DWES = 分散加重交戦スキーム

11月29日、衆議院の安全保障委員会で、自民党の中谷元議員(元防衛相)が「北朝鮮のスカッド、ノドン、これが、ロフテッドとか連続攻撃によって我が国への攻撃が可能となっている」との認識を示したうえで、岩屋毅防衛相に尋ねた。

中谷元・元防衛相
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中谷元・元防衛相:
(弾道ミサイルが)同時に飛んでくる場合に、米艦艇と自衛隊が日本海で共同で警戒監視、迎撃体制をとりますけれども、イージスアショアも含めまして、どのような役割分担、また連携で日米で対応するのか。

将来、DWESという装置で、自動的にどの艦が最適であるかということを示して、IAMD、将来は…、経空脅威に備えるようになりますけれども、米軍との共同のIAMDなどを、どのように進めていくとお考えでしょうか。

DWESについて(イラスト:岡部いさく氏)

DWESというのは、イージス艦に組み込まれるMIPS(米海軍発展型プランニング・システム)という仕組みの機能のひとつ。

MIPSは、米海軍がイージス艦などの水上艦用に開発したシステムで「周辺のXXというところに弾道ミサイルを載せた移動式発射機が〇〇輛展開し、YYというところには巡航ミサイルの車両が▽▽輛展開している」という場合に、個々の味方のイージス艦等が、どんな迎撃ミサイルを何発、積載しているのかというデータを基に、それぞれのイージス艦などは、どこに展開すればよいか等、最適なプランを作成・提示するシステムだ。

そのMIPSの機能の一つが、DWES(Distributed Weighted Engagement Scheme)と言い、直訳すれば「分散加重交戦スキーム」となり、かえって意味が通じにくい用語だが、岩屋防衛相は答弁の中で、以下のように説明した。

岩屋毅防衛相

岩屋防衛相:
米軍が導入しているDWES、ディーウェスというものがあると承知をしておりますが、このシステムは、複数のBMD対応のイージス艦の間で自動的に迎撃調整を行うというものでございまして、弾道ミサイルへの対処を確実なものとしつつ、かつ、より効率的・効果的な迎撃を可能とする機能。

つまり、連続発射された複数の弾道ミサイルに対し、どのイージス艦がどの弾道ミサイルを迎撃するか、イージス艦を自動的に割り振ってしまう機能、という訳である。

日本を射程内に捉えている北朝鮮の軍事力

スカッドER

米国防省が、2018年2月に発表した「北朝鮮の軍事力2017」によれば、日本全域を射程としうるノドン、ムスダン弾道ミサイルの移動式発射機が、それぞれ50輛未満。

それに数量不明の、スカッドER弾道ミサイル、北極星2型準中距離弾道ミサイル、火星12型中距離弾道ミサイルの移動式発射機が存在する。

6月の米朝首脳会談後、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験・訓練は見られないが、北朝鮮は、日本を射程にしうる弾道ミサイルを破棄したとは言えず、これらの移動式発射機の数だけ、日本を射程にしうる弾道ミサイル能力を保持しているということだろう。

それはイコール、その移動式発射機の数だけ、北朝鮮がその気になれば、同時・連続発射が出来るし、再装填すれば連続発射を繰り返すことも出来る。また、北朝鮮以外にも日本周辺には、日本を射程にしうる弾道ミサイルを保有する国がある。

「あたごには既にDWESを搭載」

中谷議員の質問に、岩屋防衛相はDWESについて以下のように回答した。

岩屋防衛相:
自衛隊におきましても、BMD改修後の『あたご』には既に搭載されておりますし、現在改修中の『あしがら』及び建造中の『まや』型2隻には就役時から搭載される予定です。

まや

あたごにDWESが既に搭載されているということは、MIPSそのものが、すでに搭載されているという事だろう。
その結果、日本に向かって、複数の弾道ミサイルが同時または、連続して飛んでくる場合、将来、海上自衛隊の最大4隻のイージス艦が「迎撃調整」を行うようになるということなのだろう。

もちろん海上自衛隊には、こんごう型イージス艦4隻も弾道ミサイル防衛能力を持つが、米海軍及びミサイル防衛局が、DWESを試験したのは、「イージスBMD4.0」という段階の弾道ミサイル防衛能力を持つイージス艦だ。

海上自衛隊の「こんごう」型イージス艦

こんごう型は、それ以前の「イージスBMD3.6」という段階の弾道ミサイル防衛能力の艦なので、他のMIPS装備イージス艦から、DWES機能による迎撃の割り振り調整を受けて、迎撃することはありうるかもしれないが、他のイージス艦に迎撃を割り振ることはできないだろう。その後に続く、岩屋防衛相の言葉は、興味深い。

岩屋防衛相:
これ(DWES)によって、日米間のBMD(=弾道ミサイル防衛)対処の連携強化が更に強化されることになるというふうに考えておりまして、不断にBMD能力の向上について検討を行い、米国とも緊密に連携をしてまいりたいというふうに考えております。

横須賀に配備されている米海軍イージス艦

右:ジョン・S・マケイン 左:ミリアス(提供:Hirotoshiさん)

米海軍は横須賀に、弾道ミサイル防衛能力のあるイージス艦を7隻配備している。巡洋艦シャイローと駆逐艦ジョン・S・マケイン(来年まで修理)、ステザム、カーティス・ウイルバー、それに弾道ミサイル防衛と巡航ミサイル防衛の両方ができるIAMD駆逐艦バリー、ベンフォールド、ミリアスだ。

シャイローの艦長は、第7艦隊のイージス弾道ミサイル防衛指揮官を兼ねるとされ、弾道ミサイル防衛の際は、シャイローが弾道ミサイル防衛の迎撃調整、つまり7隻の内での迎撃の割り振りをリアルタイムで行うという。

シャイロー

岩屋防衛相のDWESによる「日米間の弾道ミサイル防衛対処の連携強化」とは、言い換えると「あたご」「あしがら」「まや型2隻」は、シャイローの「イージスBMD指揮官」率いる米海軍のイージス艦部隊と1つのチームのように行動して、配置につき、日本防衛の弾道ミサイル防衛を行うという事だろうか。

岩屋防衛相は、答弁で使わなかった言葉だが、日本に向かって弾道ミサイルが連射されるというのは、いわゆる「武力攻撃事態」にあたり、その危機から少しでも日本の犠牲を少なくするためには、日米の誰が指揮を執るのかはともかく「日米のイージス艦が、1つのチームを構成して、集団的自衛権を行使する」ということになるのだろうか。興味深い考え方ではある。


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