東京・池袋で車を暴走させ、親子を死亡させるなどした罪に問われた、旧通産省の元幹部・飯塚幸三被告(90)に対し、9月2日、判決が言い渡される。この事故で、妻の真菜さん(当時31歳)と娘の莉子ちゃん(当時3歳)を亡くした松永拓也さん(35)が取材に応じ、判決を前にした現在の心境を語ってくれた。

遺族として裁判に参加 そこで感じた『心の葛藤』

松永さんに話を聞いたのは、事故前に3人で暮らしていた部屋。事故からおよそ2年4ヵ月。莉子ちゃんが描いた絵や、真菜さんが莉子ちゃんと手作りしたアクセサリーなど、2人の面影が、至る所に残されていた。

部屋には、亡くなった妻と娘の面影が・・・
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松永拓也さん:
莉子は『のんたん』の絵本が一番好きでしたね。『お姉ちゃんになりたいな』と言って、『いもうといいな』という本が好きでした。

一瞬にして奪われてしまった2人の未来。松永さんは、これまで被害者参加制度を使い、飯塚被告に直接、被告人質問や意見陳述などを行ってきた。法廷では、飯塚被告の目をしっかり見て淡々と問いかける姿が印象的だったが、裁判を通して『心の葛藤』も感じていた。

「車に異常があった」と無罪を主張し続ける飯塚被告の姿に、裁判が進むにつれて、空しくなり、裁判に参加する意義を見いだせずにいたとのこと。

被害者参加制度を使って裁判に参加。しかし松永さんは『心の葛藤』を感じ始める

松永拓也さん:
判決が出たら私たち遺族にとって救いになるのか分からなくなるんですよね。命は戻らないから、本当の意味では何も変わらないんですよね。裁かれようが裁かれなかろうが。ただそれでも将来『やれることはやった』って言えるようにしたいですし、それが僕たちが生きていく上で大事なことなんだろうなと。

事故現場近くのベンチで誓う『2人の命は無駄にしない』

去年1年間に、全国で、交通事故により亡くなったのは2839人。4年連続で戦後最少を更新し、去年は初めて3000人を下回った。しかし、それでもなお、多くの人が命を落としている。

「もうこんな悲しいことは起きて欲しくない」。最初に感じたそんな思いに立ち戻ることができるのが、事故現場近くに建てられた慰霊碑。事故から2年以上が経ったこの日も、慰霊碑には花が手向けられていた。

事故から2年以上が経ってなお慰霊碑には花が手向けられていた(東京・豊島区・8月12日)

松永拓也さん:
事故から1ヵ月ぐらい毎日、近くのベンチに座って、事故現場を眺めながら、その思いに至ったんですよ。こういうことを無くしたいと。二人の命を無駄にしないようにしたいって決めたのがここのベンチだったんですよ。

『お父さん頑張ったよ。1件でも事故なくせたよ』と胸を張りたい

事故防止に向けた活動や情報発信にも取り組む松永さん。今回の判決については「ひとつの区切り」としながらも、「本当の意味で大事なことは、こうした事故を今後起こさないこと」と話し、その先を見つめている。

松永拓也さん:
自分が命尽きた時に『お父さん頑張って生きたよ、やれることは全部やったよ、もしかしたら交通事故を1件でも防げたかもしれないよ』と、胸を張って言えるように生きていきたいと思っています。

飯塚被告にも望む『同じような事故が起きないために何ができるか』

一方で、松永さんは、判決を言い渡される飯塚被告に対し、「同じような事故を起こさないようにするためにはどうすれば良いかという視点を共に持ちたい」と呼びかけた。

松永さんは、飯塚被告に対して『同じような事故が起きないために何ができるか。そういう視点を持って欲しい』と。

松永拓也さん:
飯塚被告が、もう少し証拠と向き合って、何でこういう事故を起こしてしまったのかということをもし言ってくれたら、被告と同じような立場の人が、こういうことが起きないようにしようと考えるきっかけになったと思う。今からでも遅くないから、もう少しそういう視点を共に持って欲しい。

検察側は、飯塚被告に対し、過失を問う車の事故としては最も長い禁錮7年を求刑。飯塚被告は、遺族の思いと判決をどう受け止めるのか。判決は9月2日午後2時に言い渡される。

(フジテレビ社会部・司法クラブ 松川沙紀)