「国内は感染早期」
「日本国内は感染早期の状態と見なして対応すべきだ」
独立行政法人地域医療機能推進機構理事長でWHO西太平洋事務局長を務めた尾身茂氏が2月13日に日本記者クラブで講演し、新型コロナウイルスへの対策を提言した。
尾身氏はかつて、中国を中心に流行したSARSの対策で陣頭指揮をとった経験がある。
尾身氏は、無症状のウイルス感染者の存在などから、感染が進行している可能性を指摘し、少なくとも感染は散発的に拡大し、国内は「感染早期」の状態と見なした対策を取るべきだと強調した。実際、この講演の後、感染経路が確認できない「市中感染」の可能性がある感染者が発見された。
尾身氏は、新型コロナウイルスが引き起こす症状の特徴について、
「多くの人は軽症だが、高齢者や基礎疾患を持っている人を中心に、一部はかなり厳しい肺炎で重症化する」と指摘した。
そして、今後、感染が拡大期に入った場合には重症感染者の早期発見・治療に重点を置くべく、「軽症者は開業医を含めた医療機関でフォロー」し、「軽度の感染者は自宅待機」するなど医療体制の整備をすべきだと提唱した。
また企業に対しては「会社の運営を継続するため在宅勤務等を考えて欲しい」と述べた。
「終息時期の予想は時期尚早」
中国の専門家が新型コロナウイルスの流行は4月までという見通しは示したことについては、「期待をするのは分かる」とした上で、武漢以外の中国各地の対策や無症状者の存在といった「不確定要素」があるため、ピークや終息の時期を予想するにはまだ早いとの認識を示した。
さらに、「東京五輪前に絶対に終息する」という根拠はなく、終息の時期を予想するのはあまり意味がなく、今やるべきことをしっかりとやるべきだと強調した。
オールジャパンで死亡者数の最小化を
また、尾身氏は日本でも感染拡大が起こる可能性を指摘した上で、「死亡者の数を減らすこと」を最大の優先課題だと日本の社会が覚悟する必要があると訴えた。
2009年の新型インフルエンザ流行の際は、国・地方自治体・医療機関・国民がそれぞれの役割を果たした結果、死亡率が世界で圧倒的に低かった。人口10万人あたりの死亡率がアメリカで3.3、イギリスで2.2だったのに対し、日本は0.2だった。
尾身氏は、国際的な対策の評価は死亡者の数で決まるとして、対策のプライオリティーを死亡者数の最小化にすべきだと主張し、「オールジャパンでやるべきことを確実に行えば、死亡率を極力抑えることは可能だ」と訴えた。
(フジテレビ 政治部)