前回の都議選は都民ファーストの会(以下都ファ)で当選、その後都ファを離党して無所属として今回2期目の選挙を戦い当選した森澤恭子さん。一時は「絶対当選は無理」と言われた森澤さんが選挙戦の中で見た新しい風とは?初当選から森澤さんを追いかけている筆者の“定点観測”インタビュー第3弾。

政治に行動を起こそうという女性が増えた

――定数4の品川区で2位の当選でしたね。おめでとうございます。

森澤さん:
ありがとうございます。今回無所属で立候補するにあたっては、事前の世論調査等でも厳しい数字が出ていました。ただ選挙が始まると、私と同世代の人たちがビラを受け取ってくれるなど少しずつ関心が高まっているとは感じていました。

――今回は都ファの大旋風が巻き起こった前回に比べて都民の関心も低かったと思います。選挙戦は前回と比べてどうでしたか?

森澤さん:
確かに前回は都議選に対する世間の関心が高かったとは思いますが、今回の方が街頭活動中に政策について聞かれたり、メールやSNSで質問やご意見を頂くことが多かったように思います。

選挙前から感じていたのは、2月頃から政治に対して何か行動を起こさなければいけないという女性が増えているということでした。

森澤恭子都議にオンラインでインタビュー
森澤恭子都議にオンラインでインタビュー
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同世代の女性から「私も頑張るので頑張って」

――2月というとちょうど森氏の“女性蔑視発言”があった頃ですね。

森澤さん:
そうです。私自身もその発言を受けて会派の幹事長に就任しました。政治も意思決定層に女性が増える必要があると考えたからです。

選挙期間中同世代の女性から「私も頑張るので森澤さんも政治の世界で頑張ってください」と声をかけられることが何度かありました。ボランティアに来てくれていた子育てママたちも「森澤さんを応援することで少しでも政治を変えられたら」と手伝ってくれました。

あの発言で、世の中の空気が変わりましたね。「これまでは黙ってやり過ごしていたけど、それではいけない!」と気づき行動する女性が増えたと思います。

――選挙期間中過労で入院していた小池都知事が、選挙最終日に都ファの応援に駆けつけたのが話題になりました。森澤さんの選挙戦には何か影響ありましたか?

森澤さん:
前回都ファから立候補していたことを覚えている人たちから「今回なぜ無所属なのですか?」と声をかけられました。「4年前に期待された“ふるい議会を新しくする”初心を貫き、無所属で新しい政治を実現していきたい」とお答えすると納得頂きました。2年半前に書いた離党時のブログへのアクセスも投票日直前に増えました。私に対して既存の政党とは違う政治をやってほしいという期待があったように思います。

「今回なぜ無所蔵なのですか?」と声をかけられた
「今回なぜ無所蔵なのですか?」と声をかけられた

子育てしながら可能な選挙活動を目指した

――それはどのような場面で感じたのでしょう?

森澤さん:
街頭で「今まで自民党支持だったけど今回は自民党ではなくあなたに投票する」といわれたことが何度かありました。

たとえば、私のチラシを見て、「個別の政策では賛同できないものがあるけれど、今回は目をつぶって森澤さんに投票しようと思う」と。国政政党に不満がある人たちの受け皿の一部になった部分はあると思います。

――国政では野党がなかなか受け皿になれていませんね。

森澤さん:
今の政治に不満をもっているけれど、投票先がないと感じている人は多いと思います。であれば、自分たちの仲間から代表を政治に送り出していくことも選択肢のひとつとして考えるべきだと思うんですよね。そのような問題意識から、今回の選挙で私のように子育てしながらでも可能な選挙活動を目指しました。その姿を見て、一人でも一歩を踏み出してくれたら嬉しいと思っています。

「私のように子育てしながらでも可能な選挙活動を目指しました」
「私のように子育てしながらでも可能な選挙活動を目指しました」

女性や多様な人材が政治に参画する環境を

――とはいえ国政では現職議員が引退しても世襲が行われたり、普通の人が政治に出るチャンスはなかなか生まれませんね。

森澤さん:
新しく入る機会がないですよね。現職議員の引退後に公募したとしても選ばれるのは世襲か関係者で、そうなると結果的に男性が多い。“24時間戦えますか?”を期待される環境を変えていかないと、女性だけでなく多様な人材が参画するのは難しいです。少しずつでもそういった問題提起をしていきたいと思っています。

――今回の選挙、ご家族はどうでしたか?

森澤さん:
私自身無理をしない選挙を心がけましたが、それに加え前回同様夫は会社を休んで手伝ってくれましたし、弟や両親も協力してくれました。そのため私のストレスも少なかったです。子どもたちも「落選したらずっとおうちにいるんでしょ」とすごくポジティブにとらえてくれていたようです(笑)

――(笑)でもお母さんが当選して、お子さんたちはもっと喜んでいるでしょうね。ありがとうございました。

「女性だけでなく多様な人材が参画するのは難しいです。少しずつでも問題提起をしていきたいと思っています」
「女性だけでなく多様な人材が参画するのは難しいです。少しずつでも問題提起をしていきたいと思っています」

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【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。