プレスリリース配信元:TDB

大手から準大手・中小監査法人への異動が顕著に

上場企業は業績を確定するにあたって各社の会計監査人(監査法人)の監査を経ているが、問題を抱える企業は監査法人との意見対立などから異動回数が多い傾向がうかがえ、上場企業の動向を確認するうえで、監査法人との関係は重要視されている。


<調査結果(要旨)>

2021年上半期(1月~6月)に会計監査人(監査法人)の異動に関する適時開示を行った上場企業は173社となり、前年同期(111社)比で55.9%増となった
市場別では「東証1部」(58社、構成比33.5%)が最多となり、以下、「ジャスダック」(52社、同30.1%)、「東証2部」(28社、同16.2%)が続いた
就任した社数が最も多かったのは「太陽有限責任監査法人」、退任した社数が最も多かったのは「EY新日本有限責任監査法人」
規模別異動動向では「大手」から「中小」が73社(構成比42.2%)で最多
異動理由別では「事業規模に適した監査対応」が139社(構成比80.3%)で最多

<調査対象>
■2021年上半期に「監査法人」「会計監査人」「公認会計士」のいずれかのキーワードをタイトルに含めた異動に関する適時開示を行った国内上場企業を対象とした<上場投資信託(ETF)の適時開示は調査対象から除外>
■1.退任(予定)会計監査人名、2.就任(予定)会計監査人名(または一時会計監査人名)、3.異動日(予定日)の3点が記載された適時開示が行われた時点でカウント(もしくは同3点が判明した時点でカウント)
■異動日以降に上場廃止となった企業もカウントの対象とした。
※2020年1月と2月に異動を発表した(株)アルファクス・フード・システム(ジャスダック)は2回(2社として)カウントした
■EY新日本有限責任監査法人、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwCあらた有限責任監査法人の4法人を「大手監査法人」、仰星監査法人、PwC京都監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人、東陽監査法人の5法人を「準大手監査法人」とし、それ以外を「中小監査法人」とした。


2021年は上半期で173社が異動を発表
2021年上半期に会計監査人(以下、監査法人)の異動に関する適時開示を行った国内上場企業は173社となり、前年同期(2020年上半期=111社)比で62社増加(55.9%増)した。
監査法人の異動を発表した上場企業の推移
また、異動日(予定日)を月別で見ると、「6月」が111社(構成比64.2%)で最多となったが、これは3月決算の会社が多くを占めるなか、特殊要因がない場合(任期満了の場合)、各社は定時株主総会開催日を異動日とするためと見られる。

「東証1部」が58社で最多
173社を市場別に見ると、「東証1部」が58社(構成比33.5%)で最多。以下、「ジャスダック」(52社、同30.1%)、「東証2部」(28社、同16.2%)、「東証マザーズ」(26社、同15.0%)と続き、東証が開設する5つの株式市場で全体の95.4%を占めた。
市場別
就任は中小・準大手が、退任は大手が目立つ
173社の新たに就任した監査法人を見ると、「太陽有限責任監査法人」が20社で最多。以下、監査法人元和(2021年6月30日総社員の同意により解散)から多くのクライアントを引き継いだ「城南公認会計士共同事務所」、「有限責任あずさ監査法人」(各8社)、「仰星監査法人」(7社)と続いた。

一方、退任した監査法人を見ると、「EY新日本有限責任監査法人」が51社で最多。以下、「有限責任監査法人トーマツ」(46社)、「有限責任あずさ監査法人」(18社)、「監査法人元和」(10社)と続き、4大監査法人と呼ばれる大手監査法人が、退任数上位5法人のうち、4法人を占めた。なお、「監査法人元和」は「当社の監査を担当してきた主たる公認会計士らが近く脱退するため」として2021年5月にそれまでのクライアントが一斉に監査法人の異動を発表していた経緯がある。
監査法人就任・退任数
大手から中小へ異動が顕著

 規模別異動動向
173社の監査法人の異動を事務所の規模別で見ると、「大手」から「中小」への異動が73社(構成比42.2%)で最多。以下、「中小」から「中小」が37社(構成比21.4%)、「大手」から「準大手」が32社(構成比18.5%)と続き、大手監査法人から準大手・中小監査法人への異動傾向が目立っている。

大手監査法人が退任するなかには、監査環境の変化等を理由に、監査報酬増額が必要となる旨の見解を示しているケースが散見された。


「事業規模・監査機関に即した監査対応」が140社で最多
173社を見ると、任期満了に伴う異動と発表した企業が164社(構成比94.8%)を占めた。また、173社がどのような理由で異動を発表することになったかを調べると左表のようになった。
異動理由
「事業規模・監査機関に即した監査対応」が139社と最多で、構成比80.3%を占めた。監査継続年数が長期にわたることや、事業規模拡大に伴う監査範囲の広がりを考慮した結果のほか、コロナ禍において業績が厳しいなか、企業の事業規模に応じた水準を検討し、監査報酬の減額をした結果が散見される。

それ以外の異動理由には「今後の会計監査が困難」(15社、構成比8.7%)、や、「関係悪化」(4社、同2.3%)などがあり、企業と監査法人の間で見解の相違や何らかの問題が生じているケースも見られ、新しく就任した監査法人との関係や業績監査への影響などが注目される。

事業規模・監査機関に即した監査対応 事業拡大・縮小に伴う異動のほか、継続年数が長期にわたる、監査報酬の見直し、等の理由を起因とする異動
今後の会計監査が困難 監査法人の人員不足等により、今後の監査対応が困難となった
親会社と統一化 親会社や筆頭株主と同一の監査法人にすることで統一化、効率化を図る
監査工数の増加 監査工数の増加を理由に監査報酬の増額要請をされ契約を辞退するか、契約を辞退される
関係悪化 見解の相違や協力的でないなど、相互理解にいたらず信頼関係が悪化
審査会から金融庁に勧告 公認会計士・監査審査会から金融庁長官に対し、監査法人について勧告があった



監査品質の向上および十分な監査人員の確保が求められる
2021年に監査法人の異動を発表した上場企業は、6月までに173社と前年同期(111社)を大きく上回った。2015年の東芝の不適切会計問題をきっかけに監査の厳格化が求められるようになったことに加え、リスク情報の開示など開示拡充による監査作業負担の増加に伴い、昨今、監査費用は増加基調で推移している。しかしその一方で、コロナ禍において企業業績が悪化した企業が増えたことで、事業規模に応じ、監査費用を抑えたい企業側の意向により、大手から中小規模への異動が多くみられた。

上場企業において、コンプライアンス順守や情報開示の透明性がより強く求められるなか、監査法人が果たす役割も重要性が増している。上場企業の不適切会計が後を絶たぬなか、大手から中小に至るまで、事務所の規模を問わず、今後、更なる監査品質の向上および十分な監査人員の確保が求められるものとみられる。

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