今日19日、検査で陰性と確認されたおよそ500人の乗客がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」を降り、バスやタクシーを使って帰宅した。

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安堵の一方で「対応なってない!」の怒りも

下船した静岡在住70代の女性:
今朝5時前に起きて。「あ~、本当に下りられるね」という感じで。感激というか安堵感というか。

下船した静岡在住70代の男性:
(検査結果の証明書を)下船する1日前の夜に部屋に入れていただいた。本当に一つの証になりますんでね。そういう意味ではもう本当に良かったと。家内とも非常に涙を流して喜んだということですね。

喜びの声があふれる一方で、ある下船者の女性が「家帰っても他の人に迷惑かけたくないので、2週間ぐらいは外出ないように」とコメントするなど、不安をあらわにする人もいた。

また、ある乗船客は「一言でいえば、政府のやり方はなってない! 政府のやり方はなってないんだ! 我々乗船者に対する思いやりとかそんなものは一切あらへん。薬もくれへん4日間!情報がないんや、船に。偉そうに大臣がやって来て船の中で演説しよるけれども、その通りにはいかんのや! やっと帰ってきた!」と怒りの声を上げている。

国会でも政府の“下船”判断で質疑

午前中の衆院予算委員会でも、山井和則衆院議員が「500人の方が横浜駅や東京でそこで解散になってご自由に帰宅をされると。本当にその方々が自由の身になっていいのか。私は下船をしていただくのは賛成です」と質問。

これに対し、加藤勝信厚労相は「WHOからは『14日間で健康確保期間をおけば』というひとつの指針が出ている」と答弁している。

「ダイヤモンド・プリンセス号」からの下船は21日までに終えるということだ。

クルーズ船での対応に海外からも批判の声

佐々木恭子アナウンサー:
(夕方5時時点で)日本全国でみますと620人という方が今感染確認されています。そのうち、このクルーズ船の中で542人ということなので、この全国の感染者のうち9割がクルーズ船の方で占められています。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
ここまで多くの感染者が出るというのは想定しておりませんでした。ただやはり狭い空間にたくさんの人が詰め込められているという状況を考えれば、その中に感染者1人2人いればかなり広がるという可能性はあるだろうなと。

加藤綾子キャスター:
やはり、密閉された空間に閉じ込めておくのはリスキーだった部分もあると。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
おっしゃるとおりです。だから早い段階から、例えば高齢者の方とか、重い病気を持っておられる方、100人200人ずつでもいいので少しずつ分散して下船させておいた方がもう少し感染者は減少する可能性があるかなとは思います。

加藤綾子キャスター:
実は海外からもさまざまな批判の声が出ているんです。「日本政府の対応は公衆衛生危機の際に行ってはいけない対応の教科書に載る見本のようだ(ニューヨーク・タイムズ)」と、かなり厳しいような批判も出ているわけなのですが、この批判に関して二木先生は海外の指摘は当然であるとしているのですよね。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
結果として、これだけの感染者を出してしまったので、いろいろご批判を受けることは仕方がないかなというふうに思います。ただこういうふうなことは、どこの国も誰も経験したことのないことですから、日本政府もそれなりに頑張って結果としていろいろと反省しなきゃいけないことがあるだろうと。

加藤綾子キャスター:
「水際で防げる」という意識が、日本はちょっと強かったんじゃないかと。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
以前の新型インフルエンザの時も、水際対策は随分一生懸命やりましたけれども、やっている中でとっくに(国の)中に感染者が入っていたということがありますので。島国ですから確かに水際はある程度効果はあるのですけれども、あまりそれにこだわるとこういうことになるんだなということが分かりますね。

神戸大学の岩田健太郎教授が船内の状況を批判

加藤綾子キャスター:
さらに今、ある医師の発言が注目されているんです。「ダイヤモンド・プリンセス号」に検査に入った岩田健太郎さんなのですが、「ダイヤモンドプリンセスの中はものすごい悲惨な状態で心の中から怖いと思った。検査で入った自分もコロナに感染してもしょうがないと本気で思った」という衝撃的な意見を述べていたのです。

加藤綾子キャスター:
こちら船内で活動した岩田健太郎さんは、「本来はウイルスがある場所とウイルスがない安全な場所に分けることでウイルスから身を守るべきなのに、ダイヤモンドプリンセスでは区別がまったくない。どこの手すり、どこの絨毯、どこにウイルスがいるのか、さっぱり分からない」と述べるなど、船内での対応のずさんさや環境が原因となって船内の感染拡大が起こったのではないかと指摘されているんですが、これに対してはどうですか。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
そうですね。確かに私たちの病院からもDMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)があります。災害派遣の救急の先生たちが行かれて、中をご覧になって同じような感想を持たれたようです。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
ただ、全く清潔不潔が区別されていないわけではなくて、一応そういうふうな区別もされているのですけれども、そこを利用する方々が必ずしも感染症のプロというわけではありませんので、対応に漏れがあるということもあろうかと思います。

加藤綾子キャスター:
DMATの方たちは、感染症に対するプロということではないわけですね。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
ですから災害のプロ、あるいは災害の時に生じたいろいろな救急疾患に対するサポートにいかれているわけですから、そういう先生方が見て「ちょっと不安だな」というふうに思われるのも事実のようですから。

加藤綾子キャスター:
少し、感染症対策のプロの人たちの人手が足りなかったのではということですね。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
早いタイミングで感染症学会とか、あるいは環境感染学会、これは特に感染対策のプロ集団ですので、そういうところと政府が相談をされて、もう少し人員を送り込めばよかったかなという気もします。

帰宅後の乗船者「症状が出てくることがゼロではない」

加藤綾子キャスター:
今日、国会では「今日下船する500人のうち、昨日今日で感染した人がいるんじゃないですか」という質問も出ているんですね。もし本当に、昨日今日で感染している人がいたとしたら、さらに2週間船内に留まらなければいけないという事態になるんですが、もう船の中で感染拡大という状況は起きていないというふうに私たちは考えていいんですか。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
これはやはりなかなかまだ断定できないと思いますよ。まだ船の中で残っている方もおいでですので、今日昨日まで毎日毎日何十人の新たな感染者が報告されていますので、もう少し出る可能性もないかなと思います。

加藤綾子キャスター:
船を降りた人への対応を政府に求めるとしたらどのようなことですか。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
基本的にはここまでよく耐えられて頑張ってこられたので、もう限界だと思いますので皆さんを降ろしていくのは仕方がないこと、妥当なことだと思いますが、今のような懸念は当然あります。今症状がないので、例えば公共の乗り物に乗って家に帰られるまでに感染をばらまくというリスクは少ないと思います。ですが、家に帰ってから症状が出てくるということがゼロではありません。

昭和大学医学部特任教授・二木芳人氏:
そういうふうなことを考えて、政府としてはお家に帰られた後も、1週間もしくは2週間慎重にその方々の健康状態を管理していただければと思います。

(Live News it! 2月19日放送分より)

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