーティーは集計結果が出ないまま、お開きになった。

【“初戦”アイオワの結果でわかる事】

「アイオワを制する者が大統領選を制す」と言われる。アイオワで全てが決まる訳ではないが、今後の流れに大きな影響を与えることは間違いない。初戦のアイオワは「混迷する民主党」そのものを表していた。今回の出口調査では62%の人が候補者を「トランプ大統領に勝てるかどうか」で選んだと答え、36%の人が候補者を「政策に賛同したから」選んだと答えている(NEP:ナショナル・エレクション・プールのデーター)。

混迷する中でも民主党の目指すものは、実は極めてシンプルで、「打倒トランプ」だ。では誰にそれができるのか。

今回もサンダース氏に対する支持は熱狂的だった。ただ、一般的な民主党支持者にとってサンダース氏は、前回選挙でトランプ大統領に屈辱的な敗北を喫したヒラリー・クリントン氏に結果的に遠く及ばなかった候補。政策的に前回選挙からの変化も感じられない。

民主党が政権を取るには、急進派ではなく、全国の無党派層も取り込む穏健派候補が必要だと言われる。その点、バイデン氏は、党内の中道寄りで穏健派の政治家だ。

しかし、バイデン氏はオバマ政権の延長線上に位置するイメージがある。その路線は前回選挙で否定されたからトランプ大統領が誕生したのではないか?オバマ時代に戻りたいという世論はどれくらいあるのか疑問だ。今回、波に乗ったかに見えるブティジェッジ氏。年齢、経歴や同性愛といったトランプ氏にはない多様性が、アメリカ社会の将来像を有権者に提示するポテンシャルを感じる。ただし、革新的な候補が社会を更に分断しないか、そうした心配もある。トランプ大統領に勝てる候補を見極める上で、分断社会にブレーキを掛け得る穏健派の対抗馬が必要となる。3月3日のスーパーチューズデーから参戦する周回遅れのダークホース、ブルームバーグ氏に脚光が集まり始めている理由はそこなのではないか。

今回のアイオワは話合いで決める「党員集会」であったが、次のニューハンプシャーは、投票で決める「予備選挙」となる。これまでの世論調査で優位に立つサンダース氏が息を吹き返すのか、バイデン氏は食い下がることができるか、また、ブティジェッジ氏がさらに勢いに乗るのか。総力取材を続ける。

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【取材:FNNワシントン支局取材班】
【執筆:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美】

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