中国は他国からの“感染逆流”を心配しだした。対応が遅いと指摘される日本や一気に感染が広がった韓国の状況に、警戒を強めている。

日本と韓国から来た人はすべて隔離する

山東省煙台の空港は厳戒態勢に(ウエイボより)

「緊急通知:韓国/日本から来た人は入らないで」(煙台市の住宅街)

「国籍問わず、日本・韓国から戻った人は自発的に14日間隔離を」(威海市の住宅街)

沿海部・山東省の各地で相次いでこんな通知が見られるようになった。煙台市では、住宅地に運ばれ隔離される韓国人グループの映像がネットで見られた。中国では日本と韓国に対する警戒が一気に高まっている。

「私たちの国はすでに落ち着いてきた。感染の流入に注意しないと」

「日本と韓国から来る人を直接隔離出来ないのか」

ネット上にも感染の逆流を警戒する声が溢れるようになった。中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大のくい止めに手応えをつかんだのか、他国を警戒し始めたのだ。山東省威海市や青島市などでは到着する全ての人を指定の場所に運び14日間隔離すると決めたほか、煙台市は入境する全ての人にウイルス検査を受けさせる方針を明らかにした。素早く厳しい対応は日韓の状況や対応への不安の表れだ。「全国で対応して欲しい」などの声もあり、今後同様の動きが中国各地に広がる可能性もある。

中でも韓国への警戒は強まる一方だ。江蘇省南京市ではソウルからの便で中国人3人が発熱し、国籍問わず全乗客94人を隔離、威海でもソウル便の乗客5人が発熱し、全員が隔離された。日本便にも厳しい目が向けられる恐れがある。

韓国政府は「隔離は行き過ぎだ」と批判するが、中国共産党系の新聞「環球時報」の編集長は「今重要なのは国外から感染が入るのを防ぐことだ。日韓は世界で最も重大な感染地で、中国にとって感染流入の防止措置は緊急にやるべきことだ」と主張、社説も「今は、いくつかの感染国が感染を国外に広げるリスクは中国よりはるかに高い。各国は国を挙げ断固として対応すべき」と指摘する。

中国はこれまで世界各国の中国人の入国制限に過剰だと反発していたが、手のひらを返したように自らを守る対策を主張し始めた。

「日本から来たら自主的に14日間隔離を」山東省威海市の住宅(ウエイボより)

「これでは武漢の来た道を辿る」日本政府の方針にも不安の声

日本政府が発表した感染対策の基本方針に、中国では「これでは拡大を防げない」と不安の声がある。特に、軽い症状の人に自宅療養を求めたことは、武漢の状況と似ているとの声がネット上に多数あがる。

「武漢も最初は軽い症状は自宅隔離だった。危険だ」

「軽症者が自宅待機して家族に感染広がった」

「これは賭けだ。軽症が重症にならないと期待するようだ」

日本はなぜ武漢の経験や教訓を生かさないのかという悲鳴すらある。

日本は武漢のようになってしまうのか(ウエイボより)

日本の対応に疑問 “検査しないから感染者数が増えないだけ”

中国人は自らの経験から日本政府の対応遅れを心配する。クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」号の下船者を公共交通機関で帰らせ、帰宅後に陽性の人が出たことなどに驚く。

中国では、徹底した都市封鎖や外出制限、個人情報管理で感染者の隔離と拡大防止を進める。ビッグデータを使い、個人の行動を追跡して武漢から来て報告しなかった人を見つけて隔離したり、デパートで感染者が出た際に過去1週間の来店者10万人を割り出して数百人を隔離したりもした。感染者が出た場所もマンション名までアプリの地図で公開される。

「今いる地区では感染9例が出ていて近いのは●●住宅」感染者が出た場所はアプリで一目瞭然

日本の対応で特に疑問の声が多いのは病院でウイルス検査が受けられない人が相次ぐことだ。

「検査を受けさせないのは危険だ。絶対に感染が広がる」
「ウイルス検査を受けられていないから感染者数が増えていないだけでは?」

ただ「医療体制が早く整うことを願う。医療が崩壊すれば中国のようになる」と

医療現場への過度の負担は逆にマイナスだと指摘する声もある。

人が集まる行事が続くことへの驚きもある。中国では「とにかく集まるな」と企業や学校を休ませ、観光地閉鎖やイベント中止、会食や自宅での家族の麻雀すら許さない徹底的な対応がとられた。

日本で大学入試が行われたことには「距離が近い。こんなに集まるのは信じられない」「免疫力のテストか」「だから日本では追跡できない感染者が出るのでは」などと驚き、天皇誕生日の皇居での祝賀行事が安倍首相ら数百人が参加して行われたことに「天皇は大丈夫なのか」と心配する声があった。

衝撃が走ったのは岡山県で行われたはだか祭で多数の上半身裸の男達が密集する映像だ。「他国の文化を笑う気はないが、こんな時に・・・」「みなさん無事であってほしい」と驚いていた。

岡山県で開催された「はだか祭り」(岡山放送取材)

感染が広がる時期に人が集まることは、感染拡大措置をとる前の1月中旬、武漢で数万人が参加した春節伝統の大宴会「万家宴」が開かれ、感染の爆発的拡大につながったことを教訓にしてほしいという思いがある。

日本政府はようやく大規模イベントの中止自粛要請に乗り出したが、中国のネットでは、「まだ要請か。強制しないと人は言うことを聞かない」「企業や学校も止めて1ヶ月待つべき」「政府の会議参加者がマスクしないと市民に要求出来ないな」という声がある。

「日本では政府の強い対応は無理なんだろうね」と理解する人もいるが、ある中国人には「大変な時には、中国のような強い管理対策があると安心ですよ」と助言された。

中国のような強権的対策をするのは難しいが、これぐらいしないと防げない?

一党独裁の大号令で市民生活を厳しく制限した習近平国家主席

一党独裁の中国では、都市封鎖や外出制限、観光地閉鎖、企業や学校の活動停止、あらゆる場所でのマスクと体温検査など、共産党政権の大号令で市民の行動を厳しく制限した。もともと監視社会で自由が制限され、厳しい規制がしやすい環境ではあるが、対応が遅れたとの批判が出た分、前例のない異例の対策を一気にとった。1ヶ月が過ぎ、湖北省以外では新規感染者ゼロが続く地域も増え、ある程度抑えこんだことは間違いない。「社会主義の優越性が分かった」との声もあった。

中国人は、大地震など災害への対応が素晴らしいはずの日本がなぜ今回は、と驚いているようだ。日本も前例のない対応がとれるのか、中国人も注目している。

もう余裕?マスクなしで集まって談笑する人達(ウエイボより)

ただ、中国人は日本と韓国よしっかり対策しろと心配する割に、みんなで我慢して押さえ込んだという自信からか、もう楽観的になり始めている様子がみられる。上海では街でマスクを外す人が現れ始め、公園には人が増え、北京や杭州などでは観光地が再開され多数の人が押し寄せている。まだこちらも中国の状況に安心は出来ない。

【執筆:FNN上海支局 城戸隆宏 】

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