「サービスを受ける側、する側、ともに尊重される社会」を目指したい

客による悪質なクレームなどの迷惑行為「カスタマーハラスメント」は今、新型コロナに関連して増えている。

7月4日、三重県津市のスーパーを訪れた60歳の男。アジフライなど総菜3点、920円相当を持ちレジへ行くと、数人が並んでいた。すると男は店員に対し「先に精算させろ」と言いがかりをつけた。

店員が断ると、男は商品を持ったまま支払いをせず店を出た。副店長が呼び止めたところ、左腕を殴る暴行を加え、駆け付けた警察官に取り押さえられて逮捕に至った。

男は「総菜を盗んだことは間違いないが、店員を殴ってはいない。突き飛ばしただけ」と容疑を一部否認している。男は当時、数千円の所持金があったということだ。

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こうした客による悪質なクレームなどの「カスタマーハラスメント」、通称「カスハラ」が今増えている。

小売やサービス業・製造業などの労働組合でつくる「UAゼンセン」が2020年、組合員に行ったアンケートでは、半数以上の56.7%が2年以内に「迷惑行為の被害にあった」と答えた。

組合員が受けた具体的なカスハラのケースでは…

・スーパーで、半額シールが付いた最後のお弁当を客が過失で落として販売不可能になったが、「他の商品を半額にしろ」などと店内で騒がれた。

・外食業で、支払いに現金しか使えないと伝えると「使えないなら最初に言え」と急に怒鳴られた。

・外食業で、会計の際にお金を投げて渡された。

・百貨店で、洋服の直しをしたが、半年経っても受け取りに来ないので配送したところ、「キツイ、入らない。太って着られなくなった服は要らない」と電話でクレームを受けた。

今、特に労働現場を悩ませているのは、新型コロナの影響とみられるカスハラで、5人に1人が被害を受けたという。

具体的なケースでは…

・専門店で、レジの前にビニールカーテンがしてあるため、「声が聞き取りづらい」と怒る人がいて、1日に何度も言われると耐えがたい。

・スーパーで、「遠くから来たのにマスクがない!」と叱責され続けた。

・外食業で、都道府県が指定したアルコールの提供時間を伝えるも、理解されずに閉店までクレームを受けた。

・外食業で、マスクの着用をお願いすると「態度が高圧的」と言われた。

こうしたカスハラに対し、「対策を特にしていない」と答えた店が43%と、現場の労働者が困難な対応を強いられているのが現状だ。

UAゼンセンで悪質クレームなどの対応をしている波岸さんは、「昔に比べて、レベルが高いサービスが当たり前になっていて、少しでも不満があるとイライラが爆発してしまう人もいる。お客様にもゆとりのある買い物をしてもらったり、組織がマニュアルを作ったりして、『サービスを受ける側、する側、ともに尊重される社会』を目指したい」と話している。

(東海テレビ)

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