禁錮5年の実刑判決 「亡くなった母子の無念は察するに余りある」と指摘
2019年に東京・池袋で起きた暴走事故で、旧通産省幹部の飯塚幸三被告(90)に禁錮5年の実刑判決が言い渡された(求刑:禁錮7年)。飯塚被告は「アクセルとブレーキを踏み間違えた記憶はない。車の異常が事故原因」と無罪を主張してきた。しかし東京地裁の判決では、これらの主張は一蹴された。
判決では、「亡くなった母子の無念は察するに余りある。遺族らは一様に、飯塚被告に対して峻烈な処罰感情を有している」と指摘。さらに「飯塚被告が事故に真摯に向き合い、深い反省の念を有しているとは言えない」と断じた。法廷では謝罪の言葉を口するも、結局は「罪を認めてない」飯塚被告を非難もしている。

”90歳””体調”は飯塚被告にとって有利な事情なのか?
他方で、飯塚被告にとって有利に考慮すべき事情として、●90歳と高齢であること ●体調が万全ではないこと●過度の社会的制裁を受けていることなどを列挙。要は、禁錮7年の求刑から2年を差し引く”事情”ということだ。
ただ、本当にそうなのか?裁判を通じて明らかになったのは、飯塚被告が2010年以降、5回も物損事故を起こし、杖をついてフラフラになりながら歩く状態なのに、ハンドルを握っていたこと。本人も法廷で「早く運転を止めておけば」と述べている。

となると、高齢であることと、体調が万全ではないことは、そんな状況になるまで、運転を止めなかった飯塚被告にとって、”有利”ではなく、“不利”に考慮すべきる事情なのではないか。それなのに、”相場通り”の求刑から「7掛け」をして、禁錮5年を言い渡すとは・・・。
事故で妻子を亡くした松永拓也さんは「同じような事故が起きないために何ができるか。飯塚被告にもそういう視点を持って欲しい」と訴えている。高齢ドライバーによる事故の当事者が、自ら事故問題に取り組んで欲しいという意味だ。しかし、この「7掛け」判決では、松永さんの思いは、飯塚被告の耳には届くまい。
(フジテレビ報道局解説委員・平松秀敏)