認知症介護のイノベーション

 「おぼえている手帳」は認知症介護におけるイノベーションである。

 発案者である私はそう考えています。


 その理由はひとつ。

 記憶が持てるからです。

 認知症にはさまざまな症状が現れます。

 そのひとつが記憶の保持が難しくなることです。


 これは、脳の中で記憶を司る部位である海馬の働きが悪くなることだと言われています。それゆえに認知症の人は、記憶の保持がむずかしい。まったくおぼえていない場合もあれば、多少は覚えていることもある様です。これは、状況や相手、その有無などにもよります。

 ともあれ、おしなべて海馬の働きが衰えています。それゆえ、自身が経験した出来事に関する記憶がないのです。

物忘れと認知症の違い

 よく言われるのが、物忘れと認知症の違いです。

 物忘れは、昨日の夕食の内容がおもいだせない。

 認知症による記憶の障害では、昨日の夕食を食べたこと自体を記憶として持っていないそうです。そして、これをどうにかしようと考えたのが「おぼえている手帳」です。

 やり方は単純で文字と写真で記録をする。

 それを蓄積する。

 そして見直す。

 そのための専用のツールとして開発をしようと考えました。そしてまずは既製品で試してみました。

最初はシステム手帳で

 「おぼえている手帳」の開発に際しては、ほかならぬ開発者自身の肉親が認知症になったことが大きなきっかけとしてあります。

 そのときに、写真を撮り、記録をつけることを思いついたのです。

 最初はこれをシステム手帳でやろうと思いました。

 そして実際にやってみたところ、うまくいきませんでした。

 システム手帳は、ページが左開きです。表紙を左に開くようになっています。

 そして、昭和一桁生まれの高齢者の場合、こういうタイプのノートだと、表紙がどちらかわかりません。右開きの縦書きのノートが普通のものとして、身体感覚に染みついているからです。

 もちろん、健常なユーザーならば、ノートの開き方がどうであろうと、関係はないでしょう。それぞれのノートなりの開き方をすることができるからです。

 そして認知症の高齢者の場合は、特定のツールを扱う場合、自分が知っている方法で扱おうとするのです。

縦書き、右開きのノートでテスト

 そこで、市販の縦書き、右開きのノートを使おうと思い立ちました。実際に使ってみると具合が良かったです。

 当事者たる認知症の高齢者の方に無理なく使ってもらえる道具であること。それが重要なのだと実感しました。

記録を記憶の代わりに

 以後はことあるごとに、記録を本人の直筆でしてもらいました。またその姿や周辺の写真を撮り、プリンターで印刷して冊子の中にセットで保存しました。

 これをずっとくりかえしていったのです。

 すると、記憶を持つことがむずかしかった本人も、冊子を見直して過去を振り返ることができるようになりました。

 記憶にはなくても、そこには自分の書いた字があり、また自分の写った写真がある。

 これは紛れもない自分の過去の姿である。

 それまでは、記憶の保持が難しかった過去の自分のことを、写真と自分の文字で確認ができるのです。

 どうやらそのことで、本人は安心しているらしい。また、その後、広くテストをして複数人の方に同じ効能を実感してもらうこともできました。それはこちらのストーリーに紹介しました


認知症介護のイノベーションへ

 「おぼえている手帳」はまぎれもなく、認知症介護のイノベーションだと思います。

 記憶の保持が難しくても、写真と文字で記録することで記憶の代わりになる。

 ちょっと考えれば当たり前に思えても、いままで誰も体系化してこなかったこのノウハウを、全国の認知症の当事者の方とそのご家族に是非とも経験していただきたいと考えています。


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