れいわが次期衆院選の公認候補を発表…元小沢ガールズらが立憲と競合

国会からほど近い東京・赤坂にあるビルの1階。外から見ても一際目立つピンクのポスターが一面に張られている。去年7月の参議院選挙で2議席を獲得し、「台風の目」となったれいわ新選組の党本部だ。2月17日、山本太郎代表はこの党本部で、次の衆院選に向けた第1次公認候補予定者を発表した。その「山本太郎流」選挙戦略が波紋を広げている。

この日に発表されたのは首都圏で出馬予定の7人だ。元Kー1選手や、昨年の参議院選挙に出馬した候補など様々だが、中でも目を引いたのは元民進党副幹事長の太田和美氏と、元民主党政調会長補佐の櫛渕万里氏の元職2人の擁立だった。

なぜなら太田氏の千葉8区には立憲民主党の新人・本庄知史氏が、そして櫛渕氏の東京22区には立憲の現職である山花郁夫議員がすでに出馬予定で、野党同士で真っ向からぶつかる形となったからだ。

太田氏はかつて小沢一郎氏の側近“小沢ガールズ”と呼ばれた存在で、一定の知名度がある。櫛渕氏も含め、出馬すれば立憲の候補と野党の票を激しく奪い合い、“野党共倒れ”となって自民党を利する可能性が濃くなるのだ。

さらにれいわは翌日以降も静岡、愛知などで候補予定者を発表し、消費税率5%への減税を掲げた野党共闘が実現しなければ、全国に100人規模の候補を擁立する方針を打ち出していて、各地で野党候補が乱立しかねない状況になっている。しかし、山本代表は会見で次のように語った。

「野党は誰もがピンとくる政策を掲げる必要がある。消費税率を5%に引き下げる旗を揚げて戦うのが一番だ。私たちとしてはこの選挙で立てると言うだけ。誰にかぶっていようと、立てたいだけ。それに対して調整が必要なら、話し合いになっていくだろう」

このように山本代表は次期衆院選戦略について強気の発言を繰り返しているが、果たしてその本音はどのようなものなのだろうか。

山本太郎氏も相談する”閣僚経験者”が語る「れいわの戦略」

「参院選はサーカス団に見えかねない戦い方だったが、衆院選では難しい。力が足りないとみれば公認を取り消すかもしれない。一人一人が背水の陣で戦う」

山本代表は17日の会見でこのようにも語っている。この言葉について「選挙区調整の余地があるという意味だ」と解説するのが、山本氏の相談に乗ることもあるという野党の閣僚経験者だ。この人物はれいわ新選組の1次公認について次のように分析した。

「1次公認の中身を見て『なんだこの程度?』と言う議員はいっぱいいると思う。そう、これがすべて。れいわの現実なんだ。そのくらい山本氏は1人でやっている」

つまり、れいわ新選組はほとんど、山本代表1人の力で動いていて、その強気の言動が売りであると同時に、限界もあるということだ。実際、山本代表も落選中という状況下で、れいわの国会での存在感は大きくはない。それだけに、山本代表も強気の発言で主張を通そうとしつつも、れいわの候補では勝てないとなれば、選挙区調整には応じる戦略だとの見方だ。

一方でこの閣僚経験者は、「(前回参院選で)山本氏がこれまで野党が掘り起こせなかった票を掘り起こしたというのは事実だ。だから野党でしっかりグリップしておかないといけない。野放しにしておいたら、野党にとってマイナスになる」と述べている。次期衆院選での野党勝利のカギを握るのもまた山本代表であり、れいわ新選組との共闘は重要との認識だ。

しかし、山本代表と立憲民主党などが連携する際に乗り越えないといけないのが、「消費税」に対する考え方の壁だ。

消費税に関する立憲民主党枝野代表の考え

立憲民主党の枝野代表は2月16日の「立憲フェス」と銘打った党大会で、支持者の問いに答える形で、消費税についてこのように述べた。

「少なくとも、私が総理になれたときに、私が総理をやっている間に、消費税をこれ以上上げることはしません。さらに言います。私がもし総理になれたら、総理をやっている間に消費税を上げる議論はしません。ここまでしっかり約束をします」

