感染拡大のスピード、死亡をどれだけ抑制するかが最大の目標

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、国の専門家会議は2月24日夜に緊急会見を行った。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議・尾身 茂副座長:
1~2週間くらいがクリティカルで、感染があっという間にどんどん拡大してしまうのか、その感染拡大のスピードをある程度抑制できるのか、瀬戸際にある。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議・尾身 茂副座長
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議・尾身 茂副座長
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新型コロナウイルスの感染が相次ぐ中、24日午後9時から行われた国の専門家会議の緊急会見。

国の専門家会議の緊急会見(24日)
国の専門家会議の緊急会見(24日)

この席で、現在の国内の感染状況について、複数の地域で、いつどこで誰から移ったかわからない感染例が報告されており、ここ1~2週間が、感染が急速に拡大するか収束するかの瀬戸際だと強調した。

また、首都圏の医療機関の多くの感染症病床は、集団感染が起きたクルーズ船からの患者の治療のため、すでに利用されている状況にあり、今後、感染を心配した多くの人が医療機関に殺到すると、医療の提供体制が混乱するおそれがあるとしている。

感染を広げないために一般の人ができる対応

こうした状況をふまえ、専門家会議は、感染を広げないために一般の人ができる対応を示した。まず、風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出せず自宅で療養すること。病院が感染が拡大しやすい場所であるとしていて、発熱しているからといって安易に病院に行かないよう求めている。

また、症状のない人も、食事会や飲み会など、対面で人と人との距離が近い接触が会話などで一定以上続き、多くの人々との間で交わされるような環境に行くことはできるだけ避けるようにとしている。そのうえで、教育機関や企業などにも、集会や行事の開催方法の変更やリモートワークなど、できうる限りの工夫を講じるよう協力を求めた。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議・尾身 茂副座長:
一人一人の感染を完全に阻止するということは、この病気ではできません。われわれの最大の目標は、感染の拡大のスピードをどれだけ抑制するかと同時に、今回、多くの人が軽症ですが、中には死亡する方がおられる。この死亡をどうするかということが最大の目標。

これを受け、加藤厚労相は「専門家会合の皆さんからさまざまなご意見をいただきました。いずれにしても、基本方針を固めて、25日、対策本部で決定する」と述べた。

加藤厚労相
加藤厚労相

感染のリスクを抑える正しい知識と行動を

さらなる感染拡大を防ぐことはできるのか。政府の基本方針に盛り込まれる感染のリスクを抑える正しい知識や行動についてポイントをまとめた。

今湊敬樹キャスター:
ここ1~2週間が感染の拡大か収束かという政府の専門家会議のポイントです。まず、風邪や発熱などの軽い症状が出た場合は、外出をせず自宅で療養するようにしてください。ただし、37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合や、強いだるさ、息苦しさがある場合は帰国者・接触者相談センターに相談するようにしてください。

さらに感染リスクの高い場所として、多くの人が手の届くような距離感で向き合って会話する環境を挙げています。

そして気になる感染経路についてです。これまでは飛沫感染や接触感染が主とされてきましたが、咳やくしゃみ無しの至近距離の会話だけでも感染の可能性は否定できないとしています。それは軽症者や症状のない人からも感染するリスクがあるということです。

国民との合意形成「リスクコミュニケーション」が不足

三田友梨佳キャスター:
国民一人一人が正しい知識をもとに冷静に行動することが求められていますが、やはり政府の対応が問われますね。

津田塾大学・萱野 稔人教授:
これまでの政府の対応を見ていると、国民とのリスクコミュニケーションがうまく行っていないと思います。リスクコミュニケーションというのは、感染症のリスクに対してどのように対応していくのかというのを当事者の国民と合意形成をしていくコミュニケーションのこと。

津田塾大学・萱野 稔人教授:
リスクコミュニケーションは3つの要素で出来ていると一般的に言われていて、1つは「情報共有」。
これはできるだけ具体的な情報を迅速に関係者に流す。隠していると思われてしまうと良くない。

環境」というのは、感染症が広がるリスクのあるところはどういう環境で、どんな環境にすればリスクを抑えられるのかそういったことを国民に提供していく。国民が何が出来るかを示すということ。テレワークの推進もここに含まれます。

それから「対応策」については、具体的な対応策を示すことも必要ですが、さらに大事なのは「なぜそういった対応策をとるのか。何を獲得目標にしてこの対応策をとるのか」という説明。これらがしっかり成されることによって初めて信頼関係の醸成が成されます。国民も一緒になってリスク対応をしなくてはいけないので、国民との信頼関係がやはり基礎になります。今回の基本方針は、遅きに失したなという気はしますが、リスクコミュニケーションの第一歩ではあります。今後これを元にして国民との信頼関係を醸成しながら国一体となって感染症に対するリスク対応をしていって欲しいと思います。

萱野 稔人教授
萱野 稔人教授

三田友梨佳キャスター:
政府の基本方針は25日発表されますが、検査態勢の早急な整備と共に在宅勤務やイベント開催の可否などを企業や開催者任せにするのではなく、政府としてより明確な対策を講じて欲しいと思います。

(「Live News α」2月24日放送分)