コロナ禍でマスクを着用した生活が続いている。顔の多くがマスクで覆われ隠れる中、それが「言語の発達など子どもの成長の遅れにつながっているのでは?」と、懸念の声が上がっている。

続くマスク生活 子どもを預かる保育園の奮闘

広島市内の保育園。新型コロナウイルスの感染拡大以降、保育士がマスクを着けて保育するのは日常となった。

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保育士:
最初はすごく、このマスクというのが子どもに対して恐怖心を与えるのではないかなとか、自分たちも接する中で、目の表情とか声のトーンだったりとか、声色だったりとかで気持ちを伝えるのに努力して、職員もどうしていったらいいのかねというので

こちらの園では、絵本を読むときと食事のときだけ、口元が見える透明なマスクを使うなど工夫している。

絵本を読むときと食事のときのみ、透明のマスクを着ける
絵本を読むときと食事のときのみ、透明のマスクを着ける

保育士:
目を合わせるであるとか、ぬくもりを感じながらというところは大事にしているので、伝わる保育を心がけています。ペープサートであったりとか、表情が伝わるものを作ったりだとか、子どもが思わずにこって笑えるような保育の材料、素材であったりというのも用意したり、努力はしています

子どもに笑ってもらえるように
子どもに笑ってもらえるように

マスク着用で「乳児の反応が乏しくなった」63%

マスクによる子どもの発達への影響。それを感じている保育士は決して少なくはない。

広島県内の保育士約200人を対象に2020年に行われた調査では、保育士のマスク着用で、乳児クラスに何らかの変化を感じている人は約65%にのぼった。

マスク着用による子どもたちの変化
マスク着用による子どもたちの変化

具体的には「反応が乏しくなった」が一番多く、63%。

「反応が乏しくなった」63%
「反応が乏しくなった」63%

調査を行った比治山大学の七木田教授は、次のように説明する。

比治山大学短期大学幼児教育科 七木田方美教授:
言葉の遅れを感じるとか、食べているときに、ごっくんと飲み込むそしゃくが下手になった子どもが多いとか、保育者が声をかけても、どちらから声をかけているかわからないのでキョロキョロするとか、方向がわからない。保育士さんたちが、どうやったらいい保育ができるかなと試行錯誤されているというのが、一番見えてきたことです

子どもの脳は外からの刺激を受けて育つ

これは、小さな子どもを抱えるお母さんたちも感じていることだった。

7カ月の子どもの母親:
口元から伝わることもあると思う。そういうのも伝わらないので、子どもの成長にどういう影響があるのかというのは気になります

11カ月の子どもの母親:
初めて会った方とかには、目しか見ていないと「この人、笑っているのかな」というのが読み取れないみたいで、人見知りが結構早い段階から始まったのがちょっと心配だったんですけど

マスクで口元と表情が見えないとどうなるのか?

比治山大学短期大学幼児教育科 七木田方美教授:
子どもは、赤ちゃんのときは、ママの表情を見ながらお口をこうやって動かしたら声が出ているなとか、そういうことを見ながら大きくなっていきます。もし、ママがずっとマスクをかけた状態のままで大きくなっていったとしたら、子どもは口元を見ないので、言葉を上手に口をどう動かしていいかわからない。10歳ぐらいになるまでは脳が一番発達するときで、外からの刺激をいっぱい受けながら脳を育てていく段階です

10歳ぐらいまでは脳が一番発達するとき
10歳ぐらいまでは脳が一番発達するとき

比治山大学短期大学幼児教育科 七木田方美教授:
目も見ながら脳を育てているので、外のいろいろなものを見ながら見る力を育てていく。耳もそうで、脳が育っていって、ようやく小学校になってお勉強ができる体が整うという、そういう時期なので。外に出られないとか、マスクをかけたママや先生たちがお話をして、どこから話しているのか分からないとか、そうした状況の中で発達に影響は確実にあると思います

 
 

コロナ禍のマスク生活 赤ちゃんのためにできること

では、どんな対処があるのか。七木田教授は、コロナ禍でもあえて親子が触れあう場を作っている。

比治山大学短期大付属幼稚園
比治山大学短期大付属幼稚園

比治山大学短期大学幼児教育科 七木田方美教授:
とにかくママが楽しいという場面をたくさん作っていくことが、一番大事なことだと思います。楽しいときって、全身で楽しいってなりますよね。そしたら、声だったらトーンが高くなったり、うれしいときってつい「わぁ、うれしい~!」ってなる。その感情の抑揚を子どもが感じられるような生活を意識してなさるといいと思います

マスク保育で奮闘する保育園。コロナ禍では、より家庭との連携が欠かせないという。

比治山大学短期大学幼児教育科 七木田方美教授:
どの園も、先生たちが自分たちが感染経路になってはいけないと思って、マスクをしながら必死に頑張っていらっしゃる。家庭でどこまで補うか、ついつい外に出られないのでゲーム機を与えるとか、電子音のものを与えるとかしてしまいがちですけれど、それは子どもへの刺激としては強すぎます。休日は親子ともマスクを外せるような、公園などに出かけて行ったらいいんじゃないかなと。それが一番大事なことだと思います

大切なのは家庭でのフォロー
大切なのは家庭でのフォロー

さらに七木田方美教授は、赤ちゃんには「エントレインメント(=共鳴動作)」というものがあり、「お母さんが笑うと赤ちゃんも笑う」「お母さんが驚くと赤ちゃんも驚く」という現象があるため、「ママが楽しいという感情を出すことが大切」と話す。

そのためには、次の2つのことが有効だという。

1つは「感情を出せるグッズや場面を用意する」。例えば、子ども番組を一緒に見たり、絵本をツールとして使うのも手だ。

2つ目は「そしゃく・えんげの練習をする」こと。噛む、飲み込むという動作がマスクで見えにくいので、しっかりそれをマネできるように。そうしないと、発音に影響が出てしまうという。

 
 

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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