「大きなハプニングにプレッシャーを感じていた」

世界卓球での日本女子チームの活躍は素晴らしいの一言に尽きる。
中でも対日本戦直前に韓国と北朝鮮が結成した合同チーム「コリア」との対戦は注目を集め、特にリオ五輪で敗れた北朝鮮のキム・ソンイ選手をフルゲームの死闘の末破った石川選手の戦いぶりは劇的だった。

しかしここで取り上げたいのは戦いぶりではなく、「コリア」に勝利した後の石川選手のコメントだ。
決勝進出を決めた後のインタビューで石川選手は涙を流しながら「大きなハプニングがあって、予想しなかったチーム編成で戦うことになって、プレッシャーは感じていた。みんなで乗り越えることができてホッとした」と語った。

南北合同チームの結成は「ルールを超えた出来事」

「大きなハプニング」「プレッシャー」とは、言うまでもなく突然の「コリア」結成だ。
本来なら韓国と北朝鮮が闘うはずの5月3日の朝、女子決勝トーナメント準々決勝は突如無くなり、「コリア」結成が高らかに発表され、準決勝に進んだ日本はその合同チームと戦うことになった。

国際卓球連盟はその経緯を「前夜に南北朝鮮の代表者から申し出があり、連盟も交えた3者協議と、日本も含めた決勝トーナメントに進出したすべての国の同意を得た」と説明するが、連盟のバイカート会長は「今回の事はルールを超えた出来事」とも説明した。

それですべて納得できるのか?
石川選手の勝利は単なる美談で済まされる話ではない。
合同チーム結成を決めた韓国、北朝鮮の経緯と、国際卓球連盟の判断は検証すべきものではないか?

さらに言えば、3位決定戦がない世界卓球においては、合同チームの結成により韓国と北朝鮮は準々決勝を戦わずにメダルが確定することにもなった。

「政治とスポーツ」の関係性を検証すべき

卓球における南北合同チームは今回が初めてではない。

1991年に千葉で開かれた世界卓球にも合同チームが参加したが、それは大会前の結成だったし、その調整に当たった当時の国際卓球連盟会長荻村伊智朗氏は「スポーツが求められているのは政治からの自立。スポーツの本質を曲げずに政治が歩み寄りやすい場を設定する事がスポーツの側にいる人間の力量」と語っている。

バイカート会長は今回の決定をどう説明するのか?
「荻村イズム」の延長線上にあると言うのだろうか?

今回の判断が「政治から自立」していたのか、そして「スポーツの本質」を曲げていなかったのか。
今年年頭の北朝鮮キム委員長の所感に始まりここまで一気に進んできた南北融和の流れに感じる「違和感」を胸にしながら、少なくとも我々は2020年東京五輪に向けて、「政治とスポーツ」の関係性をしっかり再検証すべきではないか。

(FNN PRIME EVENING キャスター 反町 理)