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4月10日、世界で初めて撮影に成功したブラックホールの映像が発表された。

国立天文台 本間希樹教授
これは人類が初めて目にしたブラックホールの姿です!!たった1枚の写真ですが、アインシュタインの相対性理論以来100年、ブラックホールを視覚的に証明するものでございます

ブラックホールの世界初の観測を可能にしたのはまさに地球規模のビッグプロジェクトだった。
用いられたのはチリ、アメリカ、メキシコ、スペイン、南極にある合計8つの巨大電波望遠鏡。これらの望遠鏡が2017年の春、今回ブラックホールが確認されたM87銀河に一斉に向けられた。

8つの電波望遠鏡はいわば地球サイズの超巨大望遠鏡の役割を果たし、延べ5日間の観測の結果ブラックホールの真の姿を初めて捉えることに成功したのだ。

今回の成果は宇宙の始まりの解明にもつながる。画期的なもので早くもノーベル賞級と称賛する声が上がっている…。聞けば"凄い!"ということは分かっても頭の中は???がいっぱい。

そこでLive News it!では今回のプロジェクトで日本の研究者の代表を務めた国立天文台教授の本間希樹さんにスタジオにお越しいただき、今回の発表の何がすごいのか聞いてみた。

思いを熱く語った国立天文台の本間教授ってどんな人?

まずは、本間教授のプロフィールを伺った。
本間希樹(ほんま まれき)教授は47歳。生まれた時に両親が留学していた関係で、アメリカのテキサス州の出身。

テキサスというと、ヒューストンに宇宙センターなどがあり、その影響が今の研究につながったのかと思いきや…小さい時に帰国したので、まったく関係はないという。

その後、東京大学理学部天文学科を卒業したのち、現在、岩手県にある国立天文台の教授をしているという。
2女1男のパパで現在単身赴任中とのこと。クラシック音楽の鑑賞が趣味の本間教授。

今回のブラックホール写真の何が凄い?

まずはブラックホールとは何なのか?本間教授に聞いてみた。

国立天文台 本間希樹教授:
ブラックホールっていうのは例えば星が燃え尽きて潰れちゃってできるんですね。 星がなくなるときに現れるもの。ただ、昨日、発表した写真は、ものすごい大きなブラックホールなので普通の星が燃え尽きたあとにできるブラックホールを更にどんどんくっつけて大きなブラックホールにするとあれぐらいの大きさになる。ここに書いてあるとおり太陽の65億倍の重さになるんですけど…

国立天文台 本間希樹教授:
今回発表されたオレンジ色の縁の部分、ここに見えているのはブラックホールの表面すれすれを光がぐるぐる巻きついているんですね。ブラックホールというのは周りの時間と空間を歪めるので光が真っすぐ進まなくなって巻きついて光の衣をまとうんですけど。ちょうどドーナツのように光ってる部分がブラックホールに巻き付いた光を表しているんです。僕らが観測したのは電波を使って観測しましたので目で見えるような色が実際に観測されるわけではないんですが、こういう色をつけているんです

国立天文台 本間希樹教授:
写真の上と下でもかなり色が違うのは多分ブラックホールの周りをガスが回っていて、そのガスの回転の向きによって明るいとこと暗いところができているのだと思います。そしてこの中心の黒い部分が一番大事で、ブラックホールというのは重力が強くて光が出てこない。暗黒の天体といわれるわけですけれども、まさに黒い部分がブラックホールから光が出てこないということを見た目で表しています

本間教授曰く、目に見えないブラックホールを証明することは、難しかったということだ。

人間の視力は1.0…8つの電波望遠鏡の視力はその300万倍

今回ブラックホールが観測されたM87銀河。
世界各国の8つの望遠鏡を集めて観測したが、人間の視力に例えるとどれくらいになるのだろうか?

通常、人間の視力検査ではCの字見て1.0とか2.0とかやっている。
しかし、8つの望遠鏡は、なんと視力300万!

地球から見て月に置かれたゴルフボールが見えるくらいのイメージだという。
視力検査で見ているCの字を300万分の1にしてもまだ見えますというくらい凄い望遠鏡なのだそう。

今回の撮影で何が分かったのかというと、ブラックホールの存在が今まで理論上「あるだろう」ということだったのが、初めて「実在」が証明されたこと。もう1つは銀河の起源、進化の解明の鍵になるのではないかということだ。

ブラックホールに人が吸い込まれるとどうなる?

ブラックホールにまつわる疑問を町の人にも聞いてみた…

質問1
ブラックホールは人を吸い込んだりするんですか?

国立天文台 本間希樹教授:
ブラックホールに普通に引っ張られると、自然に落ちて中に入ることができます。ただし、ブラックホールのすごい強い重力によって、例えば僕らが足元からブラックホールに落ちていくと縦にものすごい力で引き伸ばされます。たぶん、伸びてバラバラになってブラックホールに落ちていくという現象になります

今回の観測にかかった費用は?

質問2
今回の観測にかかった費用はどれくらい?

国立天文台 本間希樹教授:
リアルですね…研究装置はお金がかかります。まず世界6か所8台の望遠鏡の建設費で2000億円以上のお金が使われました。この建設費は、各国がそれぞれの望遠鏡のためにつけた予算なので、更に僕らはそれを1つにまとめるためのお金がプラスアルファでかかっています。数十億円ですけど、それで今回の観測をやっているということになります

最後に、アインシュタインの相対性理論から100年の時を経て、今回の写真が撮影されたことの意義を本間教授に聞いてみた。

国立天文台 本間希樹教授:
アインシュタインが100年前にこれを予言していて100年かけて僕ら研究者がやっと撮ったわけですけど、そしたらアインシュタインの予想どおりだったんですね。だから何もアインシュタインは間違っていない。少なくともこれを見る限りではアインシュタインやっぱり正しいんだ。本当に100年間経ってもまだ揺らがない…すごいですよね

(「Live News it!」4月11日放送分より)