あの人気声優がアンバサダー就任!
この記事の画像(10枚)政府が進める政策、クールジャパンのアンバサダーに、声優で女優としても活躍している平野綾さんが、9月9日、任命された。
平野さんは人気アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の涼宮ハルヒ役で活躍し、海外でも知名度が高く人気もあることから、今回、白羽の矢が立った。アンバサダーには、これまで多くの人が選ばれてきたが、エンターテインメントの分野から選出されたのは平野さんが初めてである。
平井クールジャパン戦略担当大臣(当時)から任命状を渡された平野さんは、「責任を持って積極的に文化の普及に取り組みたい」とのコメントを発表し、意欲を示した。
同じく声優で、人気アニメ「ポケットモンスター」で主人公のサトシ役を演じている松本梨香さんも、10月1日付でアンバサダーに任命され、任命式が10月21日に行われた。松本さんは「和の文化や日本人の思いやり精神を海外に伝えていきたい」と抱負を述べた。
2人の人気声優をアンバサダー起用し、政府は、クールジャパンのさらなる普及・啓発を狙う。
クールジャパン政策の課題
クールジャパンは、世界中から「クール=かっこいい」と思われる日本の魅力を世界に発信して、日本ファンを増やしていこうという取り組みだ。
クールジャパンについて、政府は次のように説明している。
「クールジャパンとは、世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の「魅力」である。
クールジャパンは「食」、「アニメ」、「ポップカルチャー」、「新幹線」、「伝統工芸」、「有名観光地」など日本人が典型的に思い浮かべる魅力に限られるものではない。「渋谷のスクランブル交差点」、「弁当箱」、「部活」、「路地裏の風景」まで、日本人がクールとは捉えないものであっても、世界の人々からクールと捉えられるものはクールジャパンである」(「クールジャパン戦略」より)
クールジャパンについて内閣府の担当者は「個別にこれとは考えていない。頭をやわらかくと考えている」と語る。
外国人に人気のあるゲーム、アニメ、マンガ、音楽といったポップカルチャーだけでなく、伝統的な「食」、それぞれの地域でしかできない「体験」なども海外に売り出そうとしている。ジャンルを問わず幅広い分野を想定した“多様性”が、現在のクールジャパン戦略だという。
しかし、クールジャパン戦略は、様々な省庁にまたがる取組みゆえ、利害が必ずしも一致しない。
例えば、インバウンドを増やしたい外務省に対し、既存の文化財を守りたい文化庁。外務省が、外国人が観光しやすくするため、観光施設の入場時間の延長を求めるのに対し、文化庁は、来場者が増えれば、ゴミの問題や景観に影響を及ぼすと懸念を示す。
各省庁の思惑を乗り越え、クールジャパンの戦略を共有できるかが成功の鍵となる。
クールジャパン大臣が誕生したが・・・
2012年、第2次安倍内閣の発足とともに、クールジャパン戦略担当大臣が誕生した。そして、初代大臣に稲田朋美氏が就任した。稲田氏のゴスロリファッションが記憶に残っている方も多いと思う。
各省庁の思惑の違いを大臣が調整し、政府としての統一戦略を打ち出そうというのだ。
ただ、その後も、歴代内閣でクールジャパン戦略担当大臣が任命されているが、一体どういう仕事をしているのか、なかなか見えにくいのが実情だ。
そこで、9月まで大臣だった平井卓也氏に、クールジャパン大臣について聞いてみた。
平井前大臣が語るクールジャパン
「日本のソフトパワーを強化することが、国家としてのクールジャパンの一番の大義だ。世界との関係、日本への共感は非常に重要だ」とクールジャパンの意義を強調する平井氏。大臣としてやってきたことについて、次のように語った。
「クールジャパンは、いろんな形で動いてきたけれども、成功したもの、失敗したもの、いろいろあった。時代が変わったので、まず戦略を足元から全部見直そうということで、その時に、日本人の有識者だけでやっちゃ駄目だということで、海外の方々をもずいぶんその委員に加え、短期間に集中していろんな議論をしてもらった。」
そして、政府は、9月3日、新たな「クールジャパン戦略」を決定した。地方自治体や企業などが参加しやすいようSNSを活用するなど、新しい方針が盛り込まれた。
また、関係省庁の連携強化のため、クールジャパン戦略担当大臣を議長とした、関係各省の戦略会議を新設されることも決まった。
「内閣府は正直言って、大した予算も持ってない事務局機能だけだが、一方で、世の中の話題になっているクールジャパン機構みたいなものは、ファンディングエージェンシーとして、いろんなところに多額の出資をする。その判断に至る経緯が、それぞれの各省任せだ。もっと知的財産戦略推進事務局のグリップを強化すべきだと私は思う。」
こうした平井氏の思いが、今回の戦略に生かされたのだという。
さらに、アンバサダーに就任した声優の松本さんと平野さんに関し、「海外からの招聘がものすごく多い。どの国も、アニメに関するイベント、オタクイベントみたいなものに、ものすごく盛り上がる。日本発の非常に大きなソフトパワーだと思う」と述べ、2人の発信力に期待を示した。
平井氏は、9月の内閣改造で竹本直一氏に大臣を引き継いだが、「もともと官僚組織にいた方なので、官民挙げて戦略をどう進めていくか、キャリアを積んだガバナンス能力に期待している」と後任にエールを送った。
大臣交代・・・新大臣はさっそく野党の攻撃の的に
平井氏の後任の竹本大臣は、就任直後の9月27日に行われた報道各社のインタビューで、次のように抱負を語った。
「いろいろなところにトライしてみることが必要だと思う。我々日本人が意識してないけれども、外国から見たら『うわ、すごいな』と思うようなものを、日本社会は結構持っている。そういったことをきちんと対外的に発信していくと、日本の魅力が出てくるのではないか」
ところが、就任早々に野党からの追及にさらされることになる
10月15日、参院の予算委員会で、立憲民主党の蓮舫副代表が、クールジャパン機構の収支が赤字となっていることについて、厳しく追求したのだ。
竹本大臣は、「成功するものもたくさんあるが、失敗するものもある」と答弁し、審議が一時、ストップする状況となった。
日本の魅力を世界に伝えるクールジャパン。省庁の利害を超えて、戦略をどう実現していくのか。クールジャパン戦略担当大臣に与えられた課題は大きい。