立憲民主党・枝野代表の会見 2月16日

枝野代表は消費税率のさらなる引き上げを否定し、その上で、仮に巨額の財源が確保できた場合には「所得の低い人に給付する」「税率を下げる」などという使途が考えられるとも述べたが、山本代表が訴える消費税率引き下げについては言及しなかった。

さらに枝野氏は、次の衆院選で野党が勝利しても、参議院は引き続き与党が過半数を握ることから、「消費税はいずれにしろ政権取ってもすぐには下がりません、絶対に」と断言した。記者会見でも「できないことを約束することは絶対にしない」と断言していて、次期選挙において「消費税率引き下げ実現」を公約として掲げるのは難しいとの姿勢をにじませている。

そもそも、旧民主党に所属していた議員には、消費税率引き下げには抵抗感が根強い。民主党政権だった2012年に、民主・自民・公明の三党合意で消費税率引き上げを決めた経緯があるからだ。枝野代表は、去年の参院選で消費税率10%への引き上げには反対したが、野党内に民主党政権時代の首相・閣僚経験者が多数いる中で、「消費税減税」を掲げるのは簡単ではない。

立憲民主党が静観している理由 1年生議員は戦々恐々

では、消費税について折り合わなくても、立憲民主党とれいわ新選組との選挙での共闘は実現するのかだが、立憲の若手議員の一人は「自分のところにれいわの候補者が立ったら負けてしまう」と、れいわの動きを気にしている。

しかし、立憲幹部は「完全無視」の姿勢で静観しているのが実情だ。去年から幹事長レベルで協力の呼びかけをしているというが、選挙区調整に動く“本気度”は現時点では感じられない。ある立憲幹部は、次のように強気の姿勢を示している。

「れいわは脅威ではない。支持層がかぶっていると思っていない。バッティングしたところでうちは負けない。だから完無視」

国民民主党・共産党は山本代表にどう向き合う?

国民民主党・玉木代表の会見 2月19日

では立憲以外の野党の、れいわ新選組に対する姿勢はどうか。国民民主党の玉木代表は19日、「経済状況を見ても、増税は間違っていた。我が党としては消費税のあり方を検討するので、どこまで下げるのか、しっかり検討したい」と述べ、連携に含みを持たせた。

ただ、先出の閣僚経験者は、「国民民主とれいわはいつでも組める。でもそうなると立憲民主と距離ができてしまう。野党が大きくなるにはまずは立憲民主とれいわが組まないといけない。それは選挙区調整でいい」と語る。

こうした中で、れいわ新選組と立憲などの野党の橋渡し役に強い意欲を示しているのが、消費税減税などでれいわと共通点を持つ共産党だ。

志位委員長は、20日の会見で「消費税は是非5%減税で共通の旗印になるように努力したい」と消費税減税を共通政策にした共闘に強い意欲を示した。その上で、れいわ新選組が野党共闘に入るには「野党側の努力も必要だがれいわの側の努力も必要」と歩み寄りを呼びかけた。

共産党・志位委員長の会見・2月20日

野党共闘は”絵に描いた餅”に終わるのか

野党共闘の協議は、政権交代という「目的」は同じでも、互いの「政策」や「原則」があるし、「利害」にも直結するだけに一筋縄ではいかない。その象徴が「消費税減税」をめぐる壁と「選挙区調整」の問題だ。

ただ野党幹部は「同じ方向さえ向いていれば完全に一致する必要はない」と指摘していて、衆院選が近づいてくれば流れが変わり一気に共闘が進む可能性はある。東京五輪後の解散総選挙がとりざたされる中で、どのタイミングで、どのような枠組みで協議をするか、そして有権者の支持の得られる落としどころを見つけられるかが、自民党政権に対抗する野党共闘の成否の鍵を握るだろう。

(フジテレビ政治部 野党担当 大築紅葉、柴木友和、高橋洵