トランプ大統領、緊急記者会見で「アメリカでの感染リスクは低い」

トランプ大統領は26日、ホワイトハウスで新型コロナウイルスに関する緊急記者会見を開き、新型コロナウイルスに万全の対策を講じていると述べた上で、アメリカでの感染リスクは「非常に低いままだ」と明言した。しかし、アメリカのCDC=疾病対策センターは新型コロナウイルスによる肺炎について世界的流行を意味するパンデミックに近づきつつあるとの認識を示していて、アメリカでの感染者も日増しに増え、26日時点で感染者は合計60人となっている 。

新型コロナウイルスの対策は万全だとアピールするトランプ大統領 2月26日ホワイトハウス記者会見場
新型コロナウイルスの対策は万全だとアピールするトランプ大統領 2月26日ホワイトハウス記者会見場
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トランプ大統領の対策に批判集中

こうした中、トランプ大統領の新型コロナウイルス対策は、野党・民主党から集中攻撃を浴びている。

「自称“偉大な天才”であるトランプ大統領は、このコロナウイルスが2ヶ月以内に終焉すると言った。4月はホワイトハウスにいる“偉大な科学者”が決定した魔法の日らしい。まったく冗談にもほどがある!」

25日に開催された民主党大統領候補によるテレビ討論会では、指名争いでトップを走るバーニー・サンダース上院議員が激しい口調でトランプ大統領の見通しの甘さを攻撃した。トランプ大統領も負けてはいない。ツイッターで即座に反撃した。

「新型コロナウイルスの対策に関して私の政権は素晴らしい働きをしている。民主党は批判しかしない。明日ウイルスが消滅したとしてもトランプ政権は不十分な対応だったと言うだろう」

トランプ大統領は訪問先のインドからわざわざ反論して見せた。敏感な反応の裏には、感染拡大による経済への悪影響を最小限に抑えたいという思惑が見え隠れする。経済の失速はトランプ政権への評価に直結するからだ。

新型コロナウイルスはトランプ大統領にとって「もろ刃の剣」

5営業日連続下落のニューヨーク株式市場
5営業日連続下落のニューヨーク株式市場

鍵を握るのは株価の動向だ。感染拡大を受けてニューヨーク株式市場ではダウ平均株価が5営業日続けて下落し、下げ幅の合計が2000ドルを超えている。

「手持ちの株をすべて売りました。まだまだ下がりますよ」

シンクタンクで国際関係学を研究するエマーソン・ブーキング氏はコロナウイルスによる世界経済低迷のあおりで今後も株価が下がると指摘。大統領選が本格化していく中で、新型コロナウイルスはトランプ政権にとってもろ刃の剣となるとの見方を示した。

つまり、感染拡大を制御することに成功すれば、陣頭指揮を執っているトランプ大統領にとってプラスとなり、再選に向けた追い風となる。一方で、株価の下落に歯止めがかからない状況になれば再選を揺るがす致命的な問題となるというのだ。

「いい例が、弾劾裁判です。弾劾されたアメリカ史上三人目の大統領との汚名を受けながら、トランプ大統領の支持率には全く影響が出ませんでした。これは株価が上がり続け経済が好調だったからです。トランプ大統領の再選と経済は切り離すことはできません。アメリカでの感染拡大で株価の下落が止まらない状況が長期的に続けば、再選への影響は避けられないでしょう」

世界経済をけん引してきたアメリカ経済が低迷すれば、トランプ大統領が誇る「歴史的な低失業率」にも影響が出かねない。新型コロナウイルスはトランプ大統領の再選戦略を狂わせるアキレス腱になる可能性がある。

【執筆:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美】
【動画撮影:フランク・パローンプロデューサー 】

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ダッチャー・藤田水美
ダッチャー・藤田水美

フジテレビ報道局。現在、ジョンズ・ホプキンズ大学大学院(SAIS)で客員研究員として、外交・安全保障、台湾危機などについて研究中。FNNワシントン支局前支局長。