「座りすぎ」で生じる様々な健康被害

2月は「全国生活習慣病予防月間」。
一般社団法人「日本生活習慣病予防協会」が定めているもので、協会は「一無、二少、三多」(無煙・禁煙、少食、少酒、多動、多休、多接)を掲げ、生活習慣病予防を呼びかけている。
しかし、2011年にオーストラリアの研究グループが発表した調査では、日本人は世界一「座りすぎ」との結果が出た。
サウジアラビアと並び1日の座位時間は7時間で、次に台湾、ノルウェー、リトアニア、香港、チェコが6時間と続いた。
この研究は自己申告による調査ではあるものの、日本人は「座りすぎ」の傾向があるようだ。
さらに、明治安田厚生事業団 体力医学研究所の調査(2018年)によると、1日9時間以上座っている人は、7時間未満の人と比べて糖尿病を患う可能性が2.5倍高くなるという結果も出ている。

提供:明治安田厚生事業団 体力医学研究所
提供:明治安田厚生事業団 体力医学研究所
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明治安田厚生事業団 体力医学研究所・甲斐裕子主任研究員;
座りすぎている人は、肥満、生活習慣病、がん、認知症などになりやすく、その結果、死亡リスクが上がると報告されている。
しかも、この健康被害は、多少の運動では帳消しにできないため、職場や学校、家庭での座りすぎ対策が求められている。
特に、デスクワーカーの座りすぎは深刻。座位時間を短くするには、『立ち会議』や立ったままでも仕事ができる『昇降式デスク』の導入が有効

明治安田厚生事業団 体力医学研究所・甲斐裕子主任研究員(バイク型チェア&昇降式デスクで仕事をしている)
明治安田厚生事業団 体力医学研究所・甲斐裕子主任研究員(バイク型チェア&昇降式デスクで仕事をしている)

オフィス環境を変えれば改善するのか検証!

では、オフィス環境を改善すると、どの程度「座りすぎ」が解消できるのか?
2018年10月から明治安田厚生事業団 体力医学研究所・オカムラ・電通国際情報サービスの3社が国内で初めて実証実験を行い、その調査結果を2月13日に発表した。
まず、下記のようにリノベーションを行った。
ポイントは、「昇降式デスクの全面導入」、自由に選択できる「共用席の増設」、様々な所にアクセスできる「回遊型通路の設置」の3点だ。

提供:明治安田厚生事業団 体力医学研究所・オカムラ・電通国際情報サービス
提供:明治安田厚生事業団 体力医学研究所・オカムラ・電通国際情報サービス

リノベーション前後の各2週間(計4週間)、座位行動を中心とした行動データを調査したところ、リノベーション後は、座位行動が40分/日減少。立ったり歩いたりという低強度の身体活動が24分/日増加した。
さらに、AIによる画像解析で「いつ」「オフィス内のどこに」「何人の従業員がいたか」を検出したところ、リノベーション後は回遊型通路の活用が多くなったことがわかった。
また、共用席の中では、入口近くや窓際の活用度が高いという特徴も見出された。

提供:明治安田厚生事業団 体力医学研究所・オカムラ・電通国際情報サービス
提供:明治安田厚生事業団 体力医学研究所・オカムラ・電通国際情報サービス

今回の実証実験では、オフィスの環境改善による「座りすぎ解消効果」が確認された他、オフィス内の活用度の高いスペースも確認された。
近年、従業員の健康管理を経営的視点から実践する「健康経営」が企業にとって課題となっている。
オフィスワーカーにとって、深刻な健康課題である「座りすぎ」に着目したオフィス環境づくりも今後重要になっていきそうだ。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)

土門 健太郎
土門 健太郎

フジテレビ報道局経済部 記